第49話 ジェットコースターでイチャイチャするな!!
「こういうものに乗るの初めてです……」
「あっ、そうなんだ」
まあ、確かに竹之内さんが遊園地に来て遊ぶってイメージないわな。
「え、竹之内さん最初、遊園地で遊ぶのなら貸し切りましょうかとか言ってたよね!?」
溝口からとんでもない事を聞かされる。いや、竹之内グループの力なら遊園地を一日貸し切るのなんて造作も無いのだろうか。恐ろしや。今、普通に客がいるのを見ると何とか溝口が止めたという感じか。
「全く竹之内さんは情緒が分かって無いね。こういう友達と並んで待つっていうのも楽しいのに」
「むっ」
何故かドヤっている溝口を見て竹之内さんがハムスターみたいに頬を膨らませている。可愛いね。
そうこうしている間に俺達の番が近づいてきた。先程からジェットコースターに乗っている人達の悲鳴が聞こえてくる事から結構怖そうだな。
「これ、落ちたりしませんか?ぱっと見ただけでも、椅子が全然安定していませんが?」
「大丈夫だよ。滅多に事故なんて起こらないから……」
「もし何かあれば遊園地を運営している会社を乗っ取ります……」
それ、竹之内さんが言うと洒落にならないんだよなあ。俺はジェットコースターより眼の前のお金もちの方が怖くなってくる。ジェットコースターをよく見ると二人席が縦に並ぶ形だった。
「ちょっと待って。これ二人ずつ乗るやつじゃん」
「!?私は当然、峻君と一緒に乗りますよ。初めて乗るのだから譲ってください」
「ダメダメ。私だって怖いもん。並んで座るから」
「じゃあ、俺一人で良いから。二人並んで座りなよ」
俺がそう提案すると、二人が俺の事を信じられないといった目で見てきた。何でだよ、怖いんだから二人並べば良いじゃん。
「峻君、本気で言ってます?」
「諦めて、コイツはそういう奴だよ……」
何故か女子二人からドン引かれる。二人が怖いっていうから提案しただけなのに……。結局、乗る直前まで二人でじゃんけんをしていたが決まらなかったので初めて乗る竹之内さんが俺の隣で座ることになった。
「緊張しますね♡」
「いや、その割に滅茶苦茶楽しそうに見えるんだけど?」
先程の座席決めは真剣な表情だったが、今はニッコニコである。
「そんな事ないです。怖くて震えそうなので手を繋いでもいいですか?」
「へっ?」
いくら、怖いからと言ってもこんな所で手を繋ぐ!?逆に俺が緊張してきてしまう。俺は竹之内さんの左手を見てゴクッと喉を鳴らす。俺が竹之内さんと手を繋ぐ……。
「峻君……」
「竹之内さん……」
「あんたら、後ろに私がいるの忘れてんじゃないでしょうね」
俺のすぐ後ろから溝口の声がすると思って後ろを振り向くと、すぐ目の前に溝口の顔があった。よく見たら前に乗り出してこちらを覗いてきている。
「お前、もう始まるんだから乗り出すなよ」
「私の目が黒い内はイチャイチャさせません」
何処の姑だよ。
「それではドラゴン動き出しま〜す。前に乗り出さず背もたれ付けて座ってくださ〜い」
スタート係のお姉さんがスピーカーで案内をする。これ、暗に溝口を注意してるだろと思って後ろをチラッと見ると真っ赤な顔をした溝口が大人しく座っている。ぷぷ、おもしろ。
「それでは空の旅へいってらっしゃ~い」
お姉さんの合図を機にジェットコースターが動き出す。ガタッガタッとレールとジェットコースターがぶつかる音がする。この音がまた緊張を煽るんだよなあ。
「しゅ、峻君……」
「大丈夫だよ。しばらくは上がるだけだから」
俺がそう言うと、竹之内さんが俺の手を握ってきた。え、いきなり!?
「怖いので絶対に離さないでくださいね」
「は、はいっす」
俺達が仲良く話していると背中から圧力を感じる。これ、絶対溝口だろと思ったがまあ良いやと思ってスルーする。
ジェットコースターは頂上を目指して斜めになって登っている。下を見ると地上からかなり距離があって俺でも結構怖い。横の竹之内さんを見ると目をぎゅっと閉じてプルプル震えている。
「竹之内さん、大丈夫だよ」
「わ、分かってはいるのですが……、どうしても怖くて」
外を見たほうが楽しいよと言おうと思ったが、本気で怖がっている人を無理にやらせる必要もないな。
「まあ初めてだったら怖いよな。俺じゃ頼りないだろうし」
「そんな事ありません!!」
竹之内さんはパッと目を見開いて俺の目を見つめてくる。俺もそれに答えて二人が見つめ合う形になっている。
「峻君の顔を見つめていたら勇気が湧いてきました……」
「そ、そう……」
俺は頭をポリポリと掻く。そんな事を言われると照れるな。
「お二人さん、イチャイチャしてる所、悪いけどもう落ちるよ」
「え?」
竹之内さんが呆けた瞬間、ジェットコースターは勢いよく下り始めた。その瞬間、竹之内さんの悲鳴が園内中に響き渡った。
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