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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第11蝶 妹の想いと幼女の願い2

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待ちくたびれた激おこ幼女

忘れたのは作者も一緒でした……

なので澄香たちが悪い訳ではございません。




 小高い丘の上のロアジムの屋敷を超えると、その下った先にナジメのお屋敷があった。森を背に、ロアジムの屋敷に勝るとも劣らない豪邸ぶりだった。 


 レンガ造りの洋風な数々の屋敷とは違い、ナジメのお屋敷は木材が主で、屋敷というよりは、まるで巨大なロッジ風。その形状は3階建ての「塔」のような変な形だった。



 そして、その屋敷の玄関の前には、幼女が仁王立ちしている。


 深緑の髪のショートカットにクルリと真ん丸な瞳。

 口元には八重歯が覗き、頬っぺたはツンツンしたくなるほど膨らんでいる。


 なぜか着ている服は旧スクール水着。

 そこから覗く手足は短く小さい。そしてお腹がポッコリしている。


「何やら、随分と遅かったではないかっ! もう昼をとうに過ぎておるのじゃっ! みんな待ちきれずにお昼寝してしまったのじゃっ!」


 そんな怒鳴り声を上げ、私たちを出迎えたのは、この屋敷の主のナジメ。

 幼女に見えても、実年齢は106歳。


 一応この街の、現領主さまだ。



「ロアジムのところで色々あったんだよっ、だから忘れてたとかじゃないから」

「ナジメちゃん、ボクもハラミの事でねっ、だから忘れてないんだよぉ?」

「ア、アタシだってもちろん忘れてないわよっ! ただバサのやつがさっ!」


 何やらご立腹の様子のナジメ領主さま。

 頬っぺたが破裂限界のモチみたいに膨張している。

 そんなナジメに平身低頭する私たち。


「なるほど。何やらロアジムのところで大変じゃったようじゃな?」


「そ、そうなんだよっ! だから遅くなっちゃったんだよっ」

「「うん、うんっ!」」


 どうやら、これだけでナジメも察してくれたようだ。

 元々ロアジムとも付き合いが長いのが理由だろう。



「それで、なぜねぇねも含めて、みな忘れたと連呼するのじゃ?」


「「「えっ!?」」」


 妙なところで細かい幼女。

 それを聞いて、お互いの顔を見渡す私たち。


「い、いやだなぁ、ナジメっ。それは口癖って言うか、たまに私が冗談で使うよねっ! 『手紙を出すのを忘レター』なんちゃって」


 何とかこの場をやり過ごすために、渾身のダジャレを披露する。

 さすがにこれを聞いては、平常心ではいられないだろう。

 きっと爆笑と共に、細かい事なんて忘れるに決まっている。



「何を言っているのじゃ、ねぇね」


「へっ?」


「何を言っているの? スミカお姉ちゃん?」


「え?」


「スミ姉、はぁ~」


「………………」


 何コレ?


 もしかしてダジャレが高度過ぎて、まだ幼女には伝わらなかった?

 だったら、もっと低レベルを披露すればよかった?

 何て少しだけ後悔する。


 ならナジメに理解できなかったのは仕方ない。

 幼女うんぬんより、種族も文化も違う恐れがあるからね?


 でも、何で私の陣営のユーアとラブナも呆れた顔してるの?

 そこは私をフォローするところだよね?

 それと、ため息だけって一番傷つくんだけど、ラブナめっ!


「それに、ねぇねだけじゃなく、ユーアたちも忘れたと――――」


「あっ! そう言えば、この前屋台で美味しい串焼き買ったんだよっ! 珍しく海鮮物の串焼きなんだけど食べる?」


 まだ何かを言いかけたナジメの前に、熱々のエビらしいのやら、サザエっぽいのや、白身魚風な素材を使った串焼きを差し出す。


 ダジャレが無理なら、食欲に訴えてやる。


「う、うむっ。いただくのじゃっ!」


 すかさず受け取り、速攻でかぶりつくナジメ。


「むぐむぐ。美味いのじゃぁっ!」


「それでさっきの話なんだけど、遅くなってごめんねっ」

「ボクもごめんなさいっ! ナジメちゃんっ!」

「アタシも一応謝っておくわっ! ごめんねっ」


 ご機嫌のちんちくりんのスク水幼女に、頭を下げる私たち。

 どうやら、領主も三大欲求には逆らえなかったようだ。


 でも、正直こんな姿は誰にも見られたくなかった。

 幼女相手に、揃って頭を下げるなんて真似は。


 だけど――



「くすくすっ」

「うふふっ」

「あらぁん、面白い光景だわねぇっ」


 だがそれは手遅れだった。


 メイド服に着飾った若い女性二人に失笑される。

 恐らく、ナジメのところのお手伝いさんだろう。


 その中の二人で気になるのが、フリフリヒラヒラした本物メイド服を着用している。

 本物っていうか、それ系の喫茶店でよく見る衣装。

 要は、コスプレってやつだ。


『ま、まぁ、コスプレはどうせまたナジメが仕入れてたとして、それよりも……』


 そんな二人よりも違和感バリバリな人物がここにいた。



「な、なんでニスマジがここにいるのよぉ――――っ!!」


 その変態を指さし絶叫を上げる。


「なんでって、ボクもいていいでしょ、スミカお姉ちゃんっ!」 

「もういい加減、その服脱ぎなよっ! あとその口調もやめてっ!」


 何故か、ナジメの屋敷で会ったニスマジはコスプレをしていた。

 それは私がユーアに買ってあげた白いワンピースだった。


 相変わらず、サイズの小さいワンピースを無理やり着ている。

 ピチTならぬ、ピチワンピース。


 ゴツゴツした手足が袖やらスカートから覗いて気持ち悪い。



「あらぁ? だってスミカちゃんある程度なら、好きにしていいって言ってたじゃない? Bシスターズの売り込みは任せるともぉ」


「そ、それは言ったけど、だからってこんなとこまで着てこないでよっ! 宣伝したって仕方ないでしょっ! ここは貴族の住む街なんだからっ!」


「意味なくないわよぉ。わたしは貴族の方々に売り込みにきたんだからぁ」


「貴族に? なんでまた?」


「それはロアジムさんに呼ばれたからに決まってるじゃない」


 人差し指を立てて満面の笑みで答える。


「いや、いや、もっと意味が分からないよっ! なんでここでロアジムが出てくるの? それにナジメの屋敷にいる理由は?」


 ナジメのお手伝いさんの衣装と事と言い、ニスマジがここにいる理由といい、どこから聞いていいのか分からない。


「別に難しい事ではないわよぉ。元々わたしのお店は、貴族街と言われる、このあたりのお店に商品を卸しているしねぇ。前にも言ったわよね。販売よりそっちが主だって話は」


「う、うん、まぁ、確かにそう聞いたかも」


 それはナゴタとゴナタを、ニスマジのお店に案内した時に聞いた。


「それでナジメ領主さまには、注文されていた商品を届けに。その帰りにロアジムさんのところへお邪魔するつもりよぉ」


「う~ん。なるほど。 なのかなぁ?」


 何となく納得いかないので、もう少し細かく聞いてみる。


 その話によると――



 ナジメのところに来た理由。


 それは孤児院の子供たちに必要なものを届けに来たって事。

 新しい寝具や家具。それに肌着や衣服。などの生活用品を。


 それらをマジックバッグに入れて持ってきてるらしい。

 依頼主のナジメに届けるために。



 ロアジムの件。


 それは、元々ロアジムとは付き合いがあったって話だった。

 この貴族の住む街でも、ニスマジのお店のお客さんとしても。

 

 それで今日呼ばれた理由は、Bシスターズの関連商品を見たかった。

 色々と私たちの衣装や、それに流行らせるための新しい衣装を。


 なのでニスマジはその為の売り込みにきた。

 だからムツアカたちがいる今日が都合が良かったのだろう。


『いや、私がお邪魔する件と、ニスマジが来るのを合わせたってのが普通かな? そうすれば、おじ様たちの招集も一回ですむからね』


 聡明なロアジムならば、そうすると思う。

 それじゃないと、二度手間になるからね。



『ま、まぁ、向こうで会うよりはここで会った方がましだったのかな? あっちで会ったら、いい見世物になってそうだし……新衣装なんて言ってるし……』


 ナジメの串焼きを物欲しそうに見ている、ユーアを見てそう思った。

 ファッションショーを回避できたことに安堵しながら。



何やら新衣装ってありましたが、ファッションショーはありません。

この後ニスマジはロアジムのところに行くので。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] んー。 ………………ん? ロジアムとも取引してる? んじゃあドリンクタイプレーションなんか、珍しいしスミカが卸したもので冒険者マニアなら真っ先に飛び付きそうな物。 仕入れた即日か…
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