29話 二章プロローグ
二章開幕になります。
本来は、もっと早くにお届けする予定でしたが思ったよりも時間かかってしまいました。
更新止まっている間も、ブクマ評価ともに増えて嬉しかったです!
本当にありがとうございます!
それでは楽しんでもらえると嬉しいです!
――――帝が住まう帝城の一室。
優に三十人は入れるであろう広い部屋は必要最低限の明かりのみが照らし、大きな窓枠からは激しく降りしきる雨の音が聞こえる。
この光量ではやや暗く室内全体を見渡す事は叶わないが、照らし出す範囲にあるのは黄金で加工された数々の置物や装飾品。
この事からも、この場所は高貴な者が使用するであろうことが伺う事が出来る。
そして、この中では一際にきらびやかな宝飾が取り付けられ、見るからに破格の値段がつくであろう椅子に。
一人の人物が深く腰を掛け、配下から伝えられる報告を聞いていた。
「――以上になります」
黒色の羽織袴に『滅』と刻み込まれた物を着込む男が、眼前に鎮座する存在へ片膝をつき頭を深く垂れている。
主君から言い渡された任務の達成報告と、自分の眼で見た一部始終を伝える為に。
「ご苦労。やはり、生きていたか」
それを聞き終えて配下へと計らいの言葉をかけるのは、一人の人物。
広い室内で静かに良く響くその声からは男性であることが分かるが、その人物の顔は確認する事が出来ない。
それは単純に部屋が薄暗い影響もあるだろうが、声の持ち主が黄金製の目と口の部分だけが露出する能面を被っているからなのが理由として大きい。
少々悪趣味とも取れるその仮面には、これまたふんだんに純金が使用されていてツルギなど一般の民では一生をかけても持つ事はないだろう。
「はい。まだ幼さを残す顔付きではありましたが、見た目とは裏腹に剣の腕は恐ろしい程にまでなっておりました」
先程と同じ姿勢で端的に主君へと言葉を返す『滅』の隠密。
眼前の人物の顔の大部分が能面に隠されそれでも尚、それが自身の主君かどうか分かるのは。
その声の持ち主から醸し出される圧倒的な強者としての威圧感からなのか、また別の理由からなのかは分からない。
一瞬だけ目線を上げ確認したその人物は、左手を肘おきに預け、右手の甲を顎に添え今しがた伝えられた内容を吟味すると、嬉しそうに目を細め次の言葉を発っした。
「して。あれはきちんと、成長していたか? 死剣眼はどうだ?」
「はっ。水氷の剣君スイダイ・コウゲツが手も足も出ずに、あしらわれておりました。それでもまだ、全力を出していなかった様に思います。とてもまだ十五の歳には思えない程でした」
主君から聞かれた内容を伝える為に一度頭を上げ、次もまたありのまま見た状況を伝える。
「そうか。そうか」
自身が聞きたかった答えが聞けて満足したのか、ニヤリと口元を吊り上げ、目尻を更に下へと下げると一つ頷く。
「それは、善きかな。あれには、もっと育ってもらわなければならない。でなければ、何のためにサトル・イットウだけを始末し、あれを生かしたのか、その意味を失なう事になろう」
「主の仰る通りです。それで、スイダイ・コウゲツの家族はどうされますか? 私の方で始末致しますか?」
主君から命令されるよりも前に、まるで当たり前だと言わんばかりに自身から問う。
そしてこれには、組織の決まりごとだとの意趣も含まれていた。
「決まっている。この生誕際が終わり、あるべき時に――――殺せ」
それに対する答えもまた、決まっていた。
感情の一切も込められていない声音で、冷酷な命令が下される。
「はっ。主の思うがままに」
返事をすると、配下はゆっくりと闇に溶け込むとこの場から居なくなる。
物音一つたてずに、まるで煙が消えてなくなるかのように存在を消した。
「――さて。あれはどの答えを選ぶのか。真実を知った時どの様な顔をするのか。楽しみだな」
一人になった室内でこれからの展望を考える為に、深く椅子に体を預けると一人呟いた。
「どの選択をしたとして、これから面白い事になる。帝は退場し、穏健派もまた滅ぼし……そして」
くっくっくと、小さな笑い声はやがて大きな高笑いに変わる。
「――はーはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
甲高く冷酷な感情のみが含まれた声が、部屋中に響くと雨音は更に激しさを増す。
まるでこれからの行き先を暗示するかの様に外からは雷が鳴り始めた。
お読み頂き、ありがとうございます!
活動報告でも書かせて頂きましたが、これからは、週1日曜日投稿になります。
亀更新になるかもですが、頑張って参りますのでよろしくお願いいたします!




