序章
何と無く平安時代っぽいですが、違います^o^
色々な知識がないので(苦笑)
間違った表現や事実があるとは思いますが暖かい目で見てやってください(笑)
朝。
まだ日も昇りきっておらず、その上女官たちでさえ起床していない時間帯。
薄暗い、静まり返った局の中、一人、早すぎる起床時間を迎えた人物がいた。
「ん…………。」
音を立てないように起き上がり、グッと伸びをしたのは10歳ほどに見える少年だった。
まだ少し眠たげな、丸くて大きな瑠璃色の瞳。サラサラと真っ直ぐに腰まで伸びた黒髪。まるで少女のように華奢で色白で、目鼻立ちの整った、品のよさを感じる少年であり、「美少年」と言っても過言ではない容姿をしている。
「…………。」
少年は半分寝ぼけているのか、ぼーっと宙を見つめている。
「む………。」
ふるふる。
目覚めしのためにか、まるで小動物のように小刻みに首を横に振る。
「……支度。」
やっと覚醒したのか、そう小さくつぶやくと少年は行動を開始した。
素早い動きで、しかし音は極力たてずに布団を片付ける。
その後、寝間着を脱ぎ、薄い青紫の水干を身につけ、髪は赤い紐で一つに結い、後ろに流す。
そうして身支度を整えると、少年は局内の掃除を手早く済ませ、ついでに簀子も磨いていく。
「掃除、完了。」
ポツリとつぶやき、掃除道具を片付けると少年は庭へと足を運ぶ。
「ん…………。」
朝日を含んだ春風がフワフワと少年の髪を弄ぶ。
局内が急に騒がしくなる。女官たちが起き始めたのだろう。
女官のうちの一人が庭にいた少年の姿をみとめて声をかけた。
「おはようございます。今日もお早いですわね。」
「……おはようございます。」
少年は淡々とした口調で朝の挨拶を述べる。
「それじゃあ、いつものように、宮様をよろしくね。」
「はい。」
あくまで少年は事務的に、無表情に頷く。これは、少年がこの女官のことを嫌っているからの態度ではない。
少年は、これまた年のわりに感情表現が希薄なのである。
少年は女官に言われたとおり、「その場所」へとパタパタと駆けていった。
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少年が向かったのは奥の母屋だった。
そこには彼の「主」が眠っている。
中を覗くと、案の定、「主」はまだ夢の中にいるようだった。
ほのかに薫る香が御帳台を取り囲んでいる。
「……宮。朝。」
御帳台に入り、「主」をゆらゆらと揺すってやる。
「ん…………。」
もぞりと中にいる人物が身じろぎをする。
「……しぐ……れ…………?」
「ん。そう。宮、起き……っ!?」
言葉が途中で途切れる。
被った着物から出てきた白くて細い腕が、予想外に強い力で少年を中に引き摺り込んだからだ。
「っ!!」
眼前に迫って来た「主」の姿に、少年はピシリと硬直した。
年の頃は15、6だろうか。
ほんの僅かに開かれた、長いまつ毛に縁どられている翠玉の瞳。スラリと通った小ぶりの鼻筋。柔らかそうな桃色の唇。そして一度も光に当たったことがないような、なめらかな白い肌と艶やかな黒髪。
まるで神が自らの手で作り上げたかのような造形美。少女の容貌は驚くほど美しいく、幻想的である。
「………しぐ……れぇ……?」
まだほとんど夢の中にいるような、妙に色気の含んだ声が頭上から振ってくる。
少年は寝ぼけた主に茵の中に引きづり込まれてしまったのだ。
主の少女から逃れようともがくが、ギュッと抱きしめられているような格好のために、また、少女の力が強いため、まったくそれが叶わない。
「………すぅ。」
肝心の少女はまたおだやかな寝息を立てて寝入ってしまう。
「……う………ん………。」
「!!」
少女はそのまま少年に後ろから抱きつくように体を密着させる。
「う…………。」
背中に押し付けられる柔らかな弾力。
ちらりと背後を見れば、主の幸せそうな寝顔が視界に入ってきた。
「……………。」
少年はプゥっと、無表情にほおを膨らませ、無駄だと悟ったのか抵抗をやめた。
感情表現は希薄なものの、僅かに赤く色づいた頬から、意外と少年の心情は読み取りやすいことがわかる。
「むぅ…………。」
結局、少年はこのまま、帰りが遅いことを心配した女官に救出(?)されるまで、主の抱き枕と化す羽目になるのだった。
個人的に、時雨君は小さい動物とか、ペットみたいだなぁと思います(*^_^*)




