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二十四話 どうでもいい存在

 ――翌日。

 曜日は金曜日を迎えた。今日を乗り越えたら明日から週末である……花菜さんと一華ちゃんの予定もあるだろうけど、できれば平日よりは長く一緒に時間を過ごしたいなぁ。


 と、ぼんやり考えていると、いつの間にか教室に到着していた。

 時刻は八時十分くらいだ。三十分にはSHRが始まるので、この時点でも結構な人数の生徒が登校していた。


 幸か不幸か、その中には……俺を裏切った片割れの一人もいたようで。


「……お! 巧じゃねぇか。久しぶりの登校だなw」


 日に焼けた浅黒い肌と、茶色に染めた髪の毛が印象的な高身長の男子生徒――五味武史が、薄ら笑いを浮かべながら近づいてきた。

 今まではこいつ特有の笑い方だと思って気にしなかったけど……色々あった今だと、バカにしているような笑い方に見えるから不思議だ。


 まぁ、実際バカにされていると思うので、あながち間違ってはないだろうけど。


「二日もズル休みとか、てっきり不登校になるのかと思ったんだがw」


 俺を裏切った罪悪感は欠片もないのか。

 いつも通りに接している武史を見て、呆れていた。

 香里との関係をバレていないと考えているのだろう。


 そして相変わらず、こいつはからかってばかりだ。

 本人はいじってあげている、とのことだが……こういうコミュニケーションしか取れない人間なのだろう。


 つくづく俺は、見る目がない。

 こんな人間を明るくて面白い奴と思ってたのだから。


「…………」


 さて、どんな返答をしよう?

 もうこんな奴と仲良くしたいとは思わないけど……変に無視をして刺激するのも得策だとは思えない。怒りを買って嫌がらせとかされるのも困る。


 と、冷静に考えている自分がいることに気付いて、俺は思わず苦笑してしまった。


(本当に俺は……こいつのことを、何も思ってないんだな)


 浮気現場を見た三日前であれば、ぶん殴りたいと思うくらい憎かった。

 しかし、花菜さんと一華ちゃんのおかげで、憎しみなんてもう忘れている。


 俺にとって五味武史は、どうでもいい存在になっていたのだ。

 だったら、そういう人間を相手にするように、接すればいい。


「あ? 巧、どうしたんだよ。あれ? 俺、まさか無視されてる? 巧のくせに無視すんなよw」


「……いや、悪いな。まだちょっと体調崩してるみたいで頭がぼーっとしてるんだよ。俺に近づいたら風邪が移るかもしれないから、気を付けてくれ」


「んだよ、そういうことかw 巧に無視されたらプライドが傷つくからそういうのやめろよなぁ? オラ!」


 そう言って武史は俺の肩に軽くパンチを入れてきた。

 うぜぇ……ノリがもうめんどくさい。とはいえ、体調不良と伝えているおかげで俺の反応が悪くても武史は気にしていなさそうだ。


「ちっ。なんか最近、よく無視されんだよ……お袋と一華も俺に冷てぇし、なんなんだ? 生理かよ、めんどくせぇな」


 いや……俺のことを気にしているというより、どうやら武史は別のことに対してストレスを抱いているようだ。


(なるほど。だから、無視されると露骨にイライラしてたのか)


 あの一件以降、花菜さんと一華さんの対応も変わったらしい。


「あの二人が冷たいのか?」


「ああ……いや、気のせいだとは思うんだがな。俺の夕食だけコンビニの飯だし、一華に話しかけても目も合わねぇ」


「そうなのか」


「ったく……片親でも文句言わずに良い息子してやってんのによ。一華のこともいい女になるよう色々教えてあげてやったの、その恩があの二人にはねぇのか?」


 ……こいつ、ここまでクズな奴だっけ?

 目に余る発言に思わず引いてしまった。


 今まで、盲目的に信じていたせいなのか?

 こんなにクズな奴を親友と思っていた自分が恥ずかしい。


 いや、それにしても……前よりクズさが増長している気がしてならなかった――。

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[良い点] 五味武史www 今さらこの名前に吹いた >>目に余る発言に思わず引いてしまった。 俺もドン引きした。コンビニ飯に笑った
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