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26 強面貧乏お嬢様、お仕事を休んでしまいました(後)


奥様が、食器をトレーにのせて出て行くと、私は眠気が来てしまい、闇に落ちてしまった。


起きた時には、空がすっかり暗くなっていた。


コンコン


「はい」


立っていたのは、トレーをもった、ローレンツ様だった。


「カミラ、具合はどうだい?」

「だ……大丈夫です」


ローレンツ様付きの侍女が、ローレンツ様の食事を机に置いて、退出した。


「カミラ、本当に申し訳なかった!」

「ローレンツ様! いいんです! 私が……」

「あなたを怖がらせてしまった! 男としては最低な行為だったと思う。」

「あ……あの時は……その、私も動揺して…突き放してしまってごめんなさい。

 その……思い出してしまって……」

「……何を?」

「社交界のデビューの時なのですけど、誰か、男の人に言われてしまったのです。」


『お前の婿になりたがるやつなんていないだろう?

 居たとしても爵位目当てだ。

 お前なんか捨てられるに決まってる』


『学園にも通ってないお前の、一体どこに価値があるんだ!?

 その鉄仮面で男が近寄ると思っているのか?

 こんなに身長があると、避ける奴も居るのをお前は知らないんだな!

 胸なんて無いに等しいじゃないか!

 お前に女の魅力なんて、どこにもない。

 何も持っていないんだな? お前……なんでここに居れるんだ?』


「そういわれてしまって、私は……ショックで。

 デビューなのに、立っていることだけで精一杯でした。」


ローレンツ様は眉を寄せた。


「そんなひどいことを言われたのか?

 まさか……契約書に書いてあった「出て行く」というのは……」

「捨てられてしまうなら、自分から出て行けば良いんだと思って……」

「カミラ!」


カミラの手にローレンツの大きな手に包まれた。


「俺はあなたを愛している。 だから、手放すつもりはないよ。

 ダンスを誘ったあの日、君みたいに純粋な人が社交界に居るんだと知って、驚いたんだ。 この人と一緒になりたいって」

「ローレンツ様……」

「俺はね、自分の地味な容姿がずっと嫌だったんだ。」

「かっこいいのに……ですか?」

「そう言ってくれるのは、カミラだけだよ。 兄が綺麗な顔立ちだからね。

 ずっと他人から比べれてきたんだ。

 あなたをダンスに誘う時も、僕なんかって躊躇したんだ。

 それを友人に背中を押してもらった。

 ……だから、今、こうしていられる」


すると、ローレンツ様は私に跪き、私の手を取った。


「俺の気持ちをちゃんと言っていなかったね。

 ……カミラ、俺と結婚してくれ。 ……君を一生大事にしたい。」


また、ぽろぽろ涙をこぼしてしまった。


「はい……」


私は縦にこくんと頷いた。


「……俺は本当に悪い男だな。 カミラを泣かせてばかりだ」

「これは…なんだが、ホッとしちゃって……」

「君は案外泣き虫なんだな。」

「あんまり人前で泣くことは無かったのですが……」

「ってことは、1人で泣くことが多かったんじゃない?」

「……まぁ」

「これからは、俺の前なら我慢せずに泣いて良いよ。 もちろん笑顔の方が見たいけどね」

「ローレンツ様も泣いていいのですよ?」

「俺は男だから、そういう姿は見せたくないな」

「私はまだ、ローレンツ様のことで知らないことばかりです。

 もっと色んな面を見せてください。」

「……カミラには敵わないなぁ」


そう言ってローレンツ様は私に寄り添い、泣き止むまで、そばに居てくれた。



翌日。


また、目が腫れてしまったので、強制的にお休みになってしまった。


ただ、昨日は「大丈夫?」と言っていた、食事を持って来た人たちが、揃って、「おめでとう!」と祝福してくれたのだ。


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