EP27 悪意の矛先は、常に自分たちとは無関係なところに向けられる
ワルキューレツインズとの激闘はクライマックスを迎え、互いのMAVアタックが炸裂!
見事決勝戦へと駒を進めた稲毛アウルズ。
戦いから一度離れて、幕張豊砂へ。
幕張豊砂駅前広場――
義人と美浦が現地スタッフに迎えられた瞬間、活気に満ちた空気が流れ込んできた。
今日は、世界トップブレイキンダンスチーム〈Xcellent〉と稲毛アウルズによる、
VRダンスゲーム《ラブ&ブレイク》の特別エキシビションマッチ。
しかも人気俳優と女性声優の“ゲーム婚”の余興という特大イベントだ。
「まさか、俺たちが呼ばれるとはな……」
「でも幸せな瞬間に立ち会えるって、少しワクワクするよね」
二人はホテル 10階 114号室へ案内され、衣装の準備に取りかかる。
「父さんの話じゃ、幕張スタジアムで“バトルトーナメント”決勝もやるんだってさ」
「本気だね、Eスポーツの未来に」
義人と美浦は、プロレイヤー・小泉のコーディネート衣装に着替え、会場へ向かった。
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MCを務めるVチューバー・笹川ホロンがハイテンションに叫ぶ。
「さぁー! 新郎新婦様の特別リクエスト!
《ラブ&ブレイク》スペシャルエキシビションマッチ、スタートです!」
コスプレ姿の義人と美浦、そして世界大会優勝チーム〈Xcellent〉が登場。
黒人女性リーダーが拳を突き出す。
「HEY! 盛り上げようぜ、日本のダンサー!」
「こちらこそ!!」
二人は軽く拳を合わせた。
緊張と高揚が混じった空気の中、対戦開始が宣言される。
「それでは――演目開始!!」
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華やかな音楽。
ダンスの躍動。
新郎新婦の笑顔。
――と、その全てが、一瞬で“破壊音”に塗りつぶされた。
《ドッ……ッッガアアアアン!!》
新郎新婦の席付近が閃光と共に爆ぜ、悲鳴と煙が広がった。
「――っ!?」「美浦、伏せろ!」
義人が美浦を抱き寄せ、テーブルの影に滑り込む。
広場は阿鼻叫喚。
倒れる人々。逃げ惑う参列者。
「よしくん……これ、まさか……」
「落ち着け。まず負傷者を――!」
義人は震えを抑え、プロレイヤーの冷静さで状況を分析し始めた。
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同時刻。幕張本郷駅前。
街頭演説をしていた過激思想団体〈維新同盟〉の対馬が、
遠くで上がった爆音に薄く笑みを浮かべた。
「……始まったか」
背後で仲間が囁く。
「計画通り、祝賀イベントは混乱状態です」
「祭りは壊れた瞬間が一番美しい。――次の段階へ移るぞ」
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数分後、警察・消防が到着し、義人たちは事情聴取に応じた。
ニュースでは“何者かによる意図的な破壊”として速報が流れる。
美浦はホテルの廊下で肩を落とした。
「ねぇ……明日の決勝、できるのかな……」
「父さんたちが会場の安全を死ぬ気で守るさ。俺たちは、やるべきことをやるだけだ」
義人はそう言うと、ホテル内のコンビニで弁当を買い、
疲れた体を休めるため部屋へ戻る。
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稲毛アウルズの控室では、
フルダイブ格闘ゲーム《地面師ファイターズ》で気を紛らわせていた。
「うわー! また負けたー!」
「よーし、今日は勝ち越しだ!」
ようやくゲームを切り上げたころ、美浦はふいに義人に寄り添った。
「……ねぇ、よしくん。今日、怖かったね」
「……あぁ。でも守れる範囲は守れた」
美浦は照れ隠しの笑みを浮かべる。
「じゃあ……今夜くらい、くっついて寝てもいい?」
「……そっ、それは……」
二人は同じベッドに横になる。
義人の腕に触れた瞬間、美浦の声は小さく震えていた。
「……ありがと。こうしてると、安心する」
義人もまた、彼女の心臓の音を聞きながら、静かに目を閉じた。
次回はいよいよ決勝戦!
稲毛アウルズVSキタのおかんの激闘にこうご期待!!




