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48話 それぞれの胸中にあるもの

ブクマありがとうございます!

 


 俺の未熟さゆえの暴走はあったものの、その後の話し合いは大きな問題もなく煮詰められていった。




「――今決められるのは、ここまででしょうか。あとは、生誕式当日に行動をおこすのみとなりましょう」


 カミナが湯飲みに口をつけて、元の場所に置いた。

 その動作はえらく流暢で、様になっている。

 そういや、イオリが淹れた茶にまだ口をつけてなかったな。

 すっかりとぬるくなったそれで喉を潤し、確認したい事を聞いてみた。


「来週だから……あと、三日後だよな? 実際、生誕式ってどんな感じでやるんだ?」


 俺の質問に答えたのは、シュウゲツ。


「前日と当日とその翌日の計三日、日夜問わず通しで祭をやるんだ。ほぼ全ての店が開いたり、他大陸の商品も並べられ、ここでしか手に入らない商品も売られる。職人達はそれぞれの腕を披露するのに舞台を用意したりもするね。だから、かなりの活気になるし、まさに都総出の催しとなるだろうね」


 このバカデカイ都で盛大に。

 それは、かなりの人出になるだろうな。


「そして、当日の夕方前になったら帝城前広場に民が集まり、テラスからオウガイ様が顔をお見せする。その後は、関係者や國の代表だけで帝城内で正式な宴を行うんだよ」


 そこには、コウガイ始め、この大陸中から主要人物が一堂に会すると聞いた。


「俺達は、その帝城の方に参加するんだよな? どのタイミングで中に入ればいいんだ?」


「それですが、ツルギさんは当日の夕方頃に帝城にお入りください。バクガイ公から貰った手形があれば中に入れますので。私は帝の護衛として明日にでも城に入ります。イオリ、貴方も一緒に同行する事になっていますが、準備は整っていますか?」


 カミナが隣に座る娘の方へ顔を向けた。


「……」


 イオリはボーッとして、明後日の方を向いている。


「イオリ?」


「……あっ。すいません。カミナ様何でしょうか?」


「どこか、具合が悪いのですか? 顔色が優れないようですが」


 カミナの言うとおり、血色が悪い様に見える。


「……すいません大丈夫です」


「それならば、いいですが……。明日には帝城に入ることになります。もう準備は終わっていますか?」


「……はい。準備は終わっております」


「そうですか……。気を抜かずに頼みますね?」


「はい……」


 元気がないな。

 さっきまで勢い良く噛みついて来て絶好調だったのに、急にしおらしくなった。

 本当、そうやって()()()()()()美人だな。


「……何よ? 人の顔をジロジロと見て」


 俺に見られてる事に気づいたらしい。

 再び目尻をつり上げ、眉間にシワを寄せると睨んでくる。

 なんだ。

 元気じゃねぇか。


「いや。何でもない」


「ふん!」


 少し調子を取り戻したらしく、また険しい顔つきに戻ってしまった。

 本当に、もったいない。


 ま、再び睨んでくる様になったこいつは放っといて、と。

 紆余曲折はあったが、ようやく待ち焦がれた日がやってくるんだな。

 ずっと知りたかった答え。

 俺の仇の正体。

 それを知る機会が。

 けっして、この時を無駄にしない。


 必ず生誕式で、『滅』の首謀者が誰なのかを特定してやる。

 そして、見つけたらこの手で――。



「カミナ様。我々も、当日に向けた準備は着々と進んでおります。手筈通り、いつでも帝城に突入出来るようにしておきます」


「頼みます。シュウゲツ達にもご苦労をお掛けしますが、『滅』を滅ぼすのは、國の為、大陸の平和の為に必要な事です。尽力をお願いしますね」


「はっ。気を引き締めて事に当たります!」


 決意した顔でカミナに応えるシュウゲツ。

 二人のやり取りを見て、まだ聞いていない事を思い出した。


「そういや、俺が奴等を滅ぼしたい理由は話したが、あんたら穏健派が敵対する理由は聞いてなかったな。何でお前らは、『滅』と敵対するんだ? 単に強硬派が気に食わないとかじゃないんだろう?」


 俺の質問にカミナが静かに答えた。


「ツルギさんは、いま大陸のあらゆる所で力を持たぬ民達が権力者の餌食になっているのは、知っていますか?」


 ユリや、ヤスマの町民もそんな事を言っていたな。

 最近増えている山賊の類いも元を正せば、強硬派の影響もあると。


「ああ。都に来る前に、そうした場面にも出くわしたし、話しも聞いた。強硬派が勢いを増して、好き放題やろうとしてるんだろう? 『滅』も、強硬派の後ろ楯だとも聞いたが」


「その通りです。強硬派のやり方を許せば、世界は弱者が救われない世になります。それに、かの組織はこれまでも、長年に渡って、裏でかなりの死者を生み出しています。紛争を引き起こさせ、権力者が弱き物を食い物にしている。こんな事をとても容認は出来ません。強ければ、何をしても良いというのは、間違っています。だからこそ、私達は何としてでも勝たなくてはなりません」


 そう言いきったカミナの顔は、一國の長の顔だった。

 凛々しさと、気風を兼ね備えた堂々とした佇まい。

 普段の穏やかな顔とは別の、もう一枚の顔。


「それが……犠牲になった人達の為にもなりますから」


 最後は少し遠い目をして、語り終わった。

 一瞬だけ滲ませた哀愁。

 もしかしたら、カミナも大切な人を奪われたのかもしれない。

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