番外編:新年の幸福を祈って・前編
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
新年最初の更新は、予告どおり番外編の前編です。
ゲームの中の世界も、年末年始は雰囲気が違う。キンキラのドでかいクリスマスツリーがあちこちに建つ(もはや立つというレベルではない)し、年始には神殿に鳥居が出現したりと、わりとなんでもありだ。
リアルと同じく、華やかで忙しない空気に包まれる。
『今年の新年イベントは呆気なかったにゃんね~』
『まあ毎年同じようなもんだからね~。クリスマスで力尽きちゃうのかもね』
新年のイベントは神殿へ参って鳥居をくぐり、おみくじを引くものだった。あまりにも簡易だが、大当たりはSP10が出るとあってどこの神殿も盛況している。三が日中に参らなければイベントが終わっちゃうので、この為だけにVR機器付きで帰郷する猛者もいるらしい。まあ、初詣みたいなものですな。
猫は小吉で、『幸福あわ』をいただいた。まさかの穀物。リアルでいうところの餅みたいなものだろうか? だとしたら真実、お年玉だ。
『猫ちゃんはおみくじどうだった?』
『猫、『幸福あわ』もらったにゃん』
『あ~、食べ物シリーズね』
『おせちとかあるにゃん?』
『いや、今年は野菜? が多いらしいよ~。料理人しか喜ばないだろって言われてる』
『野菜』
冬の疲れた体にビタミン取れという運営からのメッセージだろうか。たしかに野菜は不足しがち。……いや、そんなわけないな。
ふむ、なんだかちょっと気になっちゃう。
試しに『おみくじ食品、買い取ります』と買い取り枠を出してみたら、どんどこ来た。
続々とやって来る『幸福セリ』たち。セリ……。セリ鍋でもしろってこと?
あとは『幸福砂糖』に『幸福小麦粉』。こちらはなにかお菓子でも作れそう。
それにしても、セリ?
気になる気になる。
野菜のことで頼りになるといえば、やはり野菜売りのおばちゃんだ。店を閉めて会いに行くことにした。
新年なのでいるか不安だったが、いつもの場所にいてくれた。
「おばちゃんにゃーん、あけましておめでとうにゃん~!」
「あけましておめでとう! 今年もよろしくだよ」
「こちらこそにゃん~!」
新年の挨拶を交わして、まずは台車の中を覗き込む。
「今日は菜っ葉ばかりにゃんね」
「これは『幸福ナズナ』だよ」
「にゃ」
これは猫、ピンと来ちゃったぞ。
「七草粥の材料にゃんね」
「七草粥? マレビトのところではお粥なんだね」
「にゃあ? こっちではお粥じゃないにゃん?」
「他所は知らないけど、この辺じゃクッキーか飴玉を配るんだよ。『七福クッキー』とか『七福飴』っていって、神さまからもらった材料で作ったり、神さまの祝福をいただいた食べ物で作るんだ」
「そういう風習があるにゃんね!」
詳しく聞いてみると、幸福と名のつく材料ならなんでもよくて、七草全部が必要なわけでもないみたい。集まった材料を使って、7日までに済ませる風習だそうだ。たくさんクッキーや飴玉をもらえればその年も幸福に過ごせる、という言い伝えがあるんだって。
猫はNPCたちにはお世話になってる身。それは面白そうなので是非やってみたい。
「『幸福ナズナ』くださいにゃん!」
「はいよ、お買い上げありがとう!」
クッキーの材料なら、あと必要なのは卵とバター。この材料なら、酪農の里ファームへ行けば間違いないだろう。
さくっと転移施設で移動、お買い物。
牧場の牛や鶏が光輝いていて、やたらと神々しい……。神さまの祝福ってわかりやすいんだね。
「今年は祝福を受けた子が多くて嬉しい限りです」
「よかったにゃんね~」
喜ぶ牧場主さんたち。
『幸福バター』と『幸福たまご』は、穀物と交換出来るという。なるほど、ここで必要になるのか『幸福あわ』!
早速あわと交換してもらい、バターとたまごを入手。物々交換じゃなくて、『幸福あわ』を持ってきたらショップが開くというかたちだった。どのくらい必要になるかわからないので、ちょっと多めに買っておく。余ったらヤマビコさんにあげよ。
クッキーはもう作れるけど、どうせなら七草すべて集めたい。草がありそうな場所ってどこだろう? 畑か?
試しにマイルームの庭へ行ってみると、なんと光輝いてましたね、ええ、ラコラが……。
白ラコラは『幸福スズシロ』、赤ラコラは『幸福スズナ』になった。なんてこった。神からの祝福が庭に!
でも残念ながら、他にはなさそう。農家ギルドを覗いて種を確認してきたけど、ゴギョウにハコベラ、ホトケノザなどは見つからず。うーん、まあ種を植えて育てる野菜って感じじゃないもんね。
農家に出来ることじゃないなら、八方塞がり。
……こういうときは露店だ。
そういえばさっきは『おみくじ食品』で買い取りしたし。次は『幸福食品』で買い取り露店を出してみるか。
やってみると、またまた続々と集まってくる草たち。どうやらmobからの正月限定ドロップ品らしい。いろいろなところで出るけど使い道が『料理』しかない、微妙なレアドロップなんだって。かなり余っているようで、あっという間に全種類集まってしまった。
集まったらレッツクッキング……、いや、レシピがないか。
クッキーや飴玉くらいならレシピなしでも作れるけど、名のあるものならレシピはありそうな気がする。
まずは料理人ギルドに行ってみる。
書庫にはなし。受付さんにも聞いてみよう。
「幸福材料を使った『七福クッキー』や『七福飴』のレシピを探してるにゃん~」
「まあ、マレビトさんがそのレシピを探してらっしゃるなんて! 『七福クッキー』なら特別にお教えしましょう」
『七福クッキー』のレシピを手に入れた!
同じように『調薬』ギルドも回ると、『七福飴』のレシピも手に入れることが出来た。
いやはや、意外とこれ、集めるの大変なんじゃない? 猫はいろいろな職業を取ってるし、商人だから買い取りですぐ集まったけど、集めようと思ったらなかなか大変そうだ。
レシピを眺めてみるけど、特に変わったところはない、と思いきや、なんだこりゃ。
『待っている間、神への祈りを捧げ、新年の舞を踊る』
『出来上がったらみんなで分け合う』
などとレシピ文に書いてある。
こんなレシピある??
……あるんだから仕方ない。
神への祈りに新年の舞、これはどうもアクションだな。神への祈りはお祈りアクションとして、もうひとつ、新年の舞アクションをもらってこなければならないっぽい。
たぶん神殿だな~、ということで再び参拝。初詣はおみくじだけ取りに行ったから、今度はしっかりめにぐるっと回る。
一周まわると、ちょうど神官さんたちが本殿へ出てきて新年の舞を踊るところだった。
「さあ、ご一緒に舞いましょう」
「にゃ!」
誘われて一緒に舞うと、新年の舞アクションを入手した。
これでようやく、全部揃ったぞ。
早速、『料理』を始める。クッキーはごく普通のクッキーで、違うのは乾燥させた七草を粉末にして混ぜ込むところ。抹茶クッキーみたいな色になる。
型抜きしてもいいみたいだけど、肝心要の型がない。丸型でいいや。アイスボックスクッキー方式。
並べて焼いている間に、オーブンの前で祈りを捧げ、舞を踊る。
……あやしいなこれ……。で、でもレシピに書いてあるんだもん。
踊り終わるとキラキラとした光が飛び出てオーブンの中に消えた。なるほど、こうなるわけね。謎の舞だけど謎じゃなかった。よかった。
チンと焼き上がれば、『幸福クッキー』の完成だ。3枚入りで1袋。残念ながら、七福じゃない。何か外しちゃったかな?? 一応、レシピ通りなんだけどな。
まあいいか、内容は『新年の幸福を祈って製作されたクッキー』。うんうん、出来てるんじゃない?
『幸福小麦粉』『幸福バター』『幸福砂糖』『幸福たまご』に幸福七草を1つずつ使って、出来上がる量は『幸福クッキー』10個分。
同じく『調薬』で飴玉も作成。
これはハサミで切って丸めた飴玉をバットに並べてから祈りを捧げ、舞を踊る。
新年のお慶びを申し上げまーす!!
……やはり謎の舞だなコレ。
ピカッと光が降り注ぎ、冷やしかたまったら『幸福飴』の完成。パッケージは7粒入りで1袋。
こちらは『幸福砂糖』1個と七草各種で『幸福飴』3個。
ふむふむ、材料を考えると飴の方がお手軽だけど、出来る分量はやはり少ないんだな。『幸福砂糖』はあまり買い取り出来なかったし、素材自体がレアとみた。
出来た『幸福クッキー』と『幸福飴』を持って、早速野菜売りのおばちゃんの元へ。
「おばちゃんにゃーん!」
「はい、いらっしゃい」
「教わったクッキーと飴玉、作ってきたにゃんよ~」
「おやまあ!」
おばちゃんは大いに驚いたあと、嬉しそうに受け取ってくれた。
「まあまあ、マレビトの猫ちゃんから七福菓子をもらえるなんてねえ。とっても嬉しいよ。お礼に私からもこれをあげようね」
猫は『七福飴』と『七福クッキー』を手に入れた!
「ありがとうにゃん! 猫が作ると『幸福クッキー』と『幸福飴』になっちゃうにゃんよ~」
「それはそうだよ。七福菓子はね、人からもらわないと意味がないのさ。よく見てごらん」
言われておばちゃんからもらったお菓子を見てみる。
『七福クッキー』
新年の幸福を祈って製作されたクッキー。あなたの幸運を祈ります。なにかいいことがあるかも。食べるとSP1が手に入る。(最大10)
『七福飴』
新年の幸福を祈って製作された飴。あなたの幸運を祈ります。なにかいいことがあるかも。食べるとランダムで能力値が1上がる。(最大5)
「にゃん!?」
こ、これは太っ腹!
さすが新年のお祝いだけある!
「にゃあ、すごいにゃん~」
「そうだろう? 神さまの祝福がぎゅーっと詰まっているんだよ。この時期におうちで作る祈念料理なんだ。みんなで配りあって、新年の慶びを伝えあう」
「いいにゃんね~! 猫もやってみるにゃん!」
「ああ、本当にありがとうね」
手を振ってお別れして、猫と親交のあるNPCたちに会ってくることに。
屋台のおじちゃんに、『緑の軌跡』の店主さん、屋台販売所のお姉さんに、本屋さん。それからいつもお世話になってる魔法ギルドのお姉さん、冒険者ギルドの素材買取所のお兄さん。
「にゃあ」
飴玉は足りないし、クッキーは余っちゃうな。
とりあえず飴玉は作り足そう。たくさん買取したし、まだまだ材料はある。ラコラは自家製だしね。
それぞれ回って、いろいろな話を聞いたりして、手元に余ったのが、クッキー3個と飴玉2個。
これって、プレイヤーに渡しても効果があるのかな??
材料はあるし、せっかくだからお年賀代わりに配ってみるか。もし効果がなくてもNPCへの差し入れに使ってもらえばいいし、効果があったら万々歳!
評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。
最近は七草パンケーキとかあるらしいですね!
後編は明日更新です~




