第72話 思い出を語ろう
こんばんわ!
拓人君がホームステイしてた時の思い出を今日書こうと思います。
大雪が降ったテスト初日、正直頭を使いすぎてへろへろになった俺達だったがそれを吹き飛ばす強烈なインパクトが現れた。まさかのステイシーの家族、つまりは俺のかつてのホストファミリーが大雪のキャンパスの中で目の前に現れたのだった。とりあえず、このままじゃ申し訳ないので学校からバスで駅まで行き、そこからされに八王子駅まで向かった。寒いしお腹もすいているだろうと思った俺はファミレスまで案内し、みんなでそこに入る。ふう、暖かい…。
「へぇ~これが日本のファミレスか。何か新鮮な感じ。」
「そうか?まぁ、寒かっただろう。ゆっくり休もうぜ。」
少し嬉しそうな顔をしたジョージに俺はそう声をかける。その後、店員さん席を案内され着席するとみんな好きなものを注文した。店員さんが去った後、お義父さんが笑顔で口を開いた。
「いやぁ、ありがとうタクト!正直ステイシーを一人で日本に行かせて大丈夫かと思ったけれどやはり君がいると安心だな。」
「いやぁ、それほどでも。」
「もう、お父さん!子供扱いしないで!そりゃぁ、タクトと一緒にいれるのは嬉しいけど…。」
お父さんの言葉に少し照れた俺に対し、ステイシーは頬を膨らませながらぼやいた。今度はお義母さんが話し始める。
「でも、本当に元気そうでよかったわ。日本に留学したいってあなたが言った時はちょっとびっくりしたけど楽しんでいるみたいね。」
「当たり前でしょ、私はそんなヤワな娘じゃないわ。」
エッヘンとステイシーは胸を張りながら言った。
「タクト、この子迷惑かけてない?」
「大丈夫ですよ。」
「そう、ならよかったわ。我が強い子だからトラブルでもあったら困ると思って。」
「お母さんも余計なこと言わないで!私がいつトラブルを起こしたっていうのよ!?」
お義母さんに対し、ステイシーは目を吊り上げながら突っ込んだ。
「ほら、覚えてる?」
「何をよ?」
「高校生の時、何回もあなたにアタックしてきた男の子をボコボコにしちゃったことあったじゃない。」
「何よそれ?」
「ん、そんなことあったか?ステイシー。」
俺とステイシーはその時の状況が思い出せずポカンとしていた。するとジョージが何かを思い出したかのように話し始めた。
「ああ、思い出した!ほら、いたじゃん!マークとか言う自称学校一のモテ男が。そいつが姉ちゃんとタクトが一緒に帰ってるとき『俺よりその日本人を選ぶのかよ?』って言った瞬間キレてそいつをボコボココにして厳重注意受けたじゃん。」
ジョージのその話を聞くと、俺はだんだんとその時の状況を思い出してきた。
「あ、俺も思い出したわ!正直俺もそう言われて腹も立ったけど、今思えばお前…少しやり過ぎだぞ。」
ステイシーにそう説明した俺。あの時のステイシーはターミネーターも真っ青になるくらい容赦なかった。マークの顔、原形とどめてない暗い顔がはれ上がってたもんな。するとステイシーもようやく思い出したのか、少々不満げに話し始めた。
「あれは仕方ないじゃない。だって日本人と仲良くしようが自由じゃない。タクトはうちの大切な家族なんだし。それに、私はあんな軽い男に興味ないしむしろ嫌い。仮にそいつがましな奴だったとしてもタクトの方が大事だし…。」
話しているうちにだんだんと顔を恥ずかしそうに赤くするステイシー。俺はそこまでこいつが俺のことを受け入れてくれたのだと思うと結構嬉しかった。
「あのぉ、つかぬことを聞くでござる。」
それまで黙っていた幹夫が口を開いた。
「モリタク殿のアメリカでの生活はどうだったでござるか?」
そう質問した。そう言えば、あんまり詳しく話したこと無かったな。
「俺は楽しかったぜ!この通り素敵なホストファミリーにも出会えたし、異国での学校生活っていう新鮮な体験もできたしな。」
まぁ、最初は戸惑いとかもあったけどそれも今となってはいい思い出だな。今度はお義父さんが嬉しそうに話す。
「タクトは我々が思う日本人男性のイメージをいい意味で壊してくれたよ。日本人の男は亭主関白で不愛想ってイメージが強かったけど、彼は明るく真面目でアメリカでの生活になじもうと努力もしていたね。だから彼が家に来てくれて本当によかったと思っているよ。」
「私も。前に留学生のホストファミリーになってトラブルに会った話を聞いたことがあるけど、拓人には全然そういう心配がなかったわ。」
お義母さんもそう言った。俺、信頼されていたんだな。良かった。
「因みに、モリタク殿はこの通り美男子でござるが、現地の学生の反応はいかがだったでござるか?」
「お、おい幹夫!いきなり何を聞くんだよ?!」
何を言い出すかと思いきや、恥ずかしい質問を繰り出した。そしてお義父さんは笑顔になり…。
「ハハハ、凄かったよ!ねぇ、母さん!」
「ええ、同じ学校の子は勿論別の高校行ったステイシーの友達もタクト見たさによくうちに来ていたわ!」
お義母さんも楽しそうに話し始めた。そういえば、家に遊びに来ていたのは健太郎や裕也等国際科の同級生を除けば女子学生が多かったような…。そしてステイシーはまたしても不満げに話し始めた。
「タクトったら鼻の下伸ばしちゃって…。しかも同じ学校に通ってた日系人の子がめちゃめちゃタクトにしつこく付きまとってたから追い払うのが大変だったわ!タクトもタクトでまんざらでもない様子だったし。」
「ああ、カオルの事か。あれはまぁ…仕方ないだろ。ちょっと怖かったけど。」
正直付きまとわれたのはあれだったけど、モテない自分が始めて女の子に興味持たれたことに関しては悪い気はしなかった。まぁ、俺は3カ月で日本に帰国しちゃったし、連絡先も好感してなかったから大した問題には発展しなかったけど。すると、ジョージがいたずらっぽい笑みを浮かべて話し始めた。
「タクト、その子結構可愛かったじゃん。何で付き合わなかったんだよ?付きあっとけば、うちのうるさい姉にアプローチされなくって済んだじゃん!」
「何ですって!?こら、ジョージ!もう一度言ってみなさい!」
「わぁ、姉ちゃん!暴れるなよ!」
「あんたが暴れさせたんでしょうが!」
掴みかかろうとするステイシーを必死で振り払うジョージ。ガチャガチャ騒がしくなってきた所で店員さんがやってきた。
「ちょっとお客さん!うるさくされちゃ困るね!他のお客さんの迷惑にならないようにして下さいよ!」
「あ、すみません!大変失礼いたしました!」
高田延彦にそっくりな屈強で強面な店員さんに俺は必死で頭を下げて謝った。ステイシーとジョージも何とか落ち着き、店員さんが去った所で幹夫が口を開いた。
「モリタク殿も、色々あったんでござるな。」
「ああ、大変なこともあったんだよ。」
「でも羨ましいでござる。」
「何でだ?」
「こうやって何でも話せる人が多いということは、本当の自分をそれだけ多くの人に知ってもらうチャンスが沢山あるということでござる。」
「まぁ、そう言えばそうだな。」
本当の自分…か。幹夫の言葉に何か考えさせられた俺。その後も、みんなで楽しく話しこみ、お義父さん達は八王子市内のホテルへ向かっていた。そして、俺達は明日のテストのことを思い出し、大急ぎで家に戻って行ったのだった。
こんばんわ!
拓人君の美男子っぷリはアメリカでも通用したみたいですね。
さあ、今は受験シーズンです!
本作でも受験に関するお話を書こうかなって思います!
それではまた次回!




