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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第16蝶 影の少女の解放と創造主

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フライングシスターズ

最近ジェネレーションギャップを多々感じる事があります。

仕事で、カセットテープとかMDとか知らない世代と絡むので。





「一体どこのどいつだっ! 俺たちを閉じ込めやがったのはっ!」


「そうですよ、我々蝶の英雄にこんな仕打ち許されませんよっ!」

「おらーっ! 出てこいやっ!」

「お前かっ? お前がやったんだなっ?」

「………………」


 アマジがナジメの土魔法『土鉄壁』を破壊したことで、外に出られた男たち。

 だが、閉じ込めた何者かを許せないようで、辺りを見渡し、犯人探しを始める。

 


「「「………………」」」


 そしてそれを呆れ顔で眺める、シスターズの面々。

 あの流れで誰にやられたか、理解できない事が理解できなかった。



「ナジメよ。アイツらは稀にみる浅慮浅薄(せんりょせんぱく)な者たちらしい。だが、犯人がお前だとわかると――――」


 それを横目に、アマジがナジメに話しかける。


「うむ、わかっておるアマジよ。そうなるとわしの素性に話がいくからの。引退の身のAランクならまだいいが、この街の領主だと知れば、恐らく尻尾を巻いて逃げ出すじゃろうて。そうなるとみなの怒りの矛先が無くなるからの」


 アマジの言いたい事を察し、ユーアたちを見ながらそう語るナジメ。

 今、名乗り出る事が、誰も望まない結末になると予見していた。


 それはスミカの言いつけもそうだが、一番はシスターズの心中を想っての事だった。

 ここで何もかも有耶無耶になったとしたら、みなも納得できないし、何も得ないし、何も解決できない。  

 


「そうか、お前がわかってるならいい。だったらここは俺に任せてもらおう。ゴマチ」

「は、はい、お父さまっ!」

「ゴマチは親父とここを離れてくれ」

「う、うん」


 トンッ


 アマジは自分の肩から娘を下ろし、実父のロアジムの前に連れて行く。

 

「おうっ! それじゃゴマチはワシと一緒に特等席で観てようなっ!」

「うんっ!」


 息子に任されたロアジムは、孫と手を繋いでここを離れて行った。

 そして訓練場を囲んでいる、野次馬の一番前を陣取っていた。 

  


「ふむ。ならわしもロアジムのところに行くのじゃ。仮に危険な事があっても、わしが二人を守るから安心するのじゃ。だからお主も遠慮などする必要ないぞ」


 ポンとアマジの腰を叩いて、ナジメは小走りで駆けだす。

 その小さな背中を見送りながら、ポツリとアマジが呟いた。



「…………不思議なものだな」


「? 何がじゃ?」


 そんなアマジの独り言に、ナジメは耳をピクンとさせて振り返る。



「俺とお前がこうやって、普通に会話している事がだ」


「…………そうじゃな。わしはそれ程お主を毛嫌いしておらんかったが、お主はわしを嫌悪しておったしの」


「ああ、確かに昔の俺はそうだった。だが今は――――」


「だが今はこうして話が出来るようになった。それだけで良かろう。これも――――」


「これもあのスミカのお陰なのだろうな」


「うむ」


 言いたいことを互いに察し、互いの会話の先を言い合う二人。

 その中心には、ここにはいないスミカの存在が確かにあった。



「って、オイオイッ! 勝手に始めるんじゃねぇぞッ!」


 そんな中、ここでようやくルーギルが合流する。

 人混みを抜けてきたせいか、衣服は乱れ、額に汗を浮かべていた。



「ふぅ、何故こんなに大勢の人が? 誰かが話を広げたような……」

「冒険者より一般の人たちが多かったわね」


「みんなここから先は入らないでくれっ!」


 その後ろには、クレハンとニスマジが付いてきていた。

 一方、報告に来たギョウソは、集まった観衆を纏める為に奔走していた。



「おッ!? 当たり前と言うか、シスターズの連中は普通に来てんなッ! っで、アマジさんはやっぱり来たかッ! それと…… お前らがユーアに喧嘩を売った奴らだなッ?」


 ルーギルは、近くにいたアマジには軽く手を挙げ、シスターズたちを見渡した後で、まだ犯人探しを続行している、なりすましの男たちに近づき、声を掛けた。



「ああんっ! なんだてめえはっ!」

「またわけわかんねぇオッサンがきたなっ!」

「関係ねえ奴は引っ込んでろやっ!」

「…………………」


「はあッ!? 俺はここのギルド長のルーギルだッ。ってか、一度会ってんのに顔を忘れるんじゃねぇよッ」


「ああ、確かにあなたはギルド長ですね? その蛮族そうな風貌と言葉遣いは間違いないです。それと私たちが事を大きくしたわけではないですよ? そこのちっぽけな偽英雄が事の発端ですから」 


「ち、相変わらずてめえだけはスカしてんなッ。言葉遣いに関しちゃあ、お前の仲間と大して変わらねぇだろうによッ」


 赤・黒・白・黄色のマスクの男には罵詈雑言を浴びせられ、最後の青のマスクの男には小馬鹿にされて、舌打ちをするルーギル。

 


「んでよ、もう理由はどうでもいいとして、お前たちはどうすんだッ?」


「どうするとは?」


「俺が報告受けたのは、そこのユーアがお前らに模擬戦を挑んだって話だッ。それを続けるかって話だよッ。ってか、こんなに観衆がいる前で、英雄様が逃げるとは思ってねぇけどなッ」


 訓練場を囲んでいる、多くの人たちを見渡した後で、青のマスク男を挑発気味に煽る。


「ははは、それは確かにそうですね。私たちは盗人と言う、濡れ衣を晴らさなければいけませんし、あんな子供に舐められたままでは、この先やっていけませんしね」


「だなッ。だったらどうするッ? あのユーアのパーティーメンバーの3人もやる気らしいんだけどよッ。それと今日冒険者に登録した、アマジって男もいるんだけどよッ」


 ルーギルはそう説明しながら、シスターズ含め、アマジを顎で指し示す。

  

「なるほど。そうするとそちらも人数だけは5人になりますか。ですが、あのユーアって子供もそうですが、女だからといって、私たちは手を抜きませんよ」


「ああ、それは構わねえッ。そもそもお前らに吹っ掛けたのはユーアって話だかんなッ。それとアマジにも遠慮はいらねえッ。曲がりなりにも冒険者になっちまったんだからなッ」


 言ってる事とは裏腹に、楽しげな表情を浮かべるルーギル。


「もちろん、新人だからと言って手は抜きませんよ。蝶の英雄の我々5人に、盾突いたらどうなるか、その身に教えてあげますよ。それで、ルールとかあるのですか?」


「一応あるぜッ。先ず一つ目は、相手が『参りました。今後、蝶の英雄の名を(かた)る事はしません。ですから許して下さい』って言ったら終わりだッ」


「なるほど。随分と長いセリフですね? それでは言い終わる前にやりたい放題―――― コホン。いや、それよりも、他にもルールがあるのですか?」


『ん?』


 模擬戦の説明を聞き、ナゴタとゴナタをチラと見た、青いマスク男。

 その際に、舌なめずりをしていたのをルーギルは見逃さなかった。



「ああ、二つ目は武器なんだが、これは訓練用の――――」


「あ、そちらは自由にして下さって結構です。愛用の武器でもなんでも使ってください。我々はそちらが用意したモノで十分ですから」


「んあッ? 随分と太っ腹だな。アイツらのランクも知らねえだろうにッ」


 予想と違った答えを聞いて、青のマスク男の顔を意外そうに眺める。

 今までの態度と話の流れから、一方的に蹂躙し、圧勝する気に思えたからだ。



「そんなもの纏っている空気でわかりますよ。ただの幼児と少女の2人と、それと体だけがエロ…… ではなく、発育がいいだけの双子。それに、唯一の男に至っては新人ですし。手を抜かないと言っても、差を見せつける必要がありますから」


「ははッ なるほどなッ。んなら教える必要はねえなッ。んじゃ、早速――――」


「始めてください。集まった人たちには申し訳ないですが、そこまで時間をかけるものでもないので。私たちは冒険者として格の違いと、本物の蝶の英雄だと証明するだけですから」


「わかったッ。なら一度集合させっから、ちょっと待ってろッ」


「はい、お願いします」


 青のマスク男に頷き、ルーギルが片手を挙げて、みなを呼ぼうとすると、 



 ギュンッ ×4



「はッ!?」

「な、なんですか今のはっ!」


 4つの大きな物体が、二人の頭上を飛び越えていき、



 ドゴオォ――――――ンッ!!



「「「ぐふっ!!!」」」


 そのまま地面に激突し、盛大に砂煙を上げる。


 

「あッ! お前らなんでッ!?」

「あ――――――っ!!」


 それは青のマスク男以外の、なりすましの4人だった。

 その姿はまるで、過酷で熾烈な戦闘を、何日も繰り広げたかのような様相だった。



「「「う、う、…………」」」


 そんな男たちは白目を向き、身体を痙攣させ、口から泡を吹いていた。

 端的に言えば、模擬戦など不可能な、満身創痍の状態だった。



 ダッ


「あ、あなたたちなんでっ!? 一体誰にっ!」


 一瞬にしてボロ雑巾と化した仲間に、慌てて駆け寄る青マスクの男。

 今まで浮かべていた澄まし顔も、流石にこの場では強張っていた。


 だが、そんな惨状を目の当たりにした、ルーギルは、


「ったくよー、俺がせっかくお膳立てしてんのに、なんで先に手を出すんだよッ。やるならやるって言ってくれねえから、見逃しちまったじゃねえかッ」


 それに対し、全く取り乱した様子のないルーギル。

 ガシガシと頭を搔きながら、ヤレヤレと言った様子で振り返る。



 そこには――――



「俺にはあの魔法は使えんが、それでも頭ごなしに否定されれば、手が出るのはごく自然の流れだろう。これは避けられない事故だった。すまん」


 全く悪びれる様子もなく、気を失っている男たちに、頭を下げるアマジと、


 ザッ 


「ったく、アタシが魔法で閉じ込めたって信じないのが悪いのよっ! ま、本当はアタシじゃないけどっ!」


「ボクの言うことも聞いてくれなかったんだから、仕方ないよね?」


「はぁ、思わず蹴ってしまったわ。でも疑うのが悪いわよね?」


「ワタシの魔法って言っても信じなかった、アイツらが悪いぞっ!」


 そこには、自分たちがやったと認めながら、全く自分たちに非がないと、強く自己主張するシスターズたちがいた。


 

始まる前に終わりました……。

お約束と言えばお約束ですね。

それはそうと、またあまり進まなくて申し訳ないです。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >参りました。今後、蝶の英雄の名を語る事はしません  嘘を吐く事は騙る(かたる)ですけど、蝶の英雄(やシスターズ)の凄さを語るとかの意味で語ることもしないって意味も合わせて語るを使っ…
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