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五十九話 変装する理由

 普段の花菜さんは大人しい恰好をしていることが多い。

 肌の露出もほとんどないのだが……今はミニのショートパンツと、胸元が大きく空いたノースリーブ姿なので、目のやり場に困った。


「遅くなっちゃってごめんね? その……この格好で外に出る勇気がなくてっ」


 本人も望んでこんな格好をしているわけではないのだろう。ものすごく恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。

 何かしらの思惑があってのことだと思う……ただ、その理由がちょっと思い当たらない。


 説明が足りていない。花菜さんも俺の目線が気になるのか、さっきかずっとモジモジしていて言葉足らずである。


「さすがにきついかしら。若い頃に友人からもらったお洋服なんだけどね……サイズが少し小さくて、思ったよりも肌の露出が多いの。こんな恰好のおばさんと外を歩くのは、巧くんがきついわよね……」


「いや! きつくはないです!」


 ひとまず話を聞きたいところなのだが、花菜さんがすごく不安そうなのでまずはちゃんと俺の意見も伝えておいた。


「むしろエッチすぎるので、ちょっと困ってます」


「えっち……!?」


 言われて、花菜さんは更に顔を赤くする。

 露出された肩まで赤くなっていた。恥ずかしいんだろうなぁ……でも、嫌がっているような雰囲気はない。


 言った直後に、今の発言はちょっと気持ち悪いかなと思ったのだが、むしろ喜んでいるようにも見えた。


「巧くんって、もしかして……年上好き?」


「どうでしょう? 普通だと思いますけど」


「そうなの? まぁ……自分でそう言うなら、そうなのね。ごめんね、変なこと聞いちゃって」


「いえいえ。花菜さん、見た目がかなり若いって自覚は持ってくださいね? 俺の意見も割と一般的なものなので」


「若い……うふふ♪」


 もちろんおだてたつもりはない。事実しか言ってないのだが、花菜さんはすごく嬉しそうだった。


 前々から感じていたことなんだけど……花菜さんって、意外とチョロいのでは? だから悪い男に引っかかってしまったのかもしれない――と、そんな邪推はさておき。


「それで、どうしてそんなエッチな格好をしてるんですか? まさか、いきなり肌をさらしたくなったとか、そういうわけじゃないですよね?」


 ずっと気になっていたことを問いかけてみる。

 花菜さんも、俺に聞かれてようやく理由を説明していないことを思い出したみたいだ。


「ち、違うわよ! そんな痴女じゃないわっ……えっと、これは変装なの。ほら、昨日は武史に見られて大変なことになったでしょう? 万が一の可能性も考えて、今日は違う雰囲気にしてみようかなって」


 やっぱり、ちゃんと理由はあったようだ。


(花菜さん……かなり武史のことを警戒しているのか)


 らしくない恰好をするということは、それをやらないと気が済まないくらい武史を怖がっているということだろう。


 それなら……ちょっとエッチすぎる気もするのだが、だからこそ変装は効果的かもしれない。


「あと、サングラスもかけようと思って! ほら、どうかしら? ちょっと若作りしているギャル、ってくらいにはなるかしら?」


 更に、おっとりとした優しい目元まで隠してしまったら、もうこれは普通にギャルにしか見えなかった。

 花菜さん……自分の体が男性にとって魅力的な自覚も薄いんだろうなぁ。


 この格好だと、逆に人の目を引きそうな気もするけど……まぁ、いいか。俺も、すれ違っただけだったら花菜さんと気づかない自信がある。


 それくらい、今の花菜さんは豹変していた。


 でも、さすがに息子を騙すのは無理じゃないだろうか?

 どんな姿になろうと、母親のことは気付けると思う。


 とはいえ……花菜さんが楽しそうだし、まぁこの格好でもいいや。

 目のやり場に困るとはいえ、もちろん嫌というわけじゃない。


 それくらい花菜さんは、魅力的なのだから――。

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― 新着の感想 ―
[一言] 弁当の時と同じようになるんじゃね? 武史が気付きかけるも香里が茶々入れてパァ で、花菜さんに完全に見限られる…とw
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