38話 まずはお試しで
パーティーに誘ってくれることは、とても嬉しい。
ただ、うまくやっていけるかどうか自信がない。
だから、まずはお試しで依頼を請けてみたい。
その結果を見て判断してほしい。
……そうチェルシーに頼まれて、俺達は、適当に依頼を請けた。
「ってなわけで、魔物討伐の依頼だ。対象は、ゴブリンの群れ。ただ、三十匹くらいの大所帯だな。これくらいの規模になると、進化したゴブリンがいることも多いから、気を抜くんじゃねえぞ」
「「はい!!」」
ユナとアズは元気のいい返事をした。
「わふっ」
俺の頭の上に乗るソルも、元気よく鳴いた。
「おー……」
チェルシーは、なにやら感動した様子だ。
「どうしたんだ?」
「いやー……なんか、こんな活き活きしたセイルって、初めて見たから。クライブと一緒にいた頃は、つくづく無理してたんだなー、って。うぅ……ホントにごめん。あたし、なにもできなくて……」
「チェルシーの責任ってわけじゃねえさ。っていうか、チェルシーは色々良くしてくれてた。だから、雑な扱いを受けても残っていたんだよ」
「そ、そうかな……?」
「心の重みをチェルシーが代わりに背負ってくれていた、感謝してるぜ」
「そ、それならよかった、かも……? えへへ、ありがと」
チェルシーは、ちょくちょくクライブとの間に立ち、仲裁をしてくれていた。
絡んでくるクライブをなだめて、場の空気をいい方向に流していた。
良いムードメーカーだったな。
それだけ、俺のことを気にしてくれていたんだろう。
「じゃあ、行くぜ」
街を出て、しばらく歩いたところにある廃村へ。
ゴブリンの群れはここを拠点としているらしい。
近くの茂みに身を潜めて様子を窺うと、ゴブリンが我が物顔で廃村内を歩いているのが見えた。
「セイルさん、作戦はどうしますか?」
「事前の打ち合わせ通り、俺が前に出てゴブリンを誘い出す。アズが続いて、アタッカーとして暴れて、ユナとチェルシーは後方支援だ。いいな?」
「わかりました」
「おっけー」
それぞれが頷いて、
「……っていうか、あたしが一番前に出た方がいいんじゃない? あたしが純粋なアタッカーなんだから。治癒士のセイルにタンクを任せるって、おかしくない?」
「「?」」
俺とチェルシーは首を傾げた。
「普通じゃないか?」
「だよねー。セイルなら、タンクもできるし」
「「……チェルシーさんの認識までおかしかった……」」
なぜかユナとアズが呆れていた。
「なんだかんだ、チェルシーさんは常識人だと思っていたんだけど……違うのかな? セイルさんっぽいよね」
「そうなると、勇者パーティー全員が……? ううん。セイルの周りにいる人がこうなる?」
「セイルさんの自己評価の低さや認識のおかしさって、周囲に影響するのかな……?」
「え。じゃあ、いずれあたしも……?」
なんだか、とても失礼なことを言われているような気がするな。
「ま、とりあえず、いってみますかー」
チェルシーが杖を構える。
「いざって時は、あたしが廃村ごと吹き飛ばすから。それと、本気でやばい時は転移で逃げるから任せておいて」
「ああ、頼りにしているよ」
「「むぅ」」
今度は、ユナとアズは、ちょっと不満そうに膨れた。
「息が合っている……」
「ずるいです……」
とりあえず、集中してくれよ?
――――――――――
「はぁっ!」
まず最初に俺が飛び出して、近くにいたゴブリンを殴り飛ばした。
あえて致命傷は避けた。
ゴブリンは後退しつつ、怒りに吠える。
その声に反応して、あちらこちらからゴブリンが現れた。
怒りと敵意をひしひしと感じる。
いい感じに注意を集めることができたようだ。
「ギギッ!」
さきほどのゴブリンが怒りと共に、突撃してきて……
「くらいなさい!」
アズが飛び出してきて、ゴブリンを殴り飛ばした。
手加減なしの一撃で、今度こそゴブリンは絶命する。
「ギッ!?」
「ギガ!」
俺一人でないと知り、ゴブリン達が動揺する。
「「ファイア!!」」
ユナとチェルシーが同時に魔法を放つ。
良いタイミングだ。
こちらもゴブリンの虚を突くことになり、まとめて複数が炎に飲まれた。
「もういっちょ! サンダー!」
おまけというかのように、チェルシーは、もう一発、魔法を放つ。
紫電が蛇のように駆けて、アズに狙いを定めていたゴブリンを打つ。
「油断禁物だよー」
「あ……ありがと」
「いいって、いいって」
「よし、このまま殲滅するぞ!」
わりと、良いパーティーではないだろうか?
口元に笑みを浮かべつつ、俺は戦場を駆けた。
……ただ、簡単に終わらないのが戦いというやつだ。
ズンッ! という地震が起きたかのような揺れ。
そちらの方向に目をやると、巨体が迫ってくるのが見えた。




