EP21　勝利の美酒は、コーラよりも爽やかでコーヒーのように苦い

両チームの視線がぶつかった瞬間、空気が震えた。

　観客席まで伝わる“戦場の静寂”。

「それでは――バトルトーナメント１回戦、第３試合！

　FIGHT！！」

　合図と同時に、稲毛アウルズVSバウンティドラゴンズの激戦が始まる。

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「チョン、行くわよ！　予定通りに！」

「任せてくれ！」

　先制したのはバウンティドラゴンズ。

　チョンのロングブレード《真竜》が唸りを上げ、ヨシとへ一直線に迫る。

　しかし――

「甘いッ！」

　ヨシとは《ウィンドブレード改》でその斬撃をパリィ。

　火花が散り、刃と刃が跳ね返る。

「やっぱ強いな！」

「そっちもな！」

　同時に、フォーミンの狙撃銃《スタングル》が炸裂。

　対するフェイは突撃銃《傲濫》を構えて距離を潰す。

「近づかせないわよ！」

「まだまだぁ！！」

　銃声と閃光が交差し、観客席から歓声が上がった。

　攻防はまさに一進一退――どちらも譲らない。

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「チョン、絆ゲージは！？」

「３０％ジャスト！」

「なら……時間稼ぎね！」

　このバトルには、５分の制限時間がある。

　超えれば“総合ダメージ判定”。

　勝つためには、ターゲットマークを破壊するのが理想。

　ヨシと達は一気にチョンのターゲットを狙った。

「させないッ！」

　フェイが割り込み、青龍刀《大蛇》を構える。

　凛とした横顔が、美しいほど鋭い。

「ヨシとくんは任せて！」

「助かる！」

　しかし――フォーミンが取り出したのはグレネード。

「行っけぇ！！」

　フェイの目前で炸裂。

　紅い煙が舞い上がり――

「くっ……視界が……催涙ガス！？」

「チョン、気をつけて！」

　二人はブラインド状態に。

　アウルズが一気に体勢を整える。

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「あの二人の連携を崩さないと勝てないな」

「だよな……なら、アレ使うか」

　ヨシとはフォーミンに提案する。

「プラン32、ね？」

「そう、それ！」

　――遡ること数日前。

　小泉塾で供花から告げられた“新MAVアタック”開発プログラム。

「連携率が高まれば、新たなMAVアタックが生まれるわ。

　あなた達なら絶対に出来る」

　まだ未完成だった必殺技。

　だが、賭けるしかない。

「ぶっつけ本番だ！」

「了解！」

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　煙が晴れた瞬間、チョンが怒涛の連撃を仕掛ける。

　彼の瞳には、強い決意が宿っていた。

　フェイとチョン――彼らが戦う理由は“勝ちたいから”だけじゃない。

「……俺達、この試合で負けたら終わりなんだ」

「どういうこと！？」フォーミンが叫ぶ。

　チョンは悔しそうに唇を噛む。

「巨大組織から通達が来てる。

　“負ければ活動停止、強制的な更生施設送り”だってさ」

「そんな……！」

　二人の表現活動は世界で高評価だった。

　だが、表現を規制しようとする巨大組織が立ちはだかり、

　“この試合”を最後通告にしてきたのだ。

「でも俺達は負けられない。

　俺達は……表現者だ。誰かの心に色を灯したいんだ！」

　その言葉は、敵であるはずのアウルズの胸にも刺さった。

「理不尽だ……」

「……だから勝とう。ランウェイへ行くために！」

　ヨシととフォーミンも覚悟を決めた。

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「行くぞ、フォーミン！！」

「行くよ、ヨシと！！」

　二人は手を繋ぎ、同時に叫ぶ。

「MAVアタック！！」

　雷鳴が轟いた。

「させない！！」

「来なさい！！」

　チョンとフェイが迎撃に飛び込む。

　だが――

　ヨシととフォーミンが掲げた手に、天から雷が落ちる。

「疾風迅雷――天下御免！」

「天に輝け、稲光！！」

　光が収束し、巨大な雷の剣を形作る。

「雷電将軍剣・カラドボルグ！！」

　斬り上げる。

　雷の奔流がバウンティドラゴンズを飲み込み、

　二人のアバターは閃光に包まれた。

　圧倒的――決着。

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「――試合終了！！

　稲毛アウルズ、２回戦進出！！」

　実況席のレイナとジョニーは惜しむようにコメントする。

「バウンティドラゴンズ、素晴らしいチームでした……」

「圧力さえなければ、まだまだ戦えたはずです」

　ヨシとは拳を差し出す。

「チョン……ごめん。俺達、勝っちゃった」

「いいさ。勝者は胸を張れ」

　フェイは笑って手を振る。

「またどこかで――色を描こうね」

　巨大組織のアバターが彼らを拘束していく。

「今後の干渉は一切禁止とする」

　冷たい機械音声が響き、観客がざわめく。

「最悪……」

　レイナが呟いた。

　だがすぐ、大使館からの抗議でアバターが慌ててログアウトする一幕も起こり、会場に苦笑が広がった。

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「勝たなきゃ……」

「そうだな……」

　ヨシととフォーミンは拳を握りしめる。

　勝利の喜びと、敵チームの覚悟を受け止めながら。

　これが、ランウェイへの道。

　そして、真の戦いの始まりだった。