お茶会
今回は、後書きのクイズは御座いません…自宅ではないので…
誤字脱字等御座いましたら、感想よりお願いします。
ごめんねぇ、少し悪ふざけが過ぎたかもと言うか無自覚と言うか…」
「つまるところ?」
「記憶に御座いません」
「呆れてなんも言えねぇよ…」
何時までもここでぼんやりもしていられないか…
事態は一刻を争ってこそ無いが、あまり悠長な事もしている暇もない。
急いで国会反逆罪足らしめる証拠を集めなければ、少々不味い事になる。
その為には、さっさと雄輔から許可をふんだくらなくてはならないのだ。
しかし、大商人ってのがここまで簡単にBAN出来ないは計算違いだった。
「じゃあ、雄輔。私が何やっても大丈夫って言う許可頂戴。それと何か聞かれた時の令状的なやつも」
「了解した。急いで渡すぜ…くれぐれも関係者以外に被害が出ないようにしてくれよ」
「善処するぉ!」
早速、その場で【影分身】を使って毎度お馴染みの分身を十人程呼び出す。
幾ら分身が戦闘力が劣るとは言え、着ている防具等の効果は変わらないから、これ程低コストで使い勝手の良いアサシンが居ようか。
今回は偵察だけれども。
「ニンニン!」
「数時間ぶりかなぁ?早速で悪いんだけど、ドイモイって名前の大商人の裏を探って来て。特に重要度の高いヤツを」
「ニンニン!」
コートを羽織っている私と全く同じ格好をして顔も同じ分身達は、何処からか道化師のような仮面を取り出して装着した。
少しづつ細部が違うが、よく見ないと分からない程度だ。
それは多分我々が個人?を特定出来る様にとの配慮だと思われる。
だが、ある意味この分身達について興味が尽きない。
「よっしゃ、じゃあ行きますか…雄輔、嫁さん達は?」
「ウチのか?多分まだお茶でも飲んでると思うが」
「了解了解。あとまたエーリカん借りてくぉ」
「ああ、分かった分かった。気を付けてな」
雄輔が書いて署名を押した即席の令状を受け取り、鍛練場を後にした。
そう言えば、雄輔ってアイテムボックス使えたんだねぇ。
立ちながら令状書いてたし。
私は貰った令状をアイテムボックスにさっさと仕舞い込み、朱点とベアトの手を引いて王妃の部屋に向かう。
振り返った時には、既に分身は四方に散ったあとだった。
相変わらず重厚な扉に呆れて、うげぇと小さく声が漏れた。
ステータスがなまじ高いだけあって、開閉にはなんの苦労も無いに等しいのだが、いや、大魔王であるこの私にその程度の事が出来ない筈がないのだけれど、扉が放つ威厳とやらに一瞬やられただけだ。そうに違いない。
取り敢えずノックをして、返事を待つ。
『入りなさい』
許可が出たのでガチャと扉を開けて中に入った。
「まぁ、お義姉様」
「帰ってきました」
「お帰りなさいませ」
「お帰りなさいませ」
中には、王妃のレギーナさんと側室のセレスティアさんが優雅にお茶を飲んでいた。湯飲みで…
こ、紅茶なら確かに分かる。一応西洋風の王妃様達がgreen tea飲んでるってどうよ…
「あれ?マルキナさんは?」
もう一人の側室であるマルキナさんの姿が見えない。
どうやら、お花を摘みに少し前に出ていったみたいだ。
入れ違いに私達が入って来たらしい。
「ところで……お義姉様」
「はいはい。どうしました?」
「その、小さな子は……?」
レギーナさんがベアトの事を見て、説明を求めるように視線で訴えてくる。
「この娘は、私の愛娘です!」
「「………ファッ!?」」
「どどどどどういう事ですの!?」
二人の慌てふためき様が面白い。
あわわわとレギーナさんが口を押さえて右往左往し始め、セレスティアさんはそわそわとしながらレギーナさんを宥めている。
一体何が?
「えっ?どうしたん?」
暫くして落ち着きを取り戻したレギーナさんに聞いた。
深呼吸しながら、ゆっくりとレギーナさんが話してくれる。
「お義姉様は、この国の王位継承の伝統をご存知でしょうか」
「王位継承…?普通(この世界での)先に生まれた男の子じゃないの?」
私達が活動拠点にしている王国は、皇太姫殿下以外の子供がいないから、次の王位は皇太姫殿下がやるだけだ。
もし弟でも居たら、そちらが王位継承権一位になる。
「ええ、普通ならそうでしょう。ですが、この国では違います。この国の王家は龍王の呪いにより、たとえ妻が一人でも複数囲っても、必ず先に武芸に優れた女子が、次に魔法に優れた男子が、そしてまた女子がと交互に生まれてきます」
「って、龍王の呪いショボいなっ!」
「はい、そこまでは大体問題が無いので良いのですが、生まれて来る男子が問題有りなのです。
この国の王家に生まれてきた男子は、決まって魔法に高い資質を持っていますが、身体が弱く短命ですわ」
「た、短命と言うと?」
「大体50歳程ですわ」
人間五十年…篤盛の壇かよ…信長が桶狭間に突撃する前に舞ったのが有名である。
「うむむ、短い方が…」
「なので、王位に男子が就いた場合、次の王位継承権を持っているのは王の姉、または妹の子供と決まっているのです」
「でも女王ならお婿さんもらうじゃないですか。お婿さんに継承権はあるんですか?」
「いえ、有りませんわ。例外はありますが」
「その例外が雄輔って事が…」
「そうです…ポッ」
レギーナさんが、急に頬を押さえてくねくねし始めた。
これは私への当て付けでしょうか…
直ぐにハッと気が付いたレギーナさんは、オホホホと言いながら扇子で口元を隠してハンカチで額の汗を拭った。
「お見苦しいものをお見せしましたわ…」
「まぁ、それだけ弟の事を愛してくれてるのは、取り敢えず嬉しいけど……ノロケはチョットねぇ」
「そんな、あの人を愛してるなんて」
またくねくねし始めた…
もう帰って良い?
私の眼から汗が吹き出そうです。
「あの人は、先代…つまり私の父上に認められて、直接王位を譲られたのですわ」
「成る程、そうなると次の王位継承権はベアトに移っちゃうって事ですね」
「…はい」
でも、ぶっちゃけ私、新しい国造ろうとしてるから、ベアトにはそっちを継がせれば良いんだよなぁ…
二つの国の継承権を持っていると、何かと面倒臭い事になるのは、地球の歴史のヨーロッパを見れば一目瞭然だ。
最悪、暗殺なんてものも警戒しなくてはいけない。
「レギーナさん、ベアトは大丈夫ですよ。私黒森瞳子は、ベアトのこの国に置ける王位継承権を放棄する事をここに宣言します」
ここで宣言しておけば、ベアトに陰謀の魔の手は来ないだろう。
レギーナさんやマルキナさん、セレスティアさんがそんな事をするとは思えないが、彼女等を慕っている侍女や召使いがその通りかと言ったら、紛れもなく違うだろう。
結局、この国を独立させる為には暫く滞在しなければならないので、ベアトはこの城に居て貰わなくてはいけない。
その為の一瞬の保険と言う訳だ。
この際、明文化しておいた方が良いだろう。
「レギーナさん、何か書くものと紙を頂けませんかね」
「紙とペンですね」
そう言うと、湯飲みが置いてある円形の白いテーブルから、呼び鈴を手に取って鳴らした。
すると、やはり何処からともなく一人のメイドさんが現れて、深く一礼する。
あとでその事をメイドさんに聞いてみると、「王妃様付きメイドですので」と返ってきた。
つまり、あまりパッとしない美人のメイドさんは、スーパーメイドだったと言うことに違いない。
「お義姉様が紙とペンをご所望です。急ぎお持ちしなさい」
「かしこまりました。王妃様」
メイドさんへと用件が伝わると、再び一礼して扉から出ていった。
どうやら帰りは扉からのようだ。
違いが良く分からない。
だが、きっと何かしらの理由があるに違いないと、私は確信する。
「お持ち致しました」
「はやっ!!」
出ていってからまだ十秒くらいしか経って無いよっ!?
このメイド…何者?
「王妃付きメイドです」
「あっ、そうなんですか。了解です」
また口から漏れてたみたい。
下は最近漏れないけどね。
紙をメイドさんから受け取り、早速先程の内容を白紙に書き上げて、びくびくしながら針で親指の腹を突っついて血を出し、それを指の腹に伸ばして血印を押す。
どうやら、こっちの世界では血印に本人の魔力を籠めておくそうだ。
そうする事で、本物かどうかを確められるのと偽造を防止出来るのだとか。
「はい、さっき私が宣言した内容が書いてあるから、レギーナさんがしっかり持っていて下さいね」
「お義姉様……(うるうる)申し訳ありません」
「気にしないで。本当はベアトに私の血は繋がってないんです」
「それは……」
「そう、養女って事です。でも私の娘としてきちんと育てるつもりです」
「そうですか……貴女、お名前は?」
レギーナさんは、悲しそうな顔をして立ち上がり、ベアトの前で屈んで頭を撫でる。
ベアトは、暫くレギーナさんの眼を見たあと、両手で抱えていたスケッチブックにペンを走らせた。
『べあとりーちぇ、です』
「そう、良い名前ね。それとお義姉様がベアトと呼ぶ理由が分かりましたわ」
「まぁ、ベアトはベアトですからね。それ以下でもそれ以上でもありません。ちなみに、ベアトと結婚しようと思う輩は、最低でも私を倒せないとお母さんは許しません」
「いえ、お義姉様を倒せるような殿方はそんじょそこらには居りませんわ…」
「その通りですわ。瞳子お義姉様」
見える、見えるぞ!私とレギーナさん達の間に降りる鉄のカーテンが…いや、この場合は四面楚歌かもしれない……
「だ、だけど、私が認めないとダメだからね、ベアト!」
『はい、おかあさん』
「なんて良い子なのぉ~~。きっと目に入れても痛くないぉ!」
しっかりとベアト抱き締め、ベアトの温もりを確める。
「マスター、それは親バカと言うやつですよ」
「ええ、お義姉様がこのように表情を惚けさせて…孫が出来たらどうなってしまうのでしょう……ところで、貴女もどなたですの?」
いつの間にか私の胸ポケットから脱出したミルクたんは、湯飲みと一緒にあったお煎餅をかじっていた。
「私はマスターの専属マネージャーのミルクです。以後良しなに」
「ミルクたん、一体いつ私の専属マネージャーになったの!?」
「まぁ、ピクシーはそう言うものですから」
「いや、そこはサラッと流しちゃダメなところだからね!?」
ミルクたん、恐ろしい娘っ!!
「まぁ、ミルクさんはお義姉様の【運命の先導者】なのですわね!!」
「そ、そうなんです……お仕事は休業中ですけど」
ちょっと待て、なんだ?【運命の先導者】って…初耳と言うか、ミルクたんがそんなへんちくりんなお仕事してた事すら初耳なんですけど……
一体どういう事なんですかねぇ。
「ま、まぁ!今はそんな些細な事は置いておきましょう!」
「そうですか……そう言えば、お義姉様は何か私にご用が有ったのでは御座いませんか?」
「えっ。……あ、うん。有ります。これはオフレコで頼みたいんですけどね」
「おふれこ…ですか」
「そうそう……近々戦争を起こします」
「!!!!!?」
「作戦内容はここではお教えしませんが、戦争の前段階で政敵とスパイ、国賊を一斉に粛清します」
「国賊…ですか?」
その言葉を呟いたレギーナさんが、とても鋭い眼をする。
やはり、王妃として…いや、王位継承伝統を考えると女王になる存在として育てられていたかもしれないが、国の頂点としては聞き捨てならないのだろう。
「お義姉様、一斉に粛清とはどの様に?」
「既に斥候として風を放っているので、その情報が届き次第、届いた情報を元にこちらの判断で制裁を加えて行きます。場合によっては一族郎等皆殺し…三等親ないし四等親までは消えて貰いますね」
「成る程……見せしめの必要は?」
「候補は約一名程」
「分かりましたわ。お義姉様、宜しくお願い致します」
「謹んで……ところで、エーリカん知りませんか?」
「エーリカですか?お呼びしましょう」
最近は台風やら何やらで、過ごしやすいのやら過ごしにくいのやら、よく分からない季節になってまいりました。皆様はどうお過ごしでしょうか?
第三章は、今回もこのようにダラダラと長くなって、先に中々進めません……
ところで、最近筆者のエネルギーが枯渇気味になって来ております。
例えるなら、大戦末期の日本陸軍と申しましょうか…
さて、この戦況を打破するべく、皆様に支援要請を願います。
1-1でも構いません、是非評価に清きワンクリックをお願いします。
貯まり具合で、私の執筆速度が上昇するやもしれません。
お願い致します。




