表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バトルステーツ・オンライン〜若き番のゲーマー、世界へ羽ばたく〜  作者: 騎士誠一郎
若き能ある番のふくろうよ、その爪を隠して頂を目指せ
32/37

EP32 期待と陰謀は鍋でじっくりと煮込まれるように

バトルトーナメントは見事稲毛アウルズの優勝で締めくくられ、キタのおかんと他愛のないトークで和気あいあいになった。

火鍋屋でデートをする義人たちをよそに、紅の「ある計画」が次の段階へと進もうとしていた。

火鍋の赤いスープがぐつぐつと煮え、

辛味の蒸気が立ちのぼる。


円卓に評議連合の幹部3人――対馬、倉田、俊永。

その正面に、ゆったりと腕を組む男・かずお。


「……若者文化は徹底的に叩き潰すべきだと思いませんか?

特に、女性の性的コンテンツやコスプレなんて“女性らしさ”から外れていますわ」


対馬は静かに、しかし憎悪を滲ませて言った。

彼女はVR空間で性的搾取の被害を受け、それ以来――

“若者文化”という単語そのものが毒になっていた。


倉田はセンマイをつけダレに浸しながら、ため息をつく。


「対馬さん、あなたはいつもやり方がド派手なんですよ。

慎重に動かないとSNSで一発炎上コースです」


「倉田っち、マジ優しい~」


「俊永ちゃん、野菜も食べなさい。美容に悪いわよ」


「はぁーい……」


対馬は呆れたように肩をすくめた。


そんな空気をまとめるように、かずおが口を開く。


「今日は無礼講だ。しっかり食べて、明日に備えよう」


「では先生、今後の動きは?」


倉田が身を乗り出すと、かずおの目が冷たく光った。


「明日、池袋の“ワーク・コスプレイヤーズ・カーニバル”を中止に追い込む。

すでに運営には“通告”しておいた」


――その声には、一切の躊躇がなかった。


「さすが先生。やるときは徹底してますのね」


対馬が嬉しそうに目を細める。


「万一に備え、捨て駒も用意してある」


かずおはほくそ笑んだ。


そこへギャルソンが生野菜を持ってくる。


「会計は私が済ませよう」

かずおはブラックカードを無造作に差し出した。


そして――


「さて、諸君。“ブラッディ・イヴ計画”についてだが」


空気が一瞬で冷える。


「参加国には連絡済みですけど……世界中をどうするつもりなんです?」

対馬が問う。


「世界に示すのだ。

“同調こそが正義”――それを理解させるために、IDSCCを襲撃する」


倉田が皿を置き、眉をひそめた。


「しかし対馬さんが結婚式で爆破した余波で、TGBMGCの警備は超厳重ですよ?」


「そこは“興行解体”に任せてありますわ。

クルド工作員も来月には到着しますし」


「――では、成功を願おう」


かずおは不気味な笑みを浮かべた。


だが、この“ブラッディ・イヴ計画”は後に、

ケーニッヒ次期大統領によって粉砕される運命である――



---


数日後・ふくろうスクール。


「……もうそんな時期か」


供花は職員室で資料をまとめていた。

6月上旬の職場体験に向け、受け入れ先企業のリストを作り上げる。


「小泉先生、稲毛アウルズが優勝したからって浮かれすぎじゃない?」


「ち、違うわよ!!」


顔を真っ赤にしながら、供花はリストにチェックを入れる。


稲毛アウルズの人気は今や爆発寸前。

どの企業も「うちで働いてほしい」と殺到し、株価も急上昇。


「こりゃ抽選にしないと……賄賂送る連中まで出かねないわね……」


そこへ、不意に妙なオファーが目に入る。


「香川県の……コンカフェ?」


差出人は、香川県でオープン予定の新規コンセプトカフェの経営者。


内容にはこう書かれていた。


> <コスプレを身近に、世界のお給仕をあなたに>をテーマにした

カフェギャラリーです。

稲毛アウルズのインパクトで全国区にしたい――

そのため、ぜひ職場体験として協力してほしい。




供花は読み終え、低く唸った。


「香川県の……現知事、大丈夫かしら」


ゲーム規制条約で県政が揺れ、支持率低下。

プロゲーマーチームすら解散に追い込んだ“あの県”だ。


嫌な予感が、背筋を冷やした。


「まぁ……行かせてみるしかないわね」


供花は義人と美浦を呼び出す。



---




「香川県の……コンカフェ?」


義人は目を丸くした。


「そうよ。あなた達のビジュアルは武器だから、

ちょうど職場体験で“起爆剤”にしたいんですって」


「香川県って、ゲーム規制条約が……」

美浦が不安そうに眉を寄せる。


「宿泊先も責任者が用意済み。問題なし」


供花はトマトジュースを飲み干すと、ニヤリと笑った。


「出発は来週日曜。

ハワイデートはTGBMGCが終わってからね?」


「は、はい!」


二人は帰宅して荷造りを始めた。



---


荷造りをする義人を見て、


「香川県のコンカフェか……」


幸太郎は腕を組む。


「なにか知ってる?」

義人が聞く。


「知事は規制廃止に動いてるけど……

“知事補佐”が完全維持派なんだ。

コンカフェは“性的営業だから排除すべき”って主張してる」


「なんでそんな極端な……?」


幸太郎は低く答えた。


「その知事補佐、評議連合推薦の議員らしい」


義人の手が止まる。


「……気をつける」


義人は絞り出すように言った。


彼らはまだ知らない。


これが後に――

**「コンカフェ狩り事件」**へとつながることを。


そして香川の闇が、

アウルズの二人をのみ込もうとしていることを――。


次回から職場体験!

美浦と義人の新たな戦いの舞台はなんと香川県!?

こうご期待!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ