EP22 漁師魂、荒波と誇りを胸に
バウンティドラゴンズに課せられた人民統制会の圧力を跳ね除け、苦い勝利を収めた稲毛アウルズ。
しかし、トーナメントは始まったばかり……。
「さあああっ! トーナメント1回戦・第4試合は――
新潟米っとの勝利!!
これで“稲毛アウルズ”との2回戦カードが決まりました!!」
レイナのハイテンション実況に、アリーナ全体が揺れるほどの歓声が巻き起こる。
「新潟米っとは手数重視の“連携型”チームですからね。これは注目ですよ」
ジョージが眼鏡を押し上げ、熱量をもって解説する。
その熱が、稲毛アウルズのメンバーにも伝わっていた。
「バウンティドラゴンズの分まで、勝たないとな」
「もちろんだ」
義人たちは改めて気を引き締め、第5試合を見つめる。
---
◆バトルフィールドに“アニメ聖地”の雄が来る!
「続いては大注目ーーっ!!
トーナメント1回戦・第5試合!
バウンドフィッシャーズ VS ビッグスターズ!!」
バウンドフィッシャーズが入場した瞬間、客席の一角が爆発的に盛り上がる。
「大洗の誇りを見せろー!!」
「アニメ聖地の魂を見せてやれ!!」
大洗から来た熱狂的ファンが横断幕を掲げて叫ぶ。
対するビッグスターズは、ブラジルが生んだスター兄弟――ジョディとボブ。
軽口を叩きながら手を振る姿は一見ただの“お調子者”だが……
「ジョディ、今日の主役は?」
「もちろん、私たちだよ!」
その余裕は、絶対的な自信に裏付けられていた。
「ふざけて見えますが、実力は本物です」
「見た目で侮ると命取りですよ!」
レイナとジョージが観客を煽り、会場の熱は最高潮に。
「兄貴……」
「ああ。全力で勝つぞ」
バウンドフィッシャーズは、稲毛アウルズの待つ決勝の舞台を見据え、拳を握った。
両者が睨み合った瞬間、
――ドンッ!!
空気が震えるような緊張が走り、バトル開始の合図が鳴る。
---
◆“漁師魂”VS“サンバの怪物”開幕ッ!!
「兄貴、俺が行く!」
モヒカンが重機関砲**《ベルセルク》**を構えた瞬間、
火山の噴火のような凄まじい弾幕がビッグスターズへと襲いかかる。
「させるか! ファラフェルシールド!!」
ボブの体を、黄金色のバリアが包む。
“強化系スキル”――だが、耐久値を超えると破れる上、リキャストも長い諸刃の剣。
「なら割るだけだ!!」
スキンヘッズがレーザーバズーカ**《リック・ブンドド》**を発射!
高圧レーザーがバリアを貫き、砕け散る光が弧を描く。
「ナイス兄貴!!」
モヒカンは即座に**両手剣**へ武器を変更。
「喰らえッ!!
剛破・獣王斬!!」
獣の咆哮のような剣圧が地面を裂き、敵へと迫る。
「任せて!!」
ジョディはアイテムストレージから“スキルカード”を抜き放つ。
「タイタンウォール!!」
瞬間、巨大な土壁が地面から隆起し、衝撃を受け止める。
「おーっと! スキルカードで凌ぎに来た!」
「切り札のタイミングが鍵になりますね」
再びレイナとジョージが熱く実況。
---
◆漁師、罠を張る
「まだ行くぜ!
ガトリングスコール!!」
ベルセルクから、弾丸の豪雨が土壁を削る。削る。削る。
「ジョディ、俺が引きつける!」
ボブが壁の影から飛び出し、モヒカンのターゲットマークを奪いに行く。
「もらった!!」
「甘い!」
しかしスキンヘッズの渾身の迎撃が炸裂。
ボブのHPが一気に赤ゾーンへ。
「回復薬!……残り2本……!!」
アイテムを飲むが――
次の瞬間、ボブのHPがさらに減った。
「なに……!? ダメージ!? まさか……!」
ボブは気づく。
「設置型回復妨害トラップ――
リバースメディスン……!!」
スキンヘッズが仕掛けていた罠。
回復を“逆”にする、漁師特有の海の暴力。
「回復なんてさせねぇよ!」
「名付けて――電気ショッカー大作戦!!」
客席に笑いと驚愕が広がる。
追い詰められたビッグスターズ。
しかし、バウンドフィッシャーズが一気に勝負へ出る。
---
◆漁師魂の奥義“海流激烈衝”
「行くぞ兄貴!!
MAVアタックだ!!」
背後に巨大な津波が発生し、その上に二人は漁船で乗り上げる。
漁師魂と兄弟の絆が形になった、バウンドフィッシャーズ最強の必殺。
「「海流激烈衝!!」」
空中から咆哮のような大津波が降り注ぎ、
ビッグスターズを飲み込み、天空コロシアムの床を揺らす。
「大津波だぁああ!!
これでバウンドフィッシャーズ、2回戦進出ーーっ!!」
「……マグロの大トロが食べたいですね」
ジョージのぼやきに観客が笑い、勝負は決した。
---
◆決勝の舞台へ向けて
「次に戦うのが楽しみだな」
「本当に」
稲毛アウルズも胸を高鳴らせる。
同時に“ノーブレス・アンノウン”も無事勝ち上がり、2回戦へ駒を進めた。
このまま進めば――
決勝で、因縁のバウンドフィッシャーズ vs 稲毛アウルズの激突。
もちろん、
“何事もなければ”の話だ。
---
◆画面の外では……悪意が動く
義人はログアウトし、時刻を確認。もうすぐ18時。
「美浦、メシ行くか!」
『私は食べたけど……。あ、そうだ!
来月のオープンスクールで月刊・衝撃VRの公開収録があるって!』
全国大会へ向けた追い風となる情報に、義人はさらに気合を入れた。
一方その頃、
画面の外では“また別の勝負”が進んでいた。
「そうか……興行解体の連中が壊したか」
かずおは酒を飲みながら、対馬からの報告書を眺め、怪しい笑みを浮かべる。
「若者の個性の結婚式など害悪です。先生のおかげで、私たちは逮捕を免れました」
興行解体の代表が酒を注ぐ。
彼らは、とある有名コスプレイヤーの結婚式を襲撃し、
式を中止させ、カップルを強制破局に追い込んだ闇組織。
捕まったのは雇われた外国人の闇バイトだけ。
「人材の闇バイヤーがいる限り、私たちは摘発されません」
かずおは微笑み、振り込む。
3000万円。
「評議連合の私がいる限り、君たちは守られる」
蠢く悪意は、
静かに、しかし濃厚に世界を蝕んでいた。
次回から2回戦!
さらなる激戦をお楽しみに!!




