EP13　初勝利と蠢く悪意

「“あれって？”」

フォーミンが目を丸くする。

ヨシとはニッと笑ってウィンクした。

「即興で思いついたプランだが……やれるか？」

「よくわかんないけど、それに乗るわ！」

フォーミンは拳を握り、腹を決めた。

「何を企んでいようが──」

「粉々にしてやるぜォ！！」

バウンドフィッシャーズが一気に間合いを詰めてくる。

「スイッチ！」

ヨシとの掛け声で、フォーミンがナックル武器《メタルインパクト》を装備。

砂煙を巻き上げながらスキンヘッズへ突進。

「こいつッ！」

「ビッグバン・マグナム！」

フォーミンの右ストレートが炸裂し、スキンヘッズの巨体が揺れる。

ナックル系は俊敏補正がかかる分、チャージ型スキルと相性が良い。

スタミナが時間で回復するBSOでは、攻めのタイミングが何より重要だった。

観客席でレイナが解説を始める。

「オフィシャルロワイヤルでは、プレイヤー全滅だけじゃなく、一定時間後に出現する“ターゲットマーク”を壊しても勝利なんです！　３ヒットで破壊できます！」

その瞬間、ヨシととスキンヘッズの頭上に緑色のキューブが現れた。

「ヨシとくん、クリック！」

「任せろ！」

ヨシとは《バイソンストーム》に持ち替え射撃開始。

「イージスファイア！」

弾幕が奔流のようにモヒカン頭へ襲い掛かる。

アックスで必死に弾いていたが、一発がターゲットマークに命中。

緑 → 黄色へ。あと二撃。

「やりやがったな！！」

スキンヘッズがショットガンを構えた。

「バーストランチャー！」

放たれた炸裂弾が地面を抉り、瓦礫と爆風が周囲を包む。

ヨシとたちは回避したが、破片がヨシとのターゲットマークにもかすりダメージ。

互いに一撃、緊張が走る。

「スイッチ！」

「了解！」

フォーミンがパッシブスキルを発動。

「ステルスダッシュ！」

空気が一瞬揺れ、姿が掻き消えた。

「どこだッ！？」

「こっちだよ！」

背後から声。

フォーミンの拳が閃き、モヒカン頭の顎を跳ね上げた。

「ニトロアングリラ──フルチャージ！！」

爆発のような一撃。

スタミナを力へ変換する切り札で、モヒカン頭のHPはほぼゼロに。

レイナが叫ぶ。

「HP25％以下！　強制リタイアスタンス発動です！」

規定により、回復は禁止。

場の緊張と観客の歓声が頂点を迎える。

「あ、兄貴！！」

スキンヘッズは武器を失い素手で構えるが、勝負は見えた。

「フォーミン！」

「了解！」

ヨシとの即興作戦――“撹乱して各個撃破”。

その最終段階へ入る。

「行くぞ！　MAVアタック！」

チームの絆ゲージが最大となり、二人の背に光の翼が宿る。

ヨシとは地上から弾幕を張りながら前進。

フォーミンは跳躍し、空中から追撃。

逃げ場のない完全包囲。

二人が叫ぶ。

「「必殺──銃弾の暴風雨《レーゲンバレット》！！」」

降り注ぐ嵐のごとき弾丸がスキンヘッズを飲み込み、HPがゼロへ。

ブザーが鳴り響く。

「デュエルエンディッド！！　勝者、稲毛アウルズ！！」

観客席が爆発するような歓声に包まれた。

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■バトル後

「フィッシャーズ、おつかれ！」

「最高の開幕戦だったぞ！」

試合後の雰囲気は爽やかだった……かに見えたが。

「少し待ってくれ！」

呼び止められたヨシととフォーミンは身構える。

だが、バウンドフィッシャーズは笑っていた。

「最高の試合だったぜ！」

「バトルトーナメント、本選で戦おう！」

漁師コンビとして地元技術をPRするため、彼らも大会に本気だった。

「もちろん、受けて立ちます！」

互いに拳を掲げ、再戦を誓う。

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■その頃――

観客席の奥から、一人の女性が静かにログアウトした。

ログアウト先は、シン・評議連合本部地下に広がる巨大コンピューター施設。

派手なメイクと奇抜なファッションに身を包んだ女。

名は三奈木俊永（24）。

かつて“頂戴女子”として男から金を巻き上げ、詐欺罪で服役。

“かずお”の手引で釈放され、今は党のサイバー部門に所属する。

「どうだね？　中国製クラッキングシステムの使い心地は」

「最高よ、先生のプログラムのおかげでね！」

俊永は親指を立てて笑った。

「よろしい。これからBSOという若者の居場所を──徹底的に破壊するための情報を集めてきたまえ」

「了解」

黒い電脳の気配が、地下施設を満たしていった