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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第15蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編

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3つのタマゴ?

今話はスミカたちのお話に戻って、

前半:フーナと決着の直後。

後半:497話の『まさかの?』の続きとなります。





「で、あれから体は問題ない?」


 一歩下がって、マヤメの顔色と全身を注意深く眺める。


「ん?」


 端から見たら、顔色も良く、身体にもケガもないように映った。

 頭の上のロッド(アホ毛)もきちんと装着されている。



「ん、異状ない。これも澄香のおかげ」


 それに対し、真顔の立ちピースで答えるマヤメ。

 表情がわかりにくいが、本人がそう言ってるなら大丈夫だろう。



 現在私たちは、シクロ湿原を後にし、今は透明壁スキルで空を移動している。

 フーナ達と別れた後で、桃ちゃんと合流し、ノトリの街に戻る途中だ。

 


「それでさ、話って何だったの?」


 用意したテーブルセットに座り、一息着いたところで聞いてみる。

  

「ん? はなし? なんの?」


「ああ、悪い悪い、主語が抜けてた。メドがマヤメにした話の事だよ。私が戻った後で何か言われたんでしょう?」


「ん」


 そう。


 私がフーナと対峙している最中、実体分身を使い、マヤメとメドの戦いの場へ駆けつけた。

 その時私が見たのは、影のような暗闇に呑まれた二人だった。


 発光の能力で二人を救出したが、エネルギーを消費し過ぎた影響か、マヤメだけは危険な状態だった。恐らくマヤメが使ったアイテムの反動だと思われる。

 

 その後、私が持っていたアイテム(メンディングロッド)で事なきを得たが、マヤメの意識が戻る前に、メドが私に言ってきた事だ。マヤメが目覚めたら話があるって。


 私はその後、フーナとの戦いに戻ったので、何の話かは知らなかった。



「ん、話してない」


「え? マジ?」


「ん」


「? ああ、そう……」


 だったらあれは何だったんだろう。

 かなり真剣な面持ちで、話をしたいって訴えてたように見えたのに……


 まぁ、実際はマヤメと同じ無表情で、その内心までは読み取れなかったけど。 



「ん、だからこれ渡された」


 カサ


「へ?」


 一枚の封書を渡される。

 何故かズボンの中から出てきたのは、今はいいとして。



「なんで手紙? 話がしたいって言ってた気がするけど」

 

 受け取った封書を、繁々と眺める。


「ん、マヤもメドも長い話するのが苦手。だからこれを渡したんだと思う。それをマヤに渡した後で、少し会話はしたけど、その手紙の内容とは違うと思う。それとメドが驚いていた。澄香の事を褒めていた。マヤを助けてくれた事に感謝していた。後、キュートードの件も謝ってた。狩り禁止区域なのは知らなかったけど、ごめんなさいって。それと――――」


「ちょ、ちょっと、もうわかったよっ! でも手紙は私が預かっていいの? ってか、読んでいいの?」


 いきなり饒舌になった、マヤメの言葉を遮り確認する。

 長話が苦手云々は、今は突っ込んだら負けな気がする。



「ん」


「そう、なら私が預かるよ。そろそろ街に着くから準備して」


 マヤメが頷いたのを確認して、アイテムボックスに収納する。

 内容が気になるけど、遠目に街が見えてきたので、今は後回しにする。



「ん、そう言えば、澄香に聞きたいことあった」


「なに?」


「ん、あの時なんで丸出しだった? フーナが仲間を呼んだ時」


「あ、ああ、あの時ね……」


 そっと目を逸らしながら、あの時の事を思い出す。

 フーナを追い詰めたと思ったら、新たな敵が増えた、あの絶望的な状況を――――





「んっ! 澄香っ! あのタマゴから何か出てくるっ!」


「わかってるっ!」


 最悪だ。

 まさかこのタイミングで援軍を呼ぶなんて。

 ラスボスの後にボスラッシュなんて、余りにも理不尽過ぎる。



「うえぇぇぇぇ――――――んっ! みんな助けてぇ――――っ!!」


 Gホッパーの鳥かごの中で、バウンドを繰り返し泣き叫ぶフーナ。

 その体が光った瞬間、フーナの周りにタマゴが出現していた。 


 フーナばりの気配を放つ『白』『青』『黒』の3つのタマゴ。


 実際はタマゴではなく、タマゴの形をした魔力の塊だろう。

 表面がゆっくりと消滅すると共に、その中身が姿を現した。


 

「ん?」

「がう?」

「何処よここは?」


 現れた3人は、状況を把握しようと、キョロキョロと周りを見渡している。

 幼い少女の姿だが、感じるプレッシャーが尋常ではない。



「んっ! メドがいるっ!」


 マヤメが一人の子供を指差し、名前を叫ぶ。


「メドがなんでっ!? でも他の二人は?」


「んっ! 他の二人はアドとエンド。特徴が一致している」


「アドとエンド? もしかしてあれもフーナの仲間なの?」


「ん、そうっ! フーナの家族」


「家族…… かぁ。なら戦いを避けるのは、尚更不可能に近いかも」


 私は答えながら、ドレスの裾に指を掛ける。

 『表裏一体モード』の時間を、いつでもチャージできるように。 



『最悪、向かって来るならこのまま戦うしかないっ! 三人相手で勝てる自信はないけど、表裏一体と安全装置を併用すれば、せめてここからの離脱は可能なはず』


 覚悟を決め、ゆっくりとドレスの裾を捲り上げていく。

 今の私の強さでは勝つのはほぼ不可能。


 ならば、マヤメを連れて撤退するのが、今は最善だと即断する。



「んっ! フーナさまっ!」

「がうっ! フーナ姉ちゃんっ!」

「あっ! フーナっ!」


 そんなメドたち三人は、悲鳴を上げるフーナに気付き、慌てて駆け寄る。

 これでフーナが私の名前を呼べば、一気にヘイトが私に集まるだろう。



『来るっ!』


 ババッ!


「ん?」


 仕掛けられる前に、一気にスカートを捲り上げる。

 だが、このままでは両手が使えないので、口に咥えて待機する。


 一瞬、隣のマヤメが「え?」って顔したけど、今は気にしてられない。

 あの三人が動き出したら、そんな余裕も消え去るだろう。



 ところが、


「ん、フーナさま。狩る場所間違ってた。だから謝ってきた」

「がう? 何やってんだ? フーナ姉ちゃん」

「はぁ、急に召喚されてみれば、一体これは何事かしら?」


「?」


 ところがそうはならなかった。 

 絶叫しながら跳ね続けるフーナを囲み、どこか場違いな会話が始まった。



「ん? これは新しい…… 遊び? それともお仕置き?」

「なんか楽しそうだなっ! がうっ!」

「またおかしな遊びを覚えたものね? いい加減大人になって欲しいわ」


 そんな三人はフーナの事を微塵も心配していない様子だった。

 それどころか、それが日常的に行われているみたいな言い方だった。



『…………え? 遊び?』


 新たな脅威に身構えていた私は、肩透かしを食らう。


 もしかしてこれがフーナの普通なの?

 三人の反応を見てると、なんかそんな気がする。


 フーナは規格外の実力者だったけど、その遊びも規格外だったって事?



「ち、違うよぉ~っ! あそこの蝶のお姉さんが、わたしをイジメるんだよ~っ! だから早くやっつけて助けてよぉ~っ!」


 ここでようやくフーナが口を開く。

 涎と涙と良くわからない液体で、顔をぐしゃぐしゃにしながら。



「ん」

「がう? 蝶の? なんだ?」

「蝶のお姉さんって、まさか?」


 フーナの必死の訴えにより、三人の視線が私に集まる。

 その瞳は大きく開かれ、マジマジと私の姿を見ていた。



『なんだよ、結局こうなるんじゃんっ! 一瞬期待して損したよっ! なら、マヤメは私の影に避難してもらって、後は時間稼ぎしながら――――』


 一気に緊張が高まる。

 私は思考を切り替えて、相手の動きに集中する。


 一人なら問題ない。戦いながらでも逃げ切れる自信がある。

 いや、逃げるだけではなく、表裏一体を使えば確実に勝てる。


 だが三人相手ではそうもいかない。


 表裏一体モードにも制限時間がある。

 今の時間だけでは、使えても2~3秒。


 効果が切れたら逃げ切れない。

 透明壁スキルも透明鱗粉も、フーナのように見破られる可能性が高いから。



もがもが(マヤメ)っ!」

「ん?」

もがもが(マヤメは)もがもが(私の影に)もがもが(隠れて)っ!」

「んん?」


 マヤメに向かって叫ぶが、当の本人は不思議そうに私の顔を覗き込む。

 それはそうだ。スカートを口で咥えてるんだから、聞こえるわけがない。



「イジメてるって…… アドとメドはどっちがイジメてるように見えるのかしら? 我には逆に映っているのだけれども」


 黒い少女、エンドが私たちのやり取りを見て、ポツリと零す。


「がう? そうだなぁ~。俺から見たらフーナ姉ちゃんは楽しそうだぞっ! でも蝶の英雄は泣きそうだなっ! さっきからプルプル震えてるし」


「ん、どう見てもフーナさまがイジメてる。蝶の英雄にあんな破廉恥なポーズ取らせてる。大人パンツが丸出しでちょっと可哀想。フーナさま鬼畜」


『………………』


 アド、そしてメドの順番で、エンドの質問に見たまま答える。


 ってか、今の私って、そんな風に見えるの?

 確かに恥ずかしくて震えてるし、微妙に涙目だけど。


 

「ち、違うよ~っ! わたしをこんなにしたのは蝶のお姉さんなんだって~っ! なんでわかってくれないの~っ! 早くしないとわたし漏らしちゃうし、吐いちゃうよ~っ! うっぷ」


「んっ! 蝶の英雄。フーナさまは反省してる。だから止めて」   


 さすがに限界を感じたのだろう。

 フーナの危険を察知して、メドが早口で訴えてくる。



「もがもが?」

「ん、澄香、それじゃ聞こえない」

「ぺっ 止めてもいいよ。元々そのつもりだったし。ただ条件あるけど」


 メドに答えた通りにその予定だった。

 ただ援軍が来なければの話だったけど。


 けど、メドも他の二人もそうだけど、敵意や殺気は感じない。

 だから条件付きで解除することにした。



「ん? 条件? なに?」


「まず、この後で私たちと街に行って、謝罪する事」


「ん、謝罪?」


「そう。キューちゃんを狩ったでしょ? 禁止区域で」


「ん、それは済ませた。門兵の人間にお金も渡してきた」


 人差し指をビッと立てて、キリとした顔で答えるメド。



「え? あ、あれ?」


 そう言えば、マヤメに聞いた気がする。


 合流した時に、メドはノトリの街に行ったって。

 あの時はフーナが回復して、詳しい話は聞けなかったんだ。



「そ、そうなんだ。なら次はフーナを解放したら、私たちを襲わない事。街で謝罪したなら戦う理由がこっちにはないからね。これ以上の争いは不毛だし」


「ん、ワタシたちにも戦う意志はない。二人も満足してる。それとワタシたちはこれから行くところある。だから約束する」


 両脇に立つアドとエンドに目配せし、コクンと頷く。

 それに対し、アドは笑顔で、エンドは薄笑いで答える。



「そう。満足の部分はよくわからないけど、なら解放するよ」


 一応、三人の動きに警戒しながら、フーナを囲むスキルを解除した。




付け足し付けたしで、今話も少し長く……

(実は長すぎて分割してるのはここだけのお話です)



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― 新着の感想 ―
[良い点] 遂に此度の戦いが無事終わりましたね!良かったです
[気になる点]  そう言えば。  この世界で定期的に訪れる世界?の危機だったか大災害っぽいのは、代々で原因が同じだったりするのかな?  それともそれぞれ原因もなにも違っていて、ただ偶然似た間隔でそ…
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