33.竜巻の街へ
タンブルウィード100個狩り、めんどくさいと思っていたけど意外と楽に終わった。話しながらポクポク歩いていたらわりとすぐでしたね。
フーテンさんの風の純魔クエストの進捗は芳しくなく、貴族の相手大変なんだそうだ。貴族、貴族といえば最近、猫なにかあったな。
「あ、そうだ。猫の『羊実の丸焼き』いるにゃ?」
「またとんでもないものを持ってるにゃん」
『羊実の丸焼き』は、バロメッツのドロップ『羊の木の実』をヤマビコさんに『料理』してもらったアイテムだ。先日運送ギルドで受け取ってきた。なんか……こう……悪魔的な見た目のアイテムだった。猫はどんなに美味しくても食べたくない、そんな感じ。でもこれが悪魔的美味しさで貴族に大人気のアイテムなのだという。料理って奥が深いね。
「ヤマビコが猫ちゃんから『羊の木の実』買ったって言ってたけど、その関連?」
「それにゃん。……あ、来たにゃん」
「おっと」
話していたら風がどんどん強くなってきた。あっという間に竜巻に巻き上げられる猫たち。ぐんぐん上昇していく。
ちなみに今日の猫は、騎乗しているルイとロニだけを出している。ロニを連れていくかは悩んだけど、前に巻き上げられたときもロニはいたしね。
『猫ちゃん『パラシュート』持ってる!?』
『持ってるにゃんよ~』
『ならよかった~~』
浮かび上がりつつの会話は通常会話だと聞こえず、パーティー会話だ。
ぐんぐんと竜巻は進んでいき、廃墟の街が見えてきた。
『見えたにゃん!』
『よし、いくよ~~』
フーテンさんが巨大な杖を出し、構えたと思ったら、背後からすごい風が吹いた。
『にゃん!?』
『『ウィンドストーム』には『ウィンドストーム』をぶつけるのがお約束にゃん~!』
『そんなお約束が!?』
渦巻く風がフーテンさんの杖から生まれて、背後から吹いてきた風を引き連れていく。
ふたつの渦がぶつかりあって、フッと猫たちを取り巻く風が消えた。当然、落下していく。
『にゃあ、こんな方法でいいにゃん!?』
ギミックはいらんかったの!?
あわてて『パラシュート』を使うと、落下速度が緩まる。同じく『パラシュート』を使ったフーテンさんが笑う。
『たぶんクエスト系のクリアと物理クリアとあるんじゃないかなあ~。LVを上げて殴ると大抵のことは解決するんじゃよ……』
『高レベルパンチにゃ…!』
じ、情緒がない……!
いや、無事廃墟の街に着くのならなんでもいいか!
猫の情報収集に穴があったのは間違いなさそうだし、たどり着けるならなんでもよかろうなのだ。
ふわふわゆっくりと落ちた先は、ちょっと廃墟の街からはずれていたけど、十分見える範囲。成功といっていいだろう。
むしろ街のド真ん中に降りるよりは、心の準備が出来てありがたい。
猫はルイに、フーテンさんはファントムホースに乗って廃墟の街へ向かう。『空飛ぶ絨毯(ミニ)』は、短距離をゆっくりならいいけど、長距離を走るには不向きらしい。
近づいてきた街は、古びて倒れた建物の残骸で出来ていた。
「上から見るよりもひどいね~」
「にゃあ……」
これじゃ探し歩くって感じじゃないなあ。
瓦礫や灰の散らばる石畳には、もとは何かの模様が描かれていたのだろう。褪せたいろいろな色の石が点在している。
「猫、まずは下敷きになった魔女と銀の靴探しかと思ったにゃん」
「『オズの魔法使い』ね~~」
竜巻から辿り着くといえば、やはり『オズの魔法使い』かなって思うじゃん。フーテンさんもうなずいている。
『オズの魔法使い』は愛犬トトと共に竜巻に巻き込まれ、家ごと別世界へ辿り着く少女ドロシーが主人公の物語だ。この家が悪い魔女を下敷きにして倒し、善き魔女から祝福と、悪い魔女の魔法の銀の靴をもらって旅立つ。
「このゲームで銀の靴といえば、『ロキの靴』だけどね」
「にゃあ、メタにいくにゃん?」
「一応、用意はしてきたよ~」
「さすが大商人にゃん!」
フーテンさんが取り出した靴をサッと猫に差し出す。
「にゃん?」
「猫ちゃん履ける?」
「猫が履くにゃ?」
「高LV魔法使いの靴装備には貴重な回避力上昇がついてましてね……」
「脱がすと更に紙になるにゃんね」
なるほど理解。
猫、『ロキの靴』はギリギリ装備LVを越えております。ペチカちゃんと旅したルイネ旅行のときには足りなかったけど、今ならいける。猫も成長しているのだ。
早速装備すると、『ロキの靴』がキラリと光った。おお、なんだかマジカル。
「メタ読み当たっちゃった?」
「ぽいにゃんね~」
オズの魔法使いといえば、靴の踵を三回打ち鳴らすのがお約束だが。
「待った、これ帰還の魔法だったはずにゃん」
「ハッ!?」
『オズの魔法使い』の最後は、銀の靴の魔法でドロシーの故郷へ帰るのだ。
猫とフーテンさんは顔を見合わせた。
「にゃん……」
「にゃん……」
戻ったら意味ないもんね。
「やっぱりメタはダメにゃ」
「地道にいきますかぁ~」
気を取り直して、入るぞ、廃墟の街。
フーテンさんがファントムホースをしまって『空飛ぶ絨毯(ミニ)』装備になる。高低差のあるところは、ファントムホースでの移動が難しいらしい。猫は変わらずルイに騎乗。ルイはある程度の高低差はものともしない。
「一応道っぽいものはあるにゃんよ」
「わかりやすいねえ」
石畳の色合いが、色とりどりだったのが一色に集まっているところがある。これがたぶん道だろう。あっちは赤、こっちは緑。赤と緑なら、やはり緑を通りたくなるのが人情というもの。
なるべく高低差のない道を選んで進んでいくと、魔女っぽい帽子を被った人が立っているのを発見!
「人がいるにゃん」
「猫ちゃん、待った! ……『ミラー』!」
猫の前に出された杖から大きな鏡面を持つ六角形が出され、その前でドンと火柱が上がる。
『ミラー』は相手の魔法を跳ね返す魔法。
「にゃん!?」
「ウィッチボット! どっか隠れて!」
「にゃああ~~!」
猫はあわてて瓦礫の影に飛び込む。その後ろを火炎放射が通りすぎていった。ワオ。
ウィッチボットは魔女型砲台と呼ばれる罠のようなmobで、射程範囲に入ってきたプレイヤーを魔法属性の攻撃で狙ってくるという。mobなので破壊可能。
猫が隠れてる隙に、フーテンさんが『ミラー』を駆使してウィッチボットを倒してくれる。
「焦った~~」
「にゃあ、大丈夫だったにゃん?」
「俺もだてにソロ魔してないのよ」
いやフーテンさんほぼ固定PTじゃん、とは猫も突っ込むまい。
「街中だと思って油断してたにゃん」
「ね~。どうしたものか……」
どうやらウィッチボットは3体いたらしい。発見距離より接敵距離の方が短いとはいえ、見逃すと防御力紙のふたり、一気に蒸発してしまう。
「ウィッチボットは魔法攻撃だから『ミラー』でなんとかなるんだけど、唯一、ピラー型だけは『ミラー』対応が無理なんだよねえ」
「にゃん~」
ピラー型というのは『アイスピラー』『アースピラー』に代表される、敵の真下から柱が伸びるタイプの魔法のことだ。これは『ミラー』での反射が出来ないとされている。
『ミラー』対応できないとなると、猫たちは接敵即蒸発になってしまう。
「フーテンさん、これあげるにゃ」
「にゃん?」
差し出すのは作ったばかりの『ポヨ飴』。
「反射は出来ないけど、致死ダメージを無効に出来るやつにゃん」
「にゃんと。じゃあむしろ防御力紙のがいいってこと?」
「そうなるにゃんね~」
街着に杖だったフーテンさんはひとまず戦闘用装備にお着替えした。
「にゃん?」
「上級魔法師の装備は街着より防御が紙なのよ…」
「にゃんと……」
防御力とかHPと引き換えに魔力を上げる装備があるらしい。魔法師って、本当に一発当たると終わる職なんだなあ。なお、回避力は街着よりあるらしい。
「ソロとか無理なのでは」
「PT用装備だね~」
やはりソロ用とPT用とかあるんだね。
猫は街着と戦闘用装備はまだ特にないんだけど、学生装備からエンジニア装備へ着替える。学生スタイルだとMP増強のサッシュが装備できないからね。こういう風にして戦闘用装備ができていくんだろう。
猫は『ポヨ』が使えるので、フーテンさんに手持ちの『ポヨ飴』をすべて渡す……と思ったが、所持量限界にぶつかって全部は渡せなかった。
「『運搬』あるのに!?」
「『運搬』は鞄アクセがないとあんまり効果ないからね~」
「猫が装備持っててあげるにゃん……」
「にゃん~~!」
冗談だけどね。さすがに上級魔法師の装備なんて預かれない。
わちゃわちゃしつつもウィッチボットを避けたり、やむを得ず戦ったりしつつ進む。
「『ポヨ』すごいねコレ!?」
「風猫族から買った幻属性の魔法にゃんよ~」
「風猫族から!? 教本?」
「写し伝いにゃんね~」
「またなんか変なの拾ってるにゃん~~」
そういえば『ポヨ』の詳細は話したことなかったっけ。まあいいか。『ポヨの魔法式紙片』はレトが覚えられるかと思って取っておいてたんだけど、レトは字を書くのは難しいみたいなんだよね。だからフーテンさんに譲ってもいい。とはいえ、それは今話すことじゃない。
今。
ウィッチボットの集中砲火から逃げて安全地帯に駆け込んだところです。
「危ないところだったにゃん」
「さすがに7体は無理よ……」
瓦礫の隙間にぽっかりと空いた空間で、猫とフーテンさんは考える。
「東の魔女を探す展開だと思ったんだけどね~」
「もしかしたら『ロキの靴』がダメだったかもしれないにゃ」
「でも東の魔女を倒して北の魔女に会ってからは、銀の靴履いてたよね?」
フーテンさんが中空を見つめながら言う。オズの魔法使いについて調べているんだろう。猫も調べて思い出す。
「魔女と会ったあとは、黄色いレンガの道を通っていくにゃんね」
「あ~~、石畳の色かあ」
ふたりの魔女に会う場面は、銀の靴を持ってるからショートカットしてる可能性が高い。
「メタ読みしたらヒントがなくなったパターン…?」
「やっぱり地道に楽しまないと、よくないのかもしれないにゃん~」
まあこれ以上、メタ読み出来るところもないのだけどね!
とりあえずここで北の魔女に会うことはもうあきらめて、黄色い石畳を探すことに。
幸いにして、すぐ近くに黄色い石の集まっている場所を見つけることが出来た。
「エメラルドシティに向かう道にゃんね~」
「お~~」
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