第47話 照れる溝口
「それってどういう……」
「ふふ、分からないのでしたら考えてください」
竹之内さんはそういうとくるっと一回転して教室へ戻っていってしまった。スマホで時計を見ると始業時間がすぐだったので俺も慌てて教室へ戻る。
教室へ戻ると溝口が席に着いているのをチラッと見ながら自分の席に着く。一体こいつは何を考えているのだろう。
「おはよう。随分ギリギリじゃん」
「お、おう」
溝口はいつものように挨拶してくる。竹之内さんには言えるけど俺には言えない理由ってなんなのだろうか。というか、いくら頼まれているからといって溝口の事ばかり考えている気がする。
「そっちは部活、どうしたんだ?」
「行ってるよ。正式に退部が認められないうちはサボれないよ」
こういう感じで部活には真剣なのに何で辞めるんだよと言いたくなる。だがコイツなりの理由があるんだろうし俺が何か言う資格は無いように感じた。
その後、時は進み一時間の後の休み時間の事だった。
「げっ」
溝口が何か言ったのを聞いて溝口の目線を追うと、そこには工藤さんと御剣先輩が教室の入口に立っていた。とうとうここ教室まで来たということか。
「溝口、まだ決意は変わらないか」
「真由子〜、辞めないでよ」
二人して溝口の元に来るなり説得し始める。溝口を見ると凄い嫌そうな顔をしている。気持ちは分かるが先輩相手にその顔はまずいだろ。
「話は部活の後にでも聞くのでここではちょっと……」
「そのつもりだが、今日は戸松君にも聞きに来たのだ。連絡が来ないのでな」
あ、そういえば御剣先輩と連絡先交換して何かあれば報告するっていう約束忘れてたわ。そう聞いた瞬間、溝口はギロっと俺を睨む。なんだよ。
「もしかして御剣先輩と連絡先交換したんじゃないでしょうね」
「したけど。ていうか理由はお前なんだから文句言われる筋合いないぞ」
そう返すと溝口は「グギギギ」とうめき声を上げる。お前は化物か。
「なるほど、その様子だと君にも教えてないようだな」
「そうなんです。決して忘れていたわけではないんですよ」
忘れていたがこのくらいの小さな嘘は許して欲しい。御剣先輩は「ほほう」と意味深な呟きをしたが俺は気にしない。
「ていうか先輩、峻を……じゃない、戸松を巻き込むのはちょっと違うんじゃないですか?」
「それは申し訳ないと思っている。だがそれはお前が理由を話さないからだろう。それによっては大人しく引き下がるぞ」
溝口はそれを聞いて唇を噛む。正論を言われて何を返せば良いのか分からないのだろう。仕方がないな。
「先輩、それはそうなんですけどここ教室ですよ。他の人もいますしまた後にした方が良いんじゃないですか?」
「むう、それもそうだな。工藤ここは引くぞ」
「えっ、先輩!?待ってくださいよ」
御剣先輩は大人しく引き下がってくれたようでさっさと教室を出てしまった。それに付いていく形で工藤さんも走って出ていく。
「ふう」
「峻……」
溝口がこちらを覗くように顔を近付けてきた。俺はビックリして飛び上がる。急にそんなに近寄るな!!
「ど、どうしたんだ?」
「いや、庇ってくれたんでしょ?」
「ああ、まあ実際ここでする話じゃないしな」
他の生徒達、皆こっち見てたぞ。三年生の先輩、しかもフェンシング部の部長なんてそりゃ目立つ。
「あ、ありがとうね」
溝口は髪をくるくる指に巻きながらお礼を言ってきた。
「ああ、別に大丈夫だ。俺も気まずかっただけだし」
「あ、あんたねえ。素直に感謝されておけば良いの」
溝口は俺の脳天に軽くチョップをしてくる。お前、マジで男子にそういうボディタッチするなよ?俺は必死に耐えているんだ。見てみろ俺の膝、ガクガクだろ?
「ていうか竹之内さんから聞いた?」
「ああ、もしかして俺を強制的に遊園地に拉致する計画の事?」
「人聞きが悪すぎる……」
だって強制的に連れて行くって話だったぞ。俺の人権ないじゃん。
「まあ、覚悟した方が良いのは確かかな?」
「ええ、どういう意味だ!?」
聞き捨てならないんだけど俺、どんな目に合うんだよ。
「まあまあ、女子二人とデートなんて両手に花じゃん」
「竹之内さんはそうかもしれないけど、お前が花って柄があああああ」
こいつ、またもすねを蹴ってきやがった。俺はすねを抑えて悶える。
「まあ、楽しみにしてなよ。アンタに良いことあるかもよ?」
「なんだよ。良いことって?」
「それは当日のお楽しみ〜」
「なんだよ。それ」
俺はため息をつく。俺はその時、聞こえなかったんだ。溝口が小声で何を言っているかを。
「それともアンタからしたら困るかもしれないけど……」
そうして強制遊園地の日になった。その時の俺は知らなかったんだ。二人がどんな覚悟をしているかなんて。
取り敢えず一章のクライマックスに入っていく感じになります。
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