36.欠けた通行証
「きたぞー」
「また大所帯やんなあ」
「やっぱりランちゃんは人気ねぇ」
「賑やかなのはいいことだよ」
フーテンさんちのいつメン、エドさんにヤマビコさん、リーさん、ポユズさんも到着。こちらも装備がちょいちょい変わっている。
総勢えーと、21人! たしかに大所帯である。みんな暇してるもんだなあ。
ギルド前ではないものの、ワチャワチャしていると邪魔になるので早速フィールドへ移動。
「竜巻の街ですのね。掲示板で見たことがありますわ」
「そうにゃん~。『パラシュート』はみんなあるにゃん? ない人には飴を配るにゃ」
結構持ってない人が多かったので、作っておいてよかった『パラシュート飴』。
「舐めてる間、魔法が使える飴ですか。面白そうですねえ!」
「それなら絶対『クリーンヒット飴』が欲しい!」
「そのアイデアいただきにゃん~!」
飴を持って盛り上がる着ぐるみたちに、猫もぱちんと手を打つ。
猫は『クリーンヒット』を使えないけど、レトに手伝ってもらえば作れそうじゃない? 新しいアイテムのアイデアはわくわくしちゃうな。
飴配りを終えたあとは、それぞれPTを組む。バランスとか考えずに隣同士とかで組んでて適当すぎる。さてはみんな何も考えてないな!
そしてあっという間にアライアンスが作られた。アライアンス名は「ネコと和解せよ」。誰だ作ったのは。
「タンブルウィード100個なんて余裕では」
「アライアンスだしもっと多いんじゃない?」
「PTでも同じだったはずだから、PTかける100じゃないかなあ」
まずは竜巻を起こそうということで、皆でタンブルウィードをしばいていく。さすがに人数が多いと早い。100では足りなかったようだけど、そんなに多くはなかったんじゃなかろうか?
「お、きたで!」
「すごい風だーー」
荒野を強い風が吹き始め、あっという間に猫たちを空へ拐っていく。通常会話が聞こえなくなったかと思うと、アライアンス会話に切り替わる。
『こういうのいいよねー大好きー!』
『たっ、高いところはちょっと……!』
『思ったより飛んでる感ありますね』
思い思いに感想を言いつつしばし空の旅。やがて廃墟の街と城が見えてきた。
フーテンさんと目を合わせると、ぐっとサムズアップ。
『そいじゃいきまーすーー』
『やったれー!』
『みんな飴の用意忘れずにー!』
『ウィンドストーム』が放たれて、竜巻が一瞬力を失う。猫たちは風の渦を放り出された。
『やっほう!』
『『パラシュート』! おっ本当に使えるー』
『いいなこれ、無駄にいろいろな飴欲しい』
『わかる~』
普段ストイックに属性を絞ったり、覚える魔法を選んだりしている人たちにとって、『魔法飴』はなかなか面白いアイテムであるらしい。作ってみてよかったな。
ジョークグッズとしても面白いかもしれないから、需要とかあまり考えずに作っちゃってもよいのかも。
ふわふわゆっくりと降りながら、廃墟の街へ上陸していく。
『つまり、黄色い石畳を選んでれば安全ってことですか』
『そうにゃん~』
『それで案山子、木こり、ライオンを集める』
『と思うにゃん』
『見た感じ、道がかなり狭いわよね? PT単位での移動にする?』
『目的が決まってるなら、わかれちゃった方がいいかもしれないですねえ。これだけ固まってると事故りそう』
『たしかにそれは心配ですね』
『一理あるにゃん~』
たしかに事故は怖い。攻撃を避けたら後ろの人に当たっちゃったとか、よくあるパターンだ。
アライアンス全体で案山子たちが1匹ずつということないだろうし、まずはPT毎に分かれてみることに。
「よろしくおねがいしまーす!」
「わたくし攻撃しか出来ませんわ…」
「わたくしもですわ」
「知っていますわ」
「いやあ、適当なPT分けを早くも後悔ですね!」
「に、にゃん…!」
猫チームは着ぐるみ2体(ショーユラさんとミソラさん)にティアラさん、ナマナマさんという組み合わせ。猫がルイ付きなのでこれでフルPTだ。ちなみに今回の猫はレトとシロビ、ロニもついている。
全体的に生産メインで固まってしまっているということはつまり、攻撃型魔法師しかいないということである。
「攻撃は最大の防御…!」
「すべてを滅ぼすしかない!」
「そんな火力ないでしょおじいちゃん」
「ぼくかわいい熊ですのに!」
「まぶしい熊の間違いですわ」
ワチャワチャ話していると、廃墟の奥で何かが光った。
「にゃ」
「あら?」
ティアラさんも見えたらしい。
「どうしました?」
「今、なにかがあっちで光ったにゃん」
「ええ、たしかに。チカッとしましたわ」
「お? なんだろな」
光った方角へ行くと黄色い石畳は外れてしまうが、赤や青ではなく、灰色の石畳だ。それなら、ちょっと行ってみようかということになった。
「あ、今のは見えた。たしかに光ってる」
「ですねえ」
近づいていくと、そこには家に押し潰された人がいた。足だけが出ていて、その足は銀色だ。
「なるほど、オズの魔法使いか~」
「まあオズは足全体が銀ではなかったけどな」
あ、そうか。
猫、フーテンさんに靴を返したんだよね。だから『銀の靴を履いてない』ということになって、違うイベントが起きているのか。
どうやらアライアンス単位ではなく、PT単位でイベントが進んでいるようだ。
「というか、これ人形なんじゃありませんの?」
「ハッ、言われてみればたしかに!?」
ティアラさんの指摘に、ナマナマさんがまじまじと足を眺める。鉄の具足のように見えなくもないが、たしかに家の下に体が続いているようにも見える。
「本来なら靴を持っていくところですが、さすがに足を引っこ抜いていくのは良心の呵責がありますね」
「それ以前に引っこ抜けるのかが?」
「まあやってみますか」
試してみると、予想外にスポンと銀の足が抜けた。もう片方も。
抜けた足に驚いていると、アライアンス会話が。
『質問!家の下から鉄の足が生えてる人いる~?』
『はい! こちら足を引っぱったら足だけ引っこ抜けました!』
『こちらもですね』
『それでいいのぉ!?』
『あー、銀の靴がないとそういうイベントなのね~』
どうやらフーテンさんとこのPT以外はこの、鉄の足に辿り着いているっぽい。
「うーん、中は空洞で、機構があるような感じではないかな」
「足首はどうです?」
「外れないっぼい」
「可動なしか~」
鉄の両足をナマナマさんやショーユラさんたちが調べていると、後ろから羽音が聞こえてきた。ハッと振り向くと、大きなトンボのような……、ドローン? が浮いている。
「芸術都市へようこそ!」
「喋った!?」
「ここは願いが叶う街。城を目指しなさい。王様が願いを叶えてくれる!」
「お、おう」
「城に入るなら『通行証』が必要だよ。幸せは黄色が教えてくれる!」
甲高い機械音声でそう告げると、トンボ型ドローンは空高く浮かび上がっていってしまった。
その軌跡を見上げて、ナマナマさんが呟く。
「芸術都市…」
「あ、これ『欠けた通行証』ですね」
「いや、それよりも芸術都市だって! あの幻の!人形製作が伝わっていたという街!」
「にゃん? 学園都市になる前、アルカディアは芸術都市だったって話にゃんよ?」
「そうなの!?」
猫が言うと、ナマナマさんは目を丸くする。
あ、ちなみに『欠けた通行証』は鉄の足がそうだったみたい。
「学園都市のマレビト研究してる教授が言ってたにゃん」
「それってもしかして、行き倒れおじいちゃん?」
「そうにゃん~」
「あの人、自分で話できたんだ!?」
どゆこと!? と思ったらあの行き倒れイベント、進め方によっては助手としかお話が出来ないらしい。いったいどういう進め方をしたんだナマナマさん…。猫なんて普通に食事と飲み物を与えただけなんだが。
「学園都市が芸術都市だった話は僕も聞いたことありますねえ。むしろナマさんが知らなかったのが意外ですよ」
「学園都市は迷子イベントが多すぎてキライで…」
「ココロちゃんはアレ大好きですけれどもね~」
霧の迷子か。あれはたしかに怖がりには難しいし、ホラー好きには堪らないだろう。ココロさんがクリアしてないのが意外だけど、ホラー好きの怖がりって話だから、途中で振り向いちゃうのかもしれない。
みんな、いろいろな進め方をしているんだなあ。
「いやー、人形製作出そうでワクワクだなー!」
ナマナマさんは拳を握ってふるえている。彼らが人形製作師になってくれればロニを昇華させて新しい体を…と目論んでいるので、猫もワクワクである。
『速報! 『通行証』はPT人数分必要!』
『鉄の足に加えて、案山子も『欠けた通行証』のようですね。アイテム欄に収納出来ます』
『どうやら『欠けた通行証』3つで『通行証』になる模様。アイテム欄に入れるとくっつきますぞ!』
『そうだったにゃん!?』
前回、案山子は自動でついてきたから、収納してみるという発想がなかったな。
『待って『欠けた通行証』ってなに!?』
フーテンさんたちは銀の靴でショートカットしたので『欠けた通行証』自体が何かわからなくて混乱している。かくかくしかじかと説明がされる。
『あー、もしかして前回ダメだったのって、その『通行証』とやらが足りなかったからかな?』
『そうかもしれないにゃん~~』
紙2枚旅、まさかのショートカットのせいで撃ち落とされていたとは。猫たちが連れていたのは案山子と木こりとライオン。『欠けた通行証』3つ分で1人分にはなっていたけど、どっちが持っていたわけでもないから入れなかった、ということなのだろう。
謎はすべて解けた。
「にゃん~、後は案山子と木こりとライオンを集めて、人数分の『通行証』を作るにゃんね」
「出てくる敵はウィッチボットにスチールソルジャーですか」
「わたくし反射系は得意な方ですの!」
「俺、苦手~」
「『ミラー』要員はタンクみたいなもんっしょ。後は皆で総攻撃で」
「ですね!」
「任せてくださいまし!」
ティアラさんの頼もしい一言に、彼女を先頭に黄色い石畳を進んでいく。とはいえ石畳を外さなければ、ウィッチボットエリアでは攻撃はされないはずだ。
まずは自爆するウィッチボットを探して、案山子を作る作業からか。
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