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32話 闇市①

ブクマ、評価ありがとうございます!

よろしくお願いします!

 


「はぁ……本当何なんだよ。こいつは」


 目の前で大声で泣きわめく女を見て、溜め息がまた一つ増えた。

 闇市で情報を得ようと足を運んだ所に、野郎三人組から追いかけられる変な女がいて、俺はそれに巻き込まれてその野郎三人組から女を助けたらこんな事態になった。

 結果的に人助けをした、という部分だけ見れば善根を積んだ事にはなるんだろう。

 だが、そもそも俺は聖人君子の様に善人ではないし、何人も斬っている時点で、極悪人と呼ばれる類いで死後は地獄に行くだろうことも覚悟している。

 その辺りは、復讐を誓った時に決意している事で今更振り返るものではない。


 では何故善人ではない俺がこいつを助けたのか。

 理由は単純で、この女に利用価値があるからだ。

 じいちゃんの師匠が遺した奴等に関する手掛かりを探すには、俺一人の力では限界だと悟った所に、ちょうど自称情報屋だというこいつが現れたから助けてやった。

 それだけの事で、そこまではいい。

 俺にとっても特をする展開になるだろうから。


 では何が問題なのかというと。

 それなのに関わらず、助けて貰った恩も無かった事にして逃走を図ろうとしたから社会常識を教えてやった。

 すると、今度は地面に座り込み涙を浮かべガタガタと震えだすと、


「ごめんなさいぃ! ごめんなさいぃ! もう逃げませんから! もうしませんから、許して! 斬らないでぇ! うわぁ~~ん!!」


 さっき俺の耳元で盛大にかました時と同じ……いや。

 それ以上のバカでかい声で、わんわんと泣き始めたからだ。


「……はぁ……どこまでも、めんどくせぇ女だな。おい」


 今日何回目になるか分からない溜め息がまた一つ零れる。

 事情があるにしても、これに関わらなくてはいけないと考えると、嫌だ。すげー嫌だ。

 とはいえ――俺だけの力では事態の好転も難しいし、このまま放っておいても仕方ないから、とりあえずびくついてる女に話しかける事にした。


「うるせぇから、びーびー泣くな。別にお前を斬ろうと思っていない」


「…………ぐすっ。本当に? 嘘言ってない? 神様に誓う?」


「神は信じてないけど、嘘は言ってない」


「神様信じてないんだぁ……ううっ……」


「俺が助けを求めた時に何もしてくれなかったからな。それはどうでもいいだろうが。とりあえず泣き止め何もしないから」


「……ぐすっ……うん……」


 その言葉でようやく泣き止んだ。

 鼻をすんすんと鳴らしながら、目をゴシゴシと擦ると落ち着きを取り戻す。

 話が出来るまで待った後、次の展開に進むため先を促した。


「で? お前は、何でこんな騒ぎを起こしたんだ?」


 事の真相を話せと、目線と一緒に問う。


「んん?」


 まだ少し赤い目で首を傾げると、この子何言ってんの? と、返された。


「……」


 わざとなのか、頭の回転が鈍いのか分からないが、イラッときたので目線を鋭くしてやるとようやく俺の質問の意図を悟ったのか慌てて答え始めた。


「あ、あああああた、しは! こ、ここらで情報屋よろしく、情報をお金と交換で提供してるんだ! き、き、君はどういうお人なのかななな!?」


 き、き、君て何だ。

 少々眼力を強めすぎたか。

 今度はどもり始めた。


「落ち着け何言ってるか分からねぇよ。それに、俺の事はどうでもいい。詮索もするな。お前は聞かれた事を答えろ」


「は、はいいぃ!!」


 だから、びくつき過ぎだっての。


「……情報屋ってんなら、依頼主の知りたい事を教えるか、又は探るという意味でいいんだよな?」


 まずは確認から始める。


「う、うん。君が思っているのと、同じと思ってもいいよ」


 認識は間違ってない。

 次だ。


「よし。なら、闇市にも詳しいのか?」


「え~と……闇市? 闇市って……そこの?」


「ああ。まさに今さっきお前が飛び出して来た場所だ」


 そこを指さしてやる。


「そ、それは知ってるよ! そうじゃなくて、闇市の情報が欲しいの?」


「ああ」


「何で?」


 俺の真意を探ろうとしているのだろう。

 こいつにもこんな表情が出来るんだな、と思うほどに真剣だ。

 て、ゆーかさっきから、コロコロと表情を変えて忙しい奴だな。


「だから俺の事はいいんだよ。で、どうなんだ?」


「うーん。それは……あたしぐらいになると、知ってるけど」


「なら。さっき助けてやった恩があるだろう? それで俺の為に働け」


「嫌。それは、嫌」


「あ? お前を、さっきあいつらから助けたのは、誰だ? ああ?」


 さっきのやり取りを速攻で拒否するこいつにイラッときて、睨み付ける。

 眼力強めすぎて、死剣眼発動したじゃねぇか。


「ひいいいいっ! その赤い眼怖いぃぃ!!」


「……お前がイライラさせるからだろうが。ほら、これでいいか?」


 死剣眼を解除する。


「で、お前を助けたのは?」


「き、君だよ。でも、闇市の情報を知りたいなんて……」


「何をそんなに、渋るんだ?」


 まだ何を探せとも言ってないのに。


「……確かに、君には助けてもらったけど……闇市の事を知りたいなんて。何か良からぬ事を考えてるんじゃ……」


「なんだ。ハッキリ言え」


「あたしはさっきの人達には悪いことしたけど、犯罪には手を貸したくないの。それが、情報屋のりっちゃんしての信念なんだ」


 どの口が言うのか。


「良く言う。金だけ貰って逃げたくせに」


 一応つっこんでおく。


「うぐっ! それを言われると、胸が……! あたしの純真無垢なお胸が!」


 厚みの無い薄い胸に手を当て痛がる仕草をする。

 いちいち反応が大袈裟というか、わざとらしいというか話が先に進まねぇ。


「結局さっきのは何だったんだ? あいつらは、客だろう?」


「それは……あの人達が、都の資産家の所に強盗しようとしてたから。警備の人員や、建物の見取り図を入手して欲しいと依頼があったの。だから、そういう犯罪には加担したくないって言ったのに……強引に……それで逃げたの。お金も無理矢理押し付けてきて。だから……あたしは、名前とその人の素性をちゃんと知らないと、動かない。それは、君も例外じゃないよ」


 なるほど。

 間違った事は言っていないな。


「それは、嘘じゃねぇんだよな?」


「本当だよ。こんな事でまで、あたしは嘘つかない」


 目は言葉以上に真実を語る。

 りつの目を見ると、揺らいではいなかった。

 こいつの目は嘘をついてる感じはしない。


「分かった。お前の言い分を少しは信じてやる。俺の名前はツルギ・イットウ。必要な情報は、俺のじいちゃんの師匠が遺したという、ある組織の事が書かれた物だ。その組織の名は言えないお前の命に関わるかもしれないからだ。それに、その物がどんな形をしているかも不明だ。これでいいか?」


 必要最低限だけ、教えておく。

 奴等の事を言わないのは、知ればこいつの命が本当に危ないからだ。

 近くに奴等の気配は感じないが、どこでこの会話も聞かれているかも分からねぇし。


「ツルギ君だね。情報屋のりっちゃんとしての勘と君の雰囲気から悪い人ではないと、判断するよ。君をまだ完全にではないけど、ある程度信用する」


 少しはシャキッとしたみたいだな。

 さっきみたいなうざさ全開は薄れたか。


「俺としても、その方がいい。ようやく話を進められるからな」


 時間は有限だ。

 無駄は短い程にいい。


「それで、さっきの話しだが。どうなんだ? どうにかなりそうか?」


「うん。それは何とかなるかもしれない。あたしは、その物が何かは知らないけど、情報を握ってそうな人を知ってるから。うんきっと知ってるあの豚なら……」


 言葉の最後に不愉快そうな表情をしたのが気になるが。

 今、詮索するのはいいか。


「知ってそうなのは誰だ?」


「バクガイ公だよ。一応守秘義務があるんだけどさっきの人達が狙っていたのも、バクガイ公だったんだよ。まさか、ツルギ君の目的と一致するとは思わなかったけどね。都でただ一人の公爵なら、多分把握している筈。あの人は闇市を掌握しているだろうから」


 バクガイ……どっかで聞いた事ある名だと思ったら、シュウゲツが言ってた五人の中の一人か。

 確かに、闇市を統べる存在なら何かしらの情報を握っているかもしれない。

 ついでに俺の仇かどうかも、確かめられそうだ。

 りつに案内させて、そいつの所に行ってみるか。

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