第44話 ライバル宣言!!
【溝口真由子視点】
「失礼しました〜」
教員室から出た私はため息をつく。引き止められる事は覚悟していたから良いものの他の先生達も止めに入るとは思わなかった。しかも即退部は却下されてもう一度考えてきてくれないかと頼まれてしまった。
「溝口さん」
声がした方を見ると竹之内さんが立っていた。まさかこの時間まで待っていたというのか。時刻を見る十九時近くなっている。練習終わりに教員室で話をしていたらこんな時間になってしまっていたのだ。
「竹之内さん、もしかして待ってたの?」
「はい。放課後、峻君と溝口さんのお話が聞こえたので気になって」
それでこの時間まで待っていたというのか。驚きを通り越して呆れてしまう。
「ハア、分かった。ただ学校閉まっちゃうから喫茶店でも良い?」
「はい。部活終わりで疲れているのに申し訳ありません」
竹之内さんはそう言って頭を下げた。すぐ頭を上げさせて校舎の外へ出た。
そして学校近くの喫茶店に二人で入った。流石にこんな時間なので芦月学園生はいないようだ。私達はテーブル席に向かい合う形で座る。店員にコーヒー二つを頼む。
「では改めて。お時間頂いてありがとうございます」
「いいよ。私達、友達でしょ?」
そうしてお互い笑い合う。距離が縮まった理由はともかく同じクラスで出来た友達なのだ。大事にしたい。
「は〜、そろそろテスト返ってくるね。嫌だな〜」
「ふふっ、溝口さんも頑張っていたのですから良い結果が出ますよ」
それはそうだろう。ここまで勉強を頑張ったのは久しぶりだ。そう悪い点では困る。まあそれでも峻や竹之内さんのような高得点ではないのは確かだ。この二人は自己採点をして平均九十くらいかなとか話している化け物どもなのだ。
「まあね。それよりテスト終わったんだからみんなで映画見に行こうね」
「峻君、面倒がってましたけど連れていくのですか?」
「当然。首根っこ掴んで連れていく」
私は握りこぶしを掲げる。勿論、女子同士で遊びに行くのが楽しいのは分かっているがこのグループではあいつがいなくては意味がない。竹之内さんは笑いながら横の髪を書き上げて耳にかける。これだ、竹之内さんがこうしただけで夜の男共はメロメロになってしまうのだろう。峻もたまに鼻の下を伸ばしているのを知っている。あいつのすね蹴ってやろうか。
「……、こういった雑談も良いのですが本題に入りましょうか」
「そうだったね……」
私としてはこのまま雑談を続けた方が助かったのだが、そうはさせてくれないみたいだ。まあ、竹之内さんは私の心理も分かった上だと思う。
「部活を辞めたがっている理由、私が浮かんでいるものはあります」
「……、それ多分大筋合ってると思うから言わなくていいよ」
やはり、竹之内さんにはお見通しという事か。しかしそれを口に出されると物凄く恥ずかしいので言わないでくれると助かる。
「分かりました。ただ、それでフェンシングの練習時間は確保出来るんですか?」
「……、夜間練習する感じになるかな。それに土日はアイツの予定次第で空けたいし」
「土日を空けるとなるとやはり練習量は減りますよね。それで目標は届くのでしょうか」
「随分言ってくれるね。私がこうしたい理由分かってるんでしょ」
そう言うと竹之内さんは苦い顔をした。やってしまった。私が竹之内さんに辛く当たってしまっているのなんて八つ当たりに近い。
「私が峻君と距離を取れば……」
「止めて。私はそんなの望んでないよ」
泣きそうになっている竹之内さんを止める。彼女が自分の気持に反する事などしてはならない。しかもその理由が私だなんて。
「ですがその理由は他の人には言えないでしょう。まして部活仲間の人達には」
「そりゃそうだよ。部活の目標を男の為に捨てるなんて良い笑いものだよね」
竹之内さんは「そんな事は……」と気まずそうに否定する。まあ、その表情で悟る。彼女は馬鹿だとは思っていないだろうが他の人が納得する答えではないのは確かだ。
「私が峻君に会うのを減らせば溝口さんも対等になりませんか」
「いやいや、だから竹之内さんが我慢すること無いって。ただ私が焦ってるだけ」
そりゃそうだ。校内一の美少女と言われる竹之内さんに好かれた男子はそれはもうメロメロになるのは目に見えている。それは峻も例外ではないだろう。まあ、アイツはかな〜り鈍いので気付いていないようだ。私の気持ちも分かってないみたいだし。
「そりゃフェンシング捨てるつもりはないよ。競技は続けるしただ私ってそういう事でも負けたくないんだ」
「私も……、溝口さんに負けたくないです」
そして私達は正式にライバルになった。二人向かい合っているのが何故かおかしく感じて二人で笑ってしまう。
他の人に言える訳が無い。峻が竹之内さんに取られるのが怖くて放課後も一緒にいたいから部活を辞めたいだなんて本当におかしい。
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