EP19 青空と地獄のブートキャンプ After
カレーコンテストに向けて、稲毛アウルズはバウンドフィッシャーズから廃棄予定の食材を使ってシーフードカレーを作ったら、思いの外大バズリ!
そして迎えたキャンプファイヤーの夜、熱いダンスバトルが始まる!?
「じゃーん! 持ってきましたぁ!」
供花がドヤ顔で抱えてきたのは、家庭用《ラブ&ブレイク》ダンスバトルシステム。
大型モニタに接続するだけで、本格的なダンスバトルが家庭でもできる人気シリーズだ。
「ルールは簡単っ! 私たちプロ選抜との勝ち抜きバトル! そして負けたら……」
供花は突然、古びた箱を掲げた。
「この“電撃危機連発”で罰ゲームしてもらいます!」
それは30年愛される名物アナログゲーム。
棒を触れさせずに人形を落とす――シンプルだが緊張感MAXのゲーム。
触れれば電撃音が鳴り、即失格。
最新作は天才トイクリエイター花田ジョニーが作り上げた“台が回転する”超高難度版。
まさに今日の夜にふさわしい、負けられない戦いだ。
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「まずは私と亮介さんの! MAV横浜トランジ VS 検見川セグレ!」
なぜか駆けつけていた亮介と、さらに息子の裕太まで参戦してきた。
「裕太、ママとパパゲームするから、お兄ちゃんたちのそばで見ててね」
「うん!」
裕太は南天堂メテオールのメンバーの横で、目を輝かせて観戦する。
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バトルの最中、突然美浦が義人に話しかけた。
「ねぇ、惑星タクティクス城って覚えてる?」
それはマジカルクリスタルゲームスが作った伝説のクセゲー。
独特すぎる操作と、高すぎる達成感でファンが多い。
「あのメーカー、今でもモバイルディスプレイゲームに本気みたいよ」
義人もうなずく。
モバイル向けだけは未だに彼らの牙城だ。
美浦は語るほどに熱が入っていく。
「でね、最新作が“超”クセゲーなの!
敵をタップで攻撃して、スライドで避けて……って、指が死ぬのよ!」
クセゲーハンター・美浦の眼が輝いていた。
その姿は、惑星タクティクス城を神プレイで突破した“あの時”と同じだ。
ストリーマーの間で一時バズり、モバイルディスプレイゲームの延命にもつながった伝説の瞬間。
しかし――
「そこっ! レトロゲームで盛り上がらない!」
供花の鋭すぎるツッコミ。
気づけば、供花&亮介ペアはすでに4連勝していた。
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「よし!」
「バージョンアップした稲毛アウルズの底力、見せようじゃないですか!!」
義人と美浦が立ち上がる。
曲は椎名しおんの大ヒット曲《青春ギャラクシア》。
亮介は鋭いヘッドスピン。
美浦はタップからバック宙へとつなぐ華麗な流れ。
ギャラリーが一気に盛り上がった。
熱を帯びたキャンプファイヤーの夜は、あっという間に過ぎていった。
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供花の“電波系シャウト”が塾生全員にダメージを与えていく。
義人は隣で歌う美浦の透き通る歌声に癒やされていた。
(そういえば、美浦って歌手を目指してたんだよな)
孤児支援プログラムで一度は夢を諦めかけた彼女。
だが今、歌手兼ゲームストリーマーとして再び夢をつかもうとしている。
義人はそっと決めた。
(俺、絶対美浦の夢を応援する)
そんなバスの横を、一台の宣伝車が追い越していく。
対馬の車だった。
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対馬が到着したのは、勝浦市にある古い民宿。
廃業して何十年も経つが、今は“ある団体”の拠点になっていた。
「久しぶりね」
待っていたのは、ガラの悪い男女30人。
イベント壊し屋組織
《全日本興行解体株式会社》。
その実態は、イベント破壊の代行を生業とする暴力系組織。
背後にはシン・評議連合の影があると噂される。
リーダー格の男が不気味に笑った。
「対馬先生、例のランウェイ解体……もうすぐですよ」
「TGBMGCのステージをぶっ壊せる日が楽しみで」
対馬が堂々と言い放つ。
「安心しなさい。あなたたちは罪に問われません。
私、対馬未華子が“全面バックアップ”します!」
メンバー全員が歓声を上げた。
「さぁ――若者に“痛み”を伴う教育を」
やがてTGBMGCは、壊し屋たちによって中止に追い込まれることになる。
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そして翌日。
義人は美浦の部屋に遊びに来ていた。
「へへへ、すごいクセゲー買えたんだ〜」
美浦が取り出したのは、5年前に配信されたシューティング《フェアリアウォーズ》。
メイン攻撃で自機にダメージが入るという狂気仕様。
サブのグレネードで戦うしかない、究極のクセゲー。
「これ、中古DLショップで偶然見つかったの!
よしくんも絶対ハマるから!」
義人もプレイしてみるが――
「くっそ! 何だこのクセゲー!?
自機が自分でダメージ喰らうとか聞いてねぇよ!」
「おっしゃー! ステージ1クリア!!」
美浦は笑顔。
その奥歯のクラウンがキラッと光る。
「最近歯医者行ったのか?」
「行ったよ〜。神経取るの怖かったなぁ」
そんな穏やかな時間の中、ふたりは視線を合わせる。
「いよいよ明日だな……」
「ランウェイ進出をかけた、BSOバトルトーナメント!」
ノーブレス・アンノウン。
バウンドフィッシャーズ。
そして未知の強敵たち。
3日間にわたる“最終決戦”が、ついに幕を開ける。
次回からいよいよバトルトーナメント開幕!
稲毛アウルズは、この激戦を勝ち抜くことは出来るのか!?
こうご期待!!




