第45話 進展どう?
「竹之内さんに任せきりでいいのだろうか」
俺は一人で帰りながら呟く。まあ女子同士でしか分からない悩みなんかもあると思うので頼る事は悪い事では無いと思うのだが。
「あれ〜、家に来た可愛い男子だ〜」
後ろの方から聞いたことのある声がする。声のする方向を見ると竹之内さんのお母さんがリムジンの窓から身を乗り出して手を降っていた。俺は一瞬、躊躇したが挨拶をしないのは失礼だと思って路肩に止めてあるリムジンに近付く。
「こんにちは……」
「ちょっと、嫌な顔しないでよ〜」
正直、俺は竹之内さんのお母さんがちょっと苦手だ。あまりのハイテンションが合わない。それが表情に出てしまっていたらしい。失礼に当たるから気を付けなければ。
「今、帰りでしょ?車乗ってきなよ」
「いや、俺ここから家遠いから大丈夫ですよ」
俺は何となく嫌な予感がするので断った。勿論、迷惑をかけたくないというのもある。
「良いの良いの。私がお話したいだけだから」
「は、はあ……」
俺は押し切られる形で無理やり車に乗せられる事になってしまった。運転手を見るとこないだ家にいた榊さんだった。しかもメイド服で運転席にいる。リムジンにメイド服の人が運転してたら他の人ビックリするだろうに。俺は榊さんに住所を伝えて後ろに乗った。
「失礼します……」
「は〜い、いらっしゃい」
お母さんは自分の隣の椅子をポンポンと叩くが、俺はそれを無視して少し離れた椅子に座る。
「いけず〜」
「はは……」
俺は苦笑いをしてやり過ごす。彼女は冷蔵庫から缶を取り出して俺に手渡す。お礼を言って缶を見てみると見たことのないリンゴジュースだった。これも高いんだろうか。
「ていうか、私達自己紹介してなかったよね」
「そ、そうですね」
確か、モデルとして有名だった人みたいだが俺がモデルの名前など知っている訳はない。
「私は竹之内聖美。聖美って呼んでね」
「俺は戸松峻って言います。よろしくお願いします」
ていうかこの人、何て言った?下の名前で呼んでって言ったよな。聖美さんって呼べば良いのか?何か緊張するな。
「峻君って言うんだ。可愛い〜」
聖美さんは舌舐めずりをして俺を見つめる。何か怖いんだけど大丈夫か。しかもすっごいニコニコ笑っているし。
「ま、聖美さんが話したいことってなんです?」
「ん?そんなの美帆と進展があったかなって決まってるじゃない」
竹之内さんとの進展って何の話だろう。俺はう〜んと悩む。聖美さんはその様子を見て、「はあ」とため息をついた。
「その様子じゃ何も変わってないみたいだね」
「?まあ前より仲良くなっているとは思いますけど」
「それって友達としてでしょ?ってここまで言ったら分かるよね?」
それってもしかして俺と竹之内さんが付き合うかもみたいな話ってことか。みんなそんな事を言うが俺と竹之内さんが付き合える訳ないと思うんだけど。
「竹之内さんは俺の事を友だちだと思ってくれてると思いますけど」
「そんな訳……、ってもしかして美帆の事、苗字で呼んでるの?」
俺は肯定の意味でコクっと頷く。すると聖美さんは額に手を当てて下を向いてしまった。え、何で。
「で美帆は峻君の事をなんて呼んでるの?」
「今言われたように、峻君って呼ばれてます。そういえば下の名前で呼んでくださいって言われましたね。俺が恥ずかしいって断ったんですけど」
「何してんの?」
聖美さんが心底呆れた顔をしている。だって女子の名前を呼ぶって恥ずかしいじゃん。
「今まで彼女がいた事は?」
「無いですね」
「でしょうね」
じゃあ何で聞いたんだよと思ったがぐっと堪える。
「まあ、高校一年生だし。こんな感じなのかな〜。私が学生の頃あんまり覚えてないや」
学生時代の頃の記憶を必死に追っているようだ。この人、若そうに見えるが意外と年いってるのかも。
「まあ初々しい初恋に茶々入れるのも可哀想か。まあ良いや。今気になっている女の子とかいるの?」
「気になっている?仲良くしてる子とかって事ですか?」
「ああ、もうそれでいいや」
何か投げやりに言われる。そっちが質問してきたのにそれは何ですかと言いたいが怖いので黙る。
「それこそこないだ家に行ったメンバーですよ」
「ああ、他に女の子二人いたよね。一人は舞花ちゃんだったけどもう一人は初めて見たな」
舞花ちゃんって太田さんの事か。下の名前気にしたこと無かったな。
「もう一人が溝口って言って俺と席が隣で仲良くしてますね」
「へ〜、じゃあその子が美帆のライバルってことなのかな?」
ライバル?二人仲良さそうにしてるから普通に友達だと思うんだけど。
「で峻君は美帆、舞花ちゃん、あとその溝口さん?誰が一番気になっているのかな?」
聖美さんは不敵な笑みを浮かべて俺に問いかけてきた。
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