なんか時雨、不機嫌?
「わかりました、お伺いします、と、兄上に伝えてくれる?」
兄、紫桜帝の言伝を受けた少女、こと月影宮は女官にそう告げた。
「かしこまりました。」
慇懃に礼をし、女官が去る。
月影宮は背後に控えた時雨の方に視線を向けた。
「今夜、いつものがあるそうなんだけど、時雨も来られるよね?」
「今夜……?気は進まないですけど、分かりました。」
「大丈夫だよっ、時雨!時雨の純潔は私が全力で守るから!」
「……男に純潔とは言わないです、宮。」
「時雨は絶対に中務卿になんてわたさないよ!」
「……気持ちの悪いことを言わないでください、宮。」
報われない恋心(?)である。
「……失礼いたします、月影宮様。」
入れ替わるようにお付きの女官が入室してくる。
「どうしたの?」
「はい。……その、また求婚の御文が届いておりますが……。」
「焼却処分。」
「……かしこまりました。」
苦笑気味に頷き、持ち場へと戻って行く。
「しつこいよね、本当に……て、あれ?」
「……。」
「……なんか時雨、不機嫌?」
「………………………。」
「なんで!?」
ムスー。
表情こそ乏しいが、視線が驚くほど冷たい。
「……わたし、何かした?」
「…………………別に。」
言葉とは裏腹に、ツンと顔を背け、月影宮をおいて庭へと降りてしまう。
「あ、時雨、待っ……きゃあ!!」
「!」
急いで立ち上がったためか、月影宮は着物の裾を踏み、バランスを崩した。
「宮っ!!」
慌てて時雨は駆け寄り、月影宮を受け止める。
が、小柄な彼に受け止め切れるわけもなく……。
「っ!!」
二人は重なるように庭へと倒れこんだ。
一日遅れでしかも短くてすみません(´・Д・)」




