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バトルステーツ・オンライン〜若き番のゲーマー、世界へ羽ばたく〜  作者: 騎士誠一郎
義人と美浦のドキドキ職場体験!〜Featuringミッドナイトトレイン・ジャック〜
33/37

EP33 香川での研修へ!!

優勝の余韻を味わう稲毛アウルズをよそに、紅機関の計画は着実に進んでいた。

そして、職場体験の時期が来て義人と美浦は香川県にあるコンカフェの職場体験に参加することに!?


リニア新幹線の座席がわずかに揺れる。

窓の外は、光の線になった日本列島。


美浦がニュースを見ながら口を開いた。


「そういえばさ。ワークコスプレイヤーズ・フェスティバル中止の件で、星間ニチョ議員が逮捕されたんだって」


義人は鼻で笑う。


「あのフェミ男子、ずっとコスプレイヤーを“動く着せ替え人形”とか言ってたしな。自業自得だろ」


池袋で開催予定だった大規模コスプレイベント。

それを“性的大量搾取だ”と決めつけ、強制中止命令を出した張本人――

評議連合の都議・星間ニチョ。

今回の逮捕で、党の支持率はまたも急落。

それでも党本部は「我々とは無関係」と否認し続けていた。


美浦はニュースを閉じ、コスメポーチをぱっと開く。


「でも香川県といえば、讃岐うどん! それは楽しみだよね!」


義人が苦笑する。


「お前、気合い入れすぎなんだよ……」


「明後日がオープン初日で、稲毛アウルズが一日店長でしょ? 女の子は準備が大事なの!」


韓流コスメがぎっしり詰まったポーチは、まるで宝箱だ。

美浦の胸元が少し揺れ、義人は目線をそらした。


そのときアナウンスが入る。


『まもなく広島。中国四国高速鉄道へのお乗り換えは──』


義人は話題を逸らそうと、スマホを取り出した。


「ほら、美浦。“忍者ジャガ丸くん”でもやるか?」


「いいね、それ! バトロワ要素があってハマるやつ!」


2人は並んでゲームアプリを起動する。

忍者ジャガ丸くんは、2055年の“レトロブーム”を支える超定番モバイルゲームだ。


「行くぞ!」


バトロワモードに入り、

義人と美浦、そして世界中のプレイヤーが戦場に降り立つ。


「あっ! レアアイテム発見!」


「そのアイテム、よこせぇ!」


「やーだよっ!」


はしゃぎ合う声が車内に溶けていく。

その時間が、義人にとっては何より心地よかった。



---


列車にゆられ、高松到着。


四国の玄関口・高松。

どこか平成レトロを残す街並みは、観光客とオタクで意外と賑やかだ。


「受け入れ先の宿泊費も出してくれるんだよね?」


「まぁ、まずは挨拶だな」


今日向かうのは、彼らが職場体験を行う予定の

「レトロゲームカフェ・ギャラリー・8ビット」。


90年代アーケードを再現した店だ。


「あ、あそこ!」


美浦が指さした看板は、まさに90年代ゲーセンそのものだった。


「こんにちはー!」


「やぁ、君たちがアウルズだね?」


出迎えたのは、色男風の青年。

柔らかい笑みと、すらりとした体つきが印象的だ。


「僕は神谷哲史(かみや さとし)。“8ビット”でマスターシェフをやってる」


「一日店長なんて光栄です」


「いや本当はね、学生を受け入れるのは少し大変で……。

でも、現知事が動いてくれたんだよ」


神谷は機材を積みながら続けた。


「知事の補佐官・梅田吉蔵の圧力があってね。

県外からの研修生受け入れは全部、申請制なんだ」


美浦が眉をひそめる。


「梅田……。なんか、嫌な名前」


「噂は多いよ。評議連合と繋がってるって話もある。

県政を揺らす事件にも関わっているとかね」


神谷はその話題を切り上げ、ホテルを指さした。


「今日はもう休んで。明日はプレオープンでホールを任せるよ」


受付横には注意書きが貼られている。


「ちなみに香川のネットは1日2時間制限。ほら、昔テレワーク禁止条例とかあったろ? その名残さ」


それを聞いた瞬間、義人と美浦の顔が同時に引きつった。



---


ホテル OBO・高松でチェックインを済ませる。


部屋の扉を開けた瞬間、美浦が歓声を上げた。


「見て! この部屋、露天風呂つきだよ!!

しかも夕食は無料ルームサービス式!」


義人は一瞬、“混浴”を想像して慌てた。


「み、美浦、先に入ってきてくれ! 俺は後から──」


「だーめ」

美浦はいたずらっぽく笑う。


「よしくんと一緒にお風呂入るの……ずっと夢だったの」


義人の心臓が跳ね上がる。


「……わかったよ」


露天風呂はヒノキ造りで、夜風が心地いい。

タオルを巻いた美浦のシルエットが、湯気越しにふわりと揺れる。


義人は喉を鳴らしながら話題を振った。


「なぁ、美浦……。

ずっと聞きたかった。

君の家族のこと、もっと知りたい」


美浦はしばらく黙って湯面を見つめた。

そして、ゆっくりと口を開く。


「……うん。明日の仕事が終わったら行こうよ。

この近くにね、パパとママのお墓があるの」


義人は真剣な表情でうなずいた。


「行こう。一緒に」


風呂から上がると、ルームサービスの讃岐うどんが届いていた。


湯気の立つうどんを前に、美浦が姿勢を正す。


「ちょうどいい機会だから話すね。

私のすべてを、よしくんに知ってほしい」


義人は言葉を飲み込んだ。


その夜、

美浦の壮絶すぎる過去が、

ついに語られはじめる――。


次回、美浦の過去が明らかに!?

そして、プレオープンに向けて準備も!?

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