番外編 If-Route YUKIKO-
こんばんわ!
番外編最後です!
「みんなおはよう!授業始めるから席について!」
朝、教室に入った私は生徒たちに座るように言った。一時間目の英語の授業を始めるためだ。ここは2年生のクラスである。私は綾瀬有希子。大学卒業後に地元である千葉県浦安市の中学校に英語教師として就職。今年で教員歴4年目で、初めてこの2年のクラス担任も任された。
「じゃあ、まずは教科書の43ページを開いて!」
教科書を開き、授業開始。まずは私が英文を読む。
「I loved him.But he loved another girl.I don't know must say my feelings for him.」
英文読み終えると、私は一人の女子生徒を当てた。
「佐藤さん、訳して。」
「はい。」
佐藤さんは立ち上がって日本語訳を言う。
「私は彼を愛していた。でも彼は別の女性を愛していた。私は自分の気持ちを彼に言うべきかわからない。」
「いいわ。ありがとう、席について。」
佐藤さんが座ったので、続きの文を読もうとした時に一人の男子生徒が手を上げて質問した。
「先生、質問があります。」
「何、高橋君?」
高橋くんは真面目な顔で話し始めた。
「先生は、前に話していた彼氏に愛しているとよく言ってますか?」
「…え?」
言われた途端、私は急に恥ずかしくなり言葉が出なくなってしまった。すると、すぐに別の女子生徒数人が笑いながら口を開く。
「あーっ、有希子先生紅くなった!」
「図星だぁ!」
「先生可愛いー!」
「結婚式いつ、先生?」
はしゃぎ出す女子生徒達。そしてそれが伝染したのか、男子生徒達も…。
「いいなぁ、先生みたいな美人と付き合えて!」
「ねぇ、先生!昨日はチューしたの?」
「もしくはベッドであんなこととかしてた系?」
この年代の子達は恋愛話が大好きだ。教師がその話題に巻き込まれる事もザラである。私は段々と体温が上がってきて、思わず叫んだ。
「う・る・さ・い!愛してるから付き合ってるに決まってんでしょ!授業再開するから集中しなさい!」
そう言った途端に生徒たちはシーンとなり、私は授業を再開した。
「ふう、やれやれだわ。」
授業を終え、職員室に戻った私はため息混じりに自分のデスクに座る。
「何かあったんですか、綾瀬先生?」
「うちのクラスの生徒達よ。全く、恥ずかしかったわ。」
後ろを通った一つ年下の先生に私は愚痴るように吐き出した。しかし…。
「もしかして、彼氏の事でいじられたとか?」
「何で分かんのよ!」
「だって、顔にそう書いてありますもん。」
その言葉に私はぐうの音も出なかった。
「年下でしたっけ?」
「そう、大学の後輩。」
「いいなあ。私も先生みたいに美人だったらカッコいい人と付き合えるのに!」
「カッコいいのは本当だけど…私は別に…その…彼の優しい所がいいっていうか…。」
職員室でこういう話をするのもアレだが、間違ったことは言ってない。彼は確かにモデル級のルックスだが、彼の優しさ、温もり、そういう内面的な部分が私の心を掴んでいるのだ。
「次はいつ会うんですか?」
「仕事終わったら一緒にご飯行くつもりよ。」
そう。放課後私は彼とディナーの約束をしている。まぁ、彼がどうしても行きたいって言ったし断る理由もなかったし。色々とあったが、私は気持ちを切り替えて引き続き仕事に励んだ。
放課後。私は残りの事務処理を大急ぎで終えて学校を出た。電車に乗り、千葉市内にある割といい感じのお店へと向かった。彼が希望した店で今日の待ち合わせ場所だ。彼は既に到着していたみたいなので、店に到着するとすぐに彼に連絡を入れてそのまま入る!
「お待たせ、拓人!」
「お疲れ様です!有希子先輩!」
「もう、付き合って2年目なのにその言い方やめてよ!」
「ごめん、学生時代の癖が抜けきらなくて。」
照れながら頭を掻く彼。彼こそ私の今の彼氏、森拓人だ。彼は今、千葉県内の大学で職員をしており、留学生や留学希望者のサポートをしている。経験を活かせて良かったと思った。
「コースにしたけど大丈夫だった?」
「拓人が用意してくれならなんでもいいわよ!」
そう言って私はお絞りで手を拭く。それからすぐにオードブルのスモークサーモンが運ばれてきた。
「拓人。」
「何?」
「シャツのキスマークは何?」
「は、そんなものある訳…。」
「うっそー!」
「なっ!」
「フフフ、やっぱりその反応は相変わらず可愛いわね!」
「全く、先輩のくせに子供っぽいんだから有希子は!」
いつも通りに拓人をイジる私。学生時代からずっとこんな感じだ。まぁ、私の気持ちの裏返しだったんだけど。私は一度、彼に告白して振られている。それでも諦めきれずに留学に行く前に空港で彼にキスしたりと随分色々したもんだ。でも私が留学中にもし彼が恋人を作っていたらと考えると悲しくなったし、一度気持ちを切り替えて忘れようとした事もある。でも出来なかった。それだけ彼が私の中で大きな存在になっていたのだった。帰国後は忙しくて中々合う機会はなかったし、卒業後もしばらく疎遠になっていた時期もあった。だけど、2年前のある日、私は思い切って彼に連絡をとった。すると彼からも会いたいと連絡があり、二人で出かけて、そして…告白した。その時彼も私に「好き」と言ってくれて両想いだったと考えると嬉しさが倍増した。
「ねぇ、有希子。」
「何?」
「もう付き合って2年目じゃん?」
「そうだけど、それがどうかした?」
「俺、付き合い始めた日のことだけど…。あの時分かったんだ。有希子が留学して、離れて…イジられなくなったけどそれがとても寂しかったって事が!」
「ちょ…何を言うのよ…。」
そういう彼の目はとても真剣で透き通ってた。メインディッシュを食べ終え、デザートが運ばれてきたタイミングで彼はポケットから小さな箱を取り出した。
「これ、今日来てくれたお礼!」
「あ、ありがとう。開けていい?」
「勿論。」
私はその箱を開ける。そして、そこには予想外のものが。
「これは?」
「どう、カッコいいでしょ?」
そこには銀色に輝く指輪が入っていた。
「どうして?」
「俺、有希子と付き合えてよかったと思ってる。最初告白されたときは訳が分からないのと恥ずかしかったから断っちゃったけど…その時は悲しませてゴメン。」
「いいのよ今更。こうして付き合ってるんだし。」
「だから、これからは先輩でもなく、彼女でもなく、家族として一緒にいたい…結婚しよう、有希子!」
私はそう言われた瞬間頭が真っ白になった。夢を見てるんじゃないかって思った。どう返そうか戸惑ったけど、答えは決まっていた。
「もう、OKに決まってるじゃない!こんな私だけど、絶対いい奥さんになるわ!」
私は拓人にそう宣言した。お店の中の人の拍手も響く中、私は最高潮になった幸せな気分にしばらく浸るのだった。
こんばんわ!
今回書いた3つのもしもの○○ルートもこれで終了です!
皆さんはどのルートがいいと思いましたか?
有希子ルートは有希子の出番が少ない上に途中で退場したので結構大胆な話にしちゃいましたが(笑)
次回から本編です!
迫りくる最終回に向けて物語はどう動くか?
最後まで、読んでくれるとありがたいです!




