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バトルステーツ・オンライン〜若き番のゲーマー、世界へ羽ばたく〜  作者: 騎士誠一郎
若き能ある番のふくろうよ、その爪を隠して頂を目指せ
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EP26 誇りを胸にデートする

ワルキューレツインズと戦うことになった稲毛アウルズ。

バウンドフィッシャーズの敗退に衝撃を受けながらも、今の試合に集中することにするが……?

激闘は、まだ終わらない。


 観客席は揺れるほどの歓声。

 轟音のような熱狂がコロシアム全体を包み込む。


「こっちから行くわよ、ヨシと!」


 アンネが大剣〈ラグナレク〉を構え、回転とともに奔流の風を巻き起こす。


「スキル――ストームブレイド!!」


 竜巻の斬撃。

 視界を塗りつぶすほどの暴風が迫る。


「なら、こっちは――!」


 ヨシとは瞬時に武器を突撃銃〈百雷〉に切り替え、

 風の渦を読むように、一点を撃ち抜いた。


 狙いは――足元。


「っ……!」


 足場が砕け、アンネの体勢が崩れる。


「さすがね。足元を撃ち抜くなんて……!」


「これが、長年のプレイで身に付けた“癖読み”ですよ!」


 ヨシとは敵の懐へ飛び込み、再び武器を〈ウィンドブレード改〉に切り替えて斬り結ぶ。


 その頃――。


 フォーミンはショットガン〈コメットカノン〉を構え、散弾状のレーザーを放つ。

 アイネは即座にバリアスキルを展開し、光の雨を防ぐ。


「なら、こっちも行く!」


 リィンがスキルカードを掲げる。


「スキルカード――アイシクルバインド!」


 瞬間、フォーミンの右脚に氷が絡みつき、地面に縫い止められた。


「これは……SR!?」


 スキルカードのレアリティはCからGRまで八段階。

 強力であるほど制限が厳しく、大会では禁止カードも存在する。


 右腳を奪われたフォーミン。だが――。


「もらった!」


「甘いわ!! レーザードローン、展開!」


 フォーミンがアイテムストレージから砲台型ドローンを召喚。

 降下と同時に速射レーザーがリィンへ雨のように降り注ぐ。


「やっぱりドローンは厄介ね!」


 リィンが舌打ちする。


「残り時間は4分! まだまだ激熱ですよ!」


「4分以内に決着しないと判定負けもある。慎重にいかないとね!」


 実況席のレイナとジョージが叫ぶ。


「このままじゃマズいわ、ヨシとくん!」


「わかっている! だが……北欧チーム、やっぱり強い!」


 二人はワルキューレツインズを睨む。


「私たちはワルキューレツインズ!」


「スウェーデンの誇りにかけて、あなた達を倒す!

 ――そして、あのランウェイで私たちを嘲笑ったアフリカ代表を見返す!」


 アンネとリィンの瞳は怒りと悔しさに燃えていた。


「……聞かせてくれませんか?」


 ヨシとが真っ直ぐに問う。


「聞きたいなら――!」


 二人はレイピアと大剣を構え直す。


「私たちを倒してからにしなさい!!」


 アンネとリィンが詠唱を開始。

 MAVアタックの準備だ。


「フォーミン!」


「わかってる! こっちもMAVアタックで迎え撃つわよ!」


 稲毛アウルズも詠唱へ入る。


「両チーム、同時MAVアタック!? これはとんでもないですよ!!」


「次の一撃で勝敗が決まるな……!」


 観客席は息を飲んだ。


 ――詠唱が、重なり合う。


「森羅万象に身を委ね――」


「奈落の底へ、その身を沈め――」


 闇の魔力がアンネとリィンの武器へ吸い込まれる。


「疾風迅雷――天下御免!!」


「天へ駆ける稲光!!」


 稲毛アウルズの二人の武器にも雷が集約する。


「「冥刻の断頭台――ゲヘナギロチン!!」」


「「雷電将軍剣・カラドボルグ!!」」


 闇と雷の超エネルギーが激突し――。


 会場が震える。

 光と闇が爆ぜ、嵐のような爆圧がすべてを包む。


「ひゃあああっ! MAVアタック同士の真正面衝突なんて、ゲーム史上初ですよ!!」


「どっちが勝ってもおかしくない!!」


 レイナもジョージも立ち上がったまま叫ぶ.


 爆煙が晴れ始め――姿を現したのは。


「俺たちの――」


「大勝利!!」


 稲毛アウルズ。


 勝利の瞬間、観客席は爆発したような歓声に包まれた。


「負けたけど……悔いはないわ」


 アンネは潔く敗北を認める。


「ヨシと!」


 呼ばれたヨシとが振り返る。


「あなた達は私たちに勝った! その勝利を胸に、私たちの分まで勝ち上がりなさい!」


「次のクリスマス、絶対にリベンジするから!」


 アンネとリィンが笑顔で拳を掲げる。


「もちろんです!」


「次も勝ちに行きます!」


 ヨシととフォーミンがサムズアップを返す。


 ――試合後。


 ロビーに戻った4人は言葉を交わす。


「アフリカのチームに……体型のことを馬鹿にされた?」


「そうなの! リアルでも、動画でも……散々言われたのよ!」


 アンネがスマホで動画を見せる。

 欧州アフリカ合同大会で優勝した際、対戦相手に「みだらな魔女」と罵倒された映像だった。


「悔しくてね……。今年こそ見返してやろうって。

 ランウェイも、ゲームも。全部磨き上げたの」


「でも、あなた達なら、私たち以上に戦える。

 胸を張っていいわよ」


 そう言って微笑むアンネに頭を下げ、

 ヨシととフォーミンはログアウトする。


 時刻は昼過ぎ。


 遅い昼食を終えた義人は、美浦とのデートに向かい稲毛駅へ歩いていた。


「ごめん、よしくん……待った?」


「今来たところだよ」


 二人は海浜幕張へ向かう。


「今日はどんなご飯が食べれるかなー?」


「ほんと、お前は色気より食い気だよな」


 いつものように他愛のない会話を交わす二人。


「でも、幕張豊砂で開催される“ラブ&ブレイク”の特別エキシビション、楽しみだよね!」


「だな」


 ――ただ、このとき二人はまだ知らない。


 その先に、

 “思わぬ悪意”が潜んでいることを。


次回は幕間!

稲毛アウルズの華麗なダンスに思わぬ悪意が……?

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― 新着の感想 ―
ゲームと青春が詰まってる感じで面白かったです。トーナメントバトルは熱いですね。ワルキューレツインズは強かったけど仕方ない!
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