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動物たちの作戦会議


ぽつんと部屋に取り残された私はフランソワのベッドに蹲った。


フランソワの薬草の香りが残っているような気がする。


寂しいな・・・と思っていたら、プードルのアリが顔を覗かせた。


「スズ!作戦会議だよ!おいで!」


と言われて、慌ててベッドから飛び降りる。


オウムのセミとプードルのアリと猫のトンボ、そして、子猫のスズは円陣を組んで作戦会議を開始した。


セミは絶対に逃げないという信用があって日中自由に外出させてもらえるし、アリは散歩の時間に、トンボは夜間歩き回って、悪者とセルジュの情報を集めてくれたらしい。


さすがだ!頼りになる!


トンボは何とセルジュが監禁されている場所を見つけたという。


フィリップとミシェルも隠し通路のことは知っていて、夜中に頻繁に通路を使って出かけているそうだ。


皇国は、危機管理の一環として皇宮周辺の土地・建物を何年もかけて買収してきた。例えば、緊急に皇宮を拡張しなくてはいけない場合や、城壁を厚くする必要がある時などに、周辺の住民がいない方が工事を進めやすい。


そのため皇宮周辺の土地・建物は主に皇族らが所有・管理している。


皇太子が所有・管理している屋敷の一つが隠れ通路につながった屋敷であるが、当然ルドルフ第二皇子が所有・管理している屋敷も皇宮周辺には存在する。


セルジュはルドルフが所有する屋敷の一つに監禁されているという。


猫のトンボは更にセルジュの身近にいるネズミと話をしたそうだ。


ネズミによるとセルジュは常に薬漬けになっている状態で、話もろくに出来ない。


食べ物は最低限しか与えられず、その食べ物の中に薬が仕込まれているようだ。


今度食べ物を持って来るから、薬の入った食べ物をセルジュに食べさせないようにとネズミにお願いしたトンボは、猫の本能に逆らうのは大変だったと述べた。


プードルのアリは、散歩中にアンジェリックのペットのサルーキという犬と遭遇することがあるらしい。


サルーキによるとフィリップはほとんど皇宮にいない。ミシェルはアンジェリックと気が合うらしく、何時間も人の悪口で盛り上がっているという。サルーキの散歩に行く時もアンジェリックとミシェルが一緒のことが多いらしい。


ミシェルは何か大切なものを小さな袋に入れて、常に首から掛けているとサルーキは言っていたそうだ。


オウムのセミは、ミシェルが中庭のベンチに座って、小袋から白い鱗のようなものを取り出して、日に透かして見ていたのを目撃した仲間がいると言った。


呪いに使った神力のある材料(鱗)を粗末に扱うと自分に呪いが返って来ると以前フランソワが言っていたし、きっと鱗はミシェルが大切に首から下げているに違いない。


私は彼らの情報収集力に心から感服した。


御礼を言うと


「いいのよ。スズ。そんな悪党たちを放っておいたらナターリヤのためにもならないわ」


とセミが優しく言ってくれる。


次にどうやってミシェルから鱗を奪うかの作戦だ。


アリから


「ねぇ、スズは人間だった時、魔法が使えたのよね?今は使えないの?」


と尋ねられ、試しに部屋にあった植木鉢の土に魔法を掛けてみる。


部屋を汚してはいけないので、小さな土人形を作ってみようかな、と意識を土に集中させると、土と繋がった感覚が確かにあった。


植木鉢の土がメリメリと盛り上がり、小さな土人形が踊っている。やった!


三人(人じゃないけど)が感嘆の声をあげた。


「じゃあ、私が土の魔法が使えるという前提で・・・」


と話し合いが進んだ。


夕方フランソワと姫が戻ってくる頃には、大体の計画が決まっていた。



部屋に戻って来た時、ナターリヤ姫の笑顔は輝いていた。


とても楽しかったのだろう。フランソワは安定の無表情で良く分からないが。


夕食の時間も姫は饒舌だった。


街の様子やその日あったことを生き生きと喋っている。


フランソワはたまに相槌を打ちながら、穏やかな笑みを浮かべている。


そんな二人を見ているだけで胸が苦しくなる。この二人はいずれ恋に落ちる予感がする。


私はぷるぷると首を振って、雑念を追い払った。


今はやるべきことに集中!


お行儀が悪いのは承知で私はテーブルに飛び乗った。


「あ、スズ!ダメだぞ」


と甘い声でフランソワが注意するのを無視して、私はテーブルの上で余っていたパンを咥えて引っ張り出し、テーブルから床に落とす。


床に落ちる直前でトンボが受け止め、そのパンを咥えてトトトっと部屋から出て行った。


姫は呆れたようにその様子を眺めていたが


「変ねぇ。パンなんて今まで興味を持ったことがないのに・・・」


と呟いた。


私はフランソワに抱き上げられ、膝に載せられた。


優しく撫でられながら


「こら、お行儀悪いぞ」


と甘く叱られる。


うん。猫の私なら何をやってもフランソワは許してくれそうな気がするわ。


うまくパンがセルジュに届きますように、と祈りながら、私は喉をゴロゴロならしてフランソワの膝の上で丸くなった。


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