EP17 青空と地獄のブートキャンプpt2
ある晴れた日、義人たちは全日本フリースクール対抗デジタル体育祭に向けて小泉塾へと参加する。
合宿所は勝浦市にある南天堂デジタルスポーツカレッジ。
荷解きを終えてBSOで練習試合200連勝を叩き出し、訓練プログラムと座学で基礎と知識を叩き込んだ。
そして、供花が主催する肝試し大会が始まる……!
「――それではッ! 恒例、肝試し大会スタートです!!」
海風が吹き抜けるプライベートビーチに、供花のよく通る声が響く。
普段は冷静な彼女も、今日ばかりはハイテンションだ。
今年の小泉塾・肝試しはひと味違う。
ビーチからサイト式宿舎の奧にある神社を通り抜け、戻ってくるまでがコース。
だが道中には――南天堂スタッフが仕掛けた“絶叫ギミック”が満載!
しかも今回は追加ルール付きだ。
叫んだら即アウト。
アウトになったら、地獄の“激マズスムージー”一気飲み。
「今年のは本当にヤバいって聞いたぞ……」
「だから絶対に、絶ッ対に飲みたくないんだって!!」
参加者たちの悲痛な声をよそに、最初のチームが出発する。
夕闇が迫り、海の向こうの星が瞬き始めるころ――
闇夜を裂く懐中電灯の光とともに、肝試し大会は本格スタートした。
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◆第1エリア:ARゾンビ・ロード
「うわぁあああああああ!!」
「声出すなって言ったばっかだろ!!」
背後から唐突に聞こえる低い呻き声。
草むらから飛び出してきたのは、南天堂開発室が悪ふざけで作ったリアルARゾンビ。
悲鳴が上がった瞬間――
『スムージー』
ドローンがボトルを運び、脱落者へ容赦なく“罰”を与える。
「はい、脱落っと」
供花が不気味に微笑む。
次のチームもその次のチームも、ギミックにビビって脱落。
特設の簡易トイレは、スムージーの威力で長蛇の列に。
そしてついに――
最後のチーム、義人と美浦率いる〈稲毛アウルズ〉が出発した。
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◆義人&美浦、挑戦開始
すでに周囲は真っ暗。
街灯と懐中電灯の光だけが、道の輪郭をなんとか照らしている。
「よしくん……こわい……」
美浦が義人の腕にぎゅっと抱きつく。
柔らかい感触が右腕全体を包む。義人の表情が少し固くなる。
「目、つぶってろ。俺が全部どうにかしてやる」
義人はそう告げ、彼女を守るように進む。
その瞬間――第1関門発動!
ゾンビARが一斉に出現するが、義人は冷静だった。
「デンジャラスパニックの初期ゾーンと動きが同じだ」
ゲームで鍛えた反応と判断で隙間を抜け、アウルズは軽く突破する。
続く第2関門――
闇の奥から不気味な笑い声がこだまする。
美浦は声を殺しながら必死に腕にしがみつくが、
義人は気にせず歩みを進めた。
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◆チェックポイント到着
神社に到着したアウルズはお賽銭を入れ、記念写真を撮影。
そのデータは自動で供花のタブレットへ。
「ふふっ、やりますね藤宮くんたち……でも、ここからが本番!」
供花がニヤリと笑う。
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◆最終関門:追撃のゾンビ軍団
帰り道に入ろうとした瞬間――
ゾンビARが背後から大挙して押し寄せてきた。
「なんだこれ、追跡仕様か!」
義人が即座に理解する。
1回でも触れられれば、即スムージー行き――
つまり、ここが最難関。
義人の脳が高速で回転する。
(焦るな……必ず道はある)
ひらめきが走る。
「美浦、このまま突っ切る!」
「うんっ!」
二人は息を合わせて走り抜けた。
ゾンビの動きのクセを読み切った義人は、ギリギリの隙を通り抜け、
触れられることなくゾーン突破。
だが供花の仕掛けは終わらない。
コウモリ型ドローンの大群が上空から急襲してくる!
「うわっ、来た!よしくん!!」
「任せろ!」
義人は驚く美浦を――
お姫様抱っこの状態で一気にダッシュ!
「落とすなよ、落とすなよおおお!!」
「絶対に落とさねぇ!!」
二人は群れを切り裂くように駆け抜け、
そのままビーチへと帰還した。
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◆結果発表
海岸に戻った二人を迎えたのは――
供花の怒りと狂気が混じった笑顔。
「お疲れさま。でも……このご時世にお姫様抱っこは、どうかなぁ……?」
参加者たちからはブーイングが浴びせられる。
「「あはは……」」
義人と美浦は苦笑するしかなかった。
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◆その頃、評議連合――
一方その裏では、評議連合本部の地下施設で不穏な動きが進んでいた。
「バトルトーナメントに《ネズミ》を潜り込ませたのは正解だったな」
かずおが冷笑する。
ノーブレス・アンノウン――
あれは評議連合が送り込んだ自立型AIスパイ。
彼らの行動ログはすべて、本部に送られていた。
「先生、この後はどう動かれます?」
対馬が尋ねる。
「出馬は今回は見送る。だが、計画は進める」
かずおは重厚な扉を開け、政見放送収録室へ向かった。
カメラの前に立つと、表情は一転、ベテラン政治家の顔になる。
「評議連合代表の村瀬かずおです」
収録後の会議では、党幹部が次々と発言した。
「日本の“没落貴族”たちを味方につけたのは英断でした」
「我らの理想国家の実現が近づいています」
かずおは静かに頷き――
一言、告げる。
「“ブラッディ・イヴ計画”は、次のフェーズに入った」
ざわめく議員たち。
「クリスマスチャンピオンシップなどという浮かれた国家イベント……、必ず潰す」
その手には、まるで儀式のように梅ワインのグラスが握られていた。
そんなわけで、次回は合宿では定番のイベントにちょっとしたアクシデントをプラス!
はたして、そのアクシデントとは一体……?




