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秘め事だらけの宮中絵巻  作者: 日ノ宮九条
一つ、火のないところに煙はたたない
6/17

なんか時雨、不機嫌?

「わかりました、お伺いします、と、兄上に伝えてくれる?」


兄、紫桜帝の言伝を受けた少女、こと月影宮は女官にそう告げた。


「かしこまりました。」


慇懃に礼をし、女官が去る。

月影宮は背後に控えた時雨の方に視線を向けた。


「今夜、いつもの(・・・・)があるそうなんだけど、時雨も来られるよね?」

「今夜……?気は進まないですけど、分かりました。」

「大丈夫だよっ、時雨!時雨の純潔は私が全力で守るから!」

「……男に純潔とは言わないです、宮。」

「時雨は絶対に中務卿(変態)になんてわたさないよ!」

「……気持ちの悪いことを言わないでください、宮。」


報われない恋心(?)である。


「……失礼いたします、月影宮様。」


入れ替わるようにお付きの女官が入室してくる。


「どうしたの?」

「はい。……その、また求婚の御文が届いておりますが……。」

「焼却処分。」

「……かしこまりました。」


苦笑気味に頷き、持ち場へと戻って行く。


「しつこいよね、本当に……て、あれ?」

「……。」

「……なんか時雨、不機嫌?」

「………………………。」

「なんで!?」


ムスー。


表情こそ乏しいが、視線が驚くほど冷たい。


「……わたし、何かした?」

「…………………別に。」


言葉とは裏腹に、ツンと顔を背け、月影宮をおいて庭へと降りてしまう。


「あ、時雨、待っ……きゃあ!!」

「!」


急いで立ち上がったためか、月影宮は着物の裾を踏み、バランスを崩した。


「宮っ!!」


慌てて時雨は駆け寄り、月影宮を受け止める。

が、小柄な彼に受け止め切れるわけもなく……。


「っ!!」


二人は重なるように庭へと倒れこんだ。




一日遅れでしかも短くてすみません(´・Д・)」

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