約束していない約束
約束だけ守ればよいのではない。見えない約束を守ることも、人間関係には重要だ。
見えない約束とはなにか。それは「いつものパターン」「恒例」と言われるものである。たとえば、二週間に一回は遊ぶ友人がいるとする。月にすれば二回は遊ぶ友人でもある。その間隔で遊ぶことに慣れると、一ヶ月も遊ばないでいると違和感を抱きはじめる。「あれ、どうしたのかな」と思う。とはいっても、「二週間に一回は遊ぼうね」と約束をしたわけではない。でも、そういう流れ、そういう雰囲気があった。
習慣、慣例にに応えないことによって、相手に一種の不安を与えてしまう。場合によれば、二人の信頼関係に変化を生むかもしれない。いつものことがなくなるとき、そのときはじめて人間は、そのありがたさを知るものだ。
仕事の場面でもこういう事例は考えられる。たとえば、あなたの上司は、いつも同じ時間帯にやってきて数分間話をしていく人としよう。その内容は、その日の業務に関することもあるだろう。ときに単なる雑談のときもあるだろうし、アドバイスをくれるかもしれない。そのどれにしても、上司はその時間にやってくる。上司は、あなたがその時間帯にいることを当然だと思っている。
しかしある時、何の連絡もしないであなたがいないとしよう。いつものように会話をしようとやってきた上司は、あなたがいないことを知ると少し裏切られた気持ちになるかもしれない。たしかに「約束」をしたわけではない。上司はそのことを理解している。だけど、パターン、習慣が崩れたことに上司は違和感を感じる。
その上司は、「見えない約束」をしていた。「特定の時間帯にお話をしよう」という約束をしていた。たしかにそれは明文化されていない。不文律といえるほど周知されているわけでもない。それはあくまでも上司とあなたの暗黙の了解だ。そういうことはよくある。あなたと上司、あなたと友人、あなたと気になる相手、あなたと家族、あなたと恋人。人間関係には、見えない約束が付き纏っている。ときにそれを「期待」と呼んだりもする。
そういう「見えない約束」に応えることが信頼をつくる。そういうことが「いつも期待に応えてくれる」に繋がる。安定感、信頼感、頼り甲斐というのは、こういう見えない約束に応えることで、あなたが知らず知らずに信頼を形成する。
なかには「約束してないから・・」といって、そういう期待に応えないことが悪いことではないと主張する人もいるかもしれない。その通り、見えない約束は守らなくても非難されないし悪い行為でもない。ただ、「今日は所用があるので、後て話を伺います」という一言を上司に伝えるだけで、どれほど人間関係に違いが生まれるだろうか。約束が守れないときに「〜の理由で守れそうもない」と事前に伝えるように、遅刻するときに「ごめん、遅れそう」と詫びるように、見えない約束を守れないときも理由を示したほうがよい。
見えない約束の場合、それはしなければならないことではない。ただ、その約束が遂行できないときの対応が、あなたが人間関係をどのように捉えているのかを暗に示す。言い換えれば、見えない約束をどのように見ているのかが見える。




