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09 優男な成金子息、少女達に釘を刺されました


子爵邸の外へ出て少し歩くと、2人の少女に通せんぼされてしまった。


「僕に用かな? 可愛いレディ達」


そう俺が言うと、整っている顔立ちを崩し、こちらを睨みつけながら、口を開いた。


「あなたが、ローレンツ・ベック?」

「そうだよ。 君たちは?」

「うちを乗っ取るつもり?」


そうだろうなと思っていたが、やはりカミラの妹達で間違いないらしい。


「確かに。 そう見る人もいるね」

「姉様を(たぶら)かさないで!!」

「姉様は優しいから、騙されていても気付かないの。」


やっぱり、カミラを心配しているのか。

カミラは心配になるくらい、純粋なところがあるからな。


「でも、君たちも知っているよね?

 この子爵家がいつ没落してもおかしくないことを」

「それは私が社交界デビューして、すぐにいい人を見つけるから問題ないわ!」


次女らしき少女が自信をもって答える。

カミラとはあまり似ておらず、目もつり上がっていない。

金髪もカミラに比べて濃い色だし、瞳も緑だ。

その代わり、目が大きく、愛らしい印象を持つ少女は、万人ウケしそうな美人だ。


「そこまで持つかな?

 結構危ない状況なんだよ? ちょっと突けばすぐに崩れるくらいにね」


それは昨日、子爵邸の状況をざっと調査をしてわかったことだ。

細かくはいかなかったが、現状は首の皮一枚繋がっているようなものだった。


「そ……それでも私が……!!」

「僕はね、本当に助けたいと思ってここに来たんだよ」


俺は、彼女達の視線になるよう、立て膝になり、視線を合わせる。


「正直に言うけど、僕はカミラに惚れてしまったんだ。 カミラを助けたいと思う。

 出来るだけ、カミラの希望に沿うようにしたい」

「それは……姉様の笑顔を見たからでしょ? …破壊力がありすぎるもの」

「確かに……それもある。」


あれはヤバい。

多分その笑顔を向けられたら、男女問わず落ちるだろう。


「確かに僕の方が利点が多いかもしれないけど、乗っ取ろうという気持ちは無いよ。

 それに僕は商会を経営しているから、乗っ取ったなんて噂が流れたら、潰れてしまうよ。」

「本当に? 本当に助けてくれる?」

「ドリス!」


ドリスと呼ばれた少女がこちらを見る。

次女にそっくりだが、彼女の目にはカミラの面影があった。


「デリア姉様。 この人、嘘ついてないと思う。

 だって、姉様のことを言うと、引きつる人とは違うもの」


この子はよく人の顔を見ている。

だが、それだけだ。


「詐欺師は、演技でそんなのおくびにも出さないのよ!」


うん。上の子なだけあって、しっかり警戒できてる。


「すぐに信じてくれなくて良いよ。

 君たちのお父上にも、僕を調べてから会って欲しいとカミラに伝言を頼んだし」

「……そんなに子爵の地位が欲しいの?」


緑の瞳が僕を捕らえる。


「子爵じゃなくって、カミラが欲しいんだ。 僕を愛してくれたらもっと良い。

 それに、僕は元々、平民と結婚するんだと思ってたしね。

 商会を経営出来れば、爵位なんてどうでもいい」


俺が立ち上がると、デリアは淑女の礼をした。


「私は、デリア・アルベルツ。 アルベルツ子爵の次女です。

 先ほど無礼をしたことをお許しください。」


碧眼の少女も姉に習って礼をした。


「ドリス・アルベルツです。 アルベルツ子爵の三女です。

 姉様が好きなことはわかりました。

 けれど、泣かせたら承知しません」

「ドリス……」


デリアは呆れ声だ。

ただ、ドリスは真っ直ぐ僕の目を見ていた。


僕はまた立て膝を着き、片手を胸にあてながら口を開いた。


「カミラを生涯愛することをここに誓う。

 カミラの女騎士達がその証人だ」


女騎士と言われた2人は嬉しかったのか、お互いに目を見てから、やっと僕に微笑んでくれた。


2人とも、カミラとは趣が違うが、とても魅力的な笑顔だった。

将来、社交界で輝く姿が目に浮かぶ。


……そんな予感がした。


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