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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第16蝶 影の少女の解放と創造主

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休息と謎アイテムの正体

今回はちょっとした振り返り回です。

砂漠に来て、トテラに会ってからの復習みたいな感じです。





「マヤメ、戻ってきたよ」

「ほぇ~、一体どうやったの? スミカちゃんの服も戻ってるし」


 マヤメと桃ちゃんの待つ、洞窟内へと帰ってきた。

 裏世界へと連れていかれた、トテラを取り戻して。



「ん、澄香とトテラっ!」

『ケロローッ!』


 私たちに気付いたマヤメが、桃ちゃんを地面に降ろし、直ぐに駆け付けようとするが、 



「んっ!」


 苦痛に顔を歪ませ、立ち上がる事が出来なかった。

 ヒトカタに受けた傷が、まだ完全には直っていないようだった。  



「マ、マヤメちゃん、無理しないでっ!」


 ぴょんっ!


 よろけるマヤメの元に、一足飛びで駆け寄るトテラ。

 背中にそっと手を回し、ゆっくりと地面に座らせる。



「ん、トテラ、戻ってきた」

「うん、アタシ戻ってきたよ。勝手に行っちゃって、本当にゴメンね」

「ん、トテラが無事ならマヤはいい」

「うん。でもちゃんと訳を話すね?」

「ん、それと澄香…… ありがとう」


 トテラに支えられたまま、マヤメは私の目を見て、一言お礼を口にする。

 一見すると、不愛想に見えるが、マヤメを知ってる私から見れば、かなり喜んでいる様に見える。



「ま、気にしないで。トテラは私も気に入ってるし、マヤメの友達だしね」


「ん、まだ腕が……」


「ああ、これも気にしないでいいよ。切られた腕は回収してるし、落ち着いたらキチンと治療するから」


「ん、でも……」


「って、言う訳で、少し休憩しようか? あっちに部屋を用意するから、話なら中で話そっか。トテラ、マヤメをお願い」


「うん、任せてっ!」


 マヤメの頭を軽く撫で、レストエリアを設置する。

 そんなマヤメはまだ何か言いたげだったが、トテラに任せて中に入った。



『せっかくいい表情が見れたのに、私が原因で暗くなるのは嫌だからね。桃ちゃんやトテラも含めて、みんな無事だったんだから』


 互いに気遣いながらも、自然と笑みを浮かべる二人を見て、そう思った。  

 


――――――――



「とりあえずマヤメはベッドに寝て。まだ完全には直ってないんでしょう?」

「ん」

「じゃ、トテラはマヤメをベッドに運んであげて」

「うんっ!」

「それと、飲み物と軽い食べ物は、ここに置いておくよ」

 

 4人掛けのテーブルの上に、回復系レーション各種と、串焼き肉。それとお味噌汁を二人分並べていく。



「あれ? スミカちゃんは?」


 桃ちゃんを抱えて、部屋を出ようとする私に声を掛けてくるトテラ。



「私は先にお風呂に入ってくるよ。その後二人も使っていいから」


「ん、わかった」

「うん、ありがとうっ!」


 パタン


 笑顔で返す二人を残し、桃ちゃんと脱衣所に向かった。



―――――――――― 



「い、つつ……」

『ケロロ?』


 切断された腕を取り出し、Rポーションを使用する。

 緊張感が薄れた為か、今になって鈍痛が走る。



「ふぅ~、これで良しっと。左足もそうだけど、あと数時間は安静かな」


 下着と一緒に、装備を脱衣かごに入れ、鏡の前で確認する。

 見た目は問題ないが、動かすにはまだ違和感が残る。



「ま、仕方ないか。無傷とは言えないけど、マヤメもトテラも桃ちゃんも、全員無事だったんだから」


 シャ――――


 コックを捻り、桃ちゃんと一緒にシャワーを浴びる。 

 少しだけ温いが、これ以上は桃ちゃんがのぼせてしまう。


 キュ


「どれ、桃ちゃんも洗ってあげる。二人を守ってくれてありがとうね」

『ケロロ――♪』


 シャワーを止め、自分の体と一緒に桃ちゃんを洗う。

 ヒトカタに受けた傷が癒えたとはいえ、所々、体液で汚れていた。



「よし、これでキレイになった。私はお風呂に入るけど、桃ちゃんはどうする?」

『ケロロ――ッ!』

「なら一緒に入ろうか? ちょっと熱いから、無理そうなら先に上がってて?」

『ケロ♪』


 ジャポンッ


「っと、孤児院の池じゃないんだから、もう少しゆっくり入ってね? それと小さくなった方が広く使えるからお願いね」


『けろろ~』


「それと、お風呂から上がったら、桃ちゃんにもオヤツあげる。あんなに頑張ったんだからお腹減ったでしょう?」


『けろろ――っ♪』


 桃ちゃんと一緒に湯船に浸かる。

 二人分の広さはないが、体長が5センチ程になった桃ちゃんとなら余裕だ。



「ふぅ~、今回はさすがに疲れたかも。砂漠に来てから色々あったしね」


 ゆらゆらと天井に昇る湯気を眺めながら思い出す。

 ここ数時間で起きた、目まぐるしい出来事を。



 マヤメのマスターの眠る、トリット砂漠について早々、サンドワームとサンドパルパウに襲われているトテラを救出し、


「その後で、トテラが逃げ出したんだよね? お漏らししてて、お風呂を貸したら、お風呂グッズをパクって、逃走したんだった。で、その次は――」

   

 逃走したトテラを追って、直ぐに見付けたはいいが、今度はアリジゴクにハマってた。



「で、トテラを助けたまでは良かったんだけど、その時に、発情スイッチの耳に触れちゃって、私に襲い掛かってきたんだ。それでGホッパーで遠くに飛ばしちゃって、落下した先が、サソリの魔物の群れの中だったんだ……」


 今更ながらに思う。

 私も関わっているとはいえ、トラブルが多過ぎると。


 そう考えると、手癖の悪い事や、暴走(発情)する事も含めて、マヤメがトテラを警戒していたのが良く分かる。



「ま、そんなトテラとマヤメだけど、私がメーサに飲み込まれて、その胎内でヒトカタと戦ってた時は、私を助けるために、二人は共闘したんだよね」


 それが切っ掛けで、その後は、二人の距離がグンと近づいた。

 一緒に戦い、守り合う事で、一気に信頼度が上がったのだろう。


 元々マヤメは、兎族ってだけの先入観で、トテラの事を毛嫌いしていた。だけどトテラは、持ち前の純真さとコミュ力を発揮し、自然と和解していった。   



「そして、半分になったヒトカタとの戦闘と、地下に降りてのタチアカとの戦闘があって、裏世界からトテラを取り戻して、ようやく今ゆっくりできたと…… それじゃ桃ちゃん上がるよ?」


『けろろ?』


 ジャバ


 気付いたら洗面器の中で、水浴びをしてた桃ちゃんに声を掛ける。   

 きっとお風呂の熱さに耐え切れずに、浴槽から抜け出したのだろう。



――――――――――



 ガ――――


「ふぅ~」


 下ろしたての縞々のパンツを履き、鏡の前で髪を乾かす。

 ドライヤーの温風が、長く湿った黒髪を次第に軽くしていく。



「あ、そう言えば――――」


 鏡の中の自分と目が合い、ふと思い出す。 

 とある謎のアイテムを入手していた事に。



「うぇ、なんか生々しいんだよね? この目玉……」


 それは、裏世界での科学者、マカスから奪った目玉の付いたカチューシャだった。


 スチャ


「ん? なんだ? 何も変わらないじゃん」


 頭に着け、鏡を見てみるが、そこにはいつもと変わらぬ美少女が映っていた。


「……桃ちゃんも一緒かぁ~、何か映し出されると思ってたんだけどなぁ」

『けろ?』


 予想では、相手の情報や能力が視えるものだと思っていた。

 数値、若しくは色や何かで、弱点とかもわかるものだと。


 その理由は、私の正体を知るマカスが、私を執拗に見ていたからだ。



「……ま、もしかしたら、使用条件や、持ち主登録しないとダメなのかも?」


 ガチャ


 若干、期待外れだったなと、いつもの装備に着替えて、脱衣所を出た。



――――――――――



「なんだ、二人とも寝ちゃったんだ」


 居間に戻ると、ベッドの上でマヤメとトテラが寝息を立てていた。

 食べ物が減っている事から、お腹が膨れて寝てしまったのだろう。



「そりゃそうだよ。色々あって、二人も疲れてたんだもんね? どれ、もう一枚毛布でもって…… ええええぇ――――っ!」


 アイテムボックスから、毛布を取り出し、二人に近付くと、


「な、な、なんで服着てないの――――っ!」


 何故か、全裸で二人が抱き合って寝ていた。



 色白で華奢でありながらも、形の良い二つの膨らみを持つマヤメ。

 それに対し、日焼けした健康的な肌と、そこそこの胸部装甲のトテラ。


 しかも偶然なのか、トテラの手がマヤメの左胸へ、マヤメの腕がトテラの太ももに挟まれているせいで、どこかハレンチな想像をしてしまう。



「はわわわわ…… な、なんで、なんで? ってか、服、服はどこ行ったのっ!?」


 キョロキョロと周囲を見渡すが、二人の服が見当たらない。

 わざわざ片付けてから寝るなんて、面倒な事しないと思うけど。



「あ、それじゃ、マヤメのマジックポーチに?…… って、そもそもパンツ履いてないじゃんっ! それじゃ、一体何処に?…… はっ! も、もしかして――――」


 嫌な予感がしながらも、直立姿勢になって、自分の体を見下ろしてみる。

 


『………………』


 すると徐々に装備が透けていき、傾斜のほぼない、なだらかな斜面と、二つの薄桃色の突起が目に入った。



「やっぱり………… これ、か?」


 脱衣所から着けていた、目玉型のカチューシャを外し、二人を見てみる。


「うん…… 着てる。私も着てる」


 マヤメとトテラは勿論、私もいつもの格好だった。



「じゃ、なにっ! このアイテムって、服を透視するだけってことっ!? そ、それじゃ、あのマカスがずっと、こっちを見てたのって――――」  



 ただ単に、私の裸をガン見してただけじゃんっ!

 分析や情報集めじゃなく、覗き見していただけじゃんっ! 


 未知のアイテムを使い、さも何かあるような雰囲気を(かも)し出しておいて、動き回る美少女の裸体を、舐め回すように鑑賞していただけじゃんっ!



「あ、あのロリコン変態DQN科学者めっ! 今度会ったらアイツの目玉をくりぬいて、リアル目玉カチューシャを作ってやるっ!」


『ケロ?』


 グッと拳を握り、あの嫌らしい視線を思い浮かべ、復讐を決意する。


 苦戦を強いられ、手痛い傷を負わされたタチアカよりも、戦いには参戦せず、何食わぬ顔でずっと、私の裸を追い続けていた、マカスの方が心底憎いと思った。 





マカスの正体(性癖)が明らかに!?

でもかなり優秀な科学者で、組織の資金作りやメンバーの底上げに役立っています。


次回はトテラがエニグマ(謎の組織)と関わった、理由のお話になります。


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― 新着の感想 ―
>「やっぱり………… これ、か?」 >脱衣所から着けていた、目玉型のカチューシャを外し、二人を見てみる。 >「じゃ、なにっ! このアイテムって、服を透視するだけってことっ!? そ、それじゃ、あのマカス…
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