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大金持ち

今回は、後書きのクイズが無いので、ご了承ください。

 

余りに気が抜けた声に、毒気が抜かれて呆然としながら声の主に全員の視線が移動した。


私の腕に纏っている電撃は、そうしている内に行き場を失って、自動で安全措置がかかり魔力還元されて消滅してしまった。


「なんじゃ、皆して阿呆面晒しおって。……そうか!我が美しい過ぎて声が出ないのじゃな!!」

「な訳ない!!」


反射的に突っ込んでしまった。

うーん、最近青騎士とかリーラちゃんが居ないから、突っ込み役ばっかりやってる気がするぉ。


「主様は変わらぬのぅ。それよりも捜していたのじゃ」


そう言った朱点は、ふよふよと空中に漂いながらこちらに接近してきて、先程までベアトが収まっていた背中にしがみ付いた。

しっくり収まらなかったので、軽くジャンプして良い感じに位置をずらした。

ベアトが不安そうな顔をしたので、ナデナデしてから頬擦りしてみた。


うへへ、プニプニがたまらんのぅ…


次第にみんなハッと我に帰り始めた。

特に、朱点を知っているエーリカんは立ち直りが早かった。

私が視線を逸らしている間に、他の冒険者をギルドから誘導させていたが、こちとらバッチリ見てる。

何故なら、私が大魔王様だからだっ!!


「ふぅっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはぁっ!!」

「・・・っ!?」

「ベアトごめんよ!!」


ベアトが怯えてしまった。

うーん、あんましおおっぴらに笑えなくなってしまったぉ…

私の存在意義がぁっ!?

…こうなったら、本当に自分の国を建国してやろうかしらん。


『ごしゅじんさま、だいじょうぶですか?』


ベアトが袖を引いて来たので、大丈夫と言ってまたナデナデする。


「それとベアト。もうご主人様なんて言わなくても大丈夫なのだぜ。私のことはお母さんて呼んでね」

『おかあさん。ですか?』

「そそ、お母さん」

「なんじゃ、その童は主様の隠し子かや?……ふふふ、あまり似てはおらぬが愛いのぅ。さぞ肉は美味かろう」

「ごるぁ…逆に私がおまいを取って喰うぞ」

「じょ、冗談じゃ…矛を納めてたもれ?」

「上目遣いしても駄目だぞい。次は無いからな」

『わたしはだいじょうぶです。お、おかあさん』


少し困ったような顔をしながら、スケッチブックに一生懸命に文字を書く姿がとても可愛い。


「この悪鬼が、二度と悪さしないようにお母さんがしつけておくからね」


朱点が、しつけの単語を聞いて、いそいそと背中にから離脱して逃げようとしたが、そうはいかない。

足をしっかりと掴んで引っ張る。


「何処へ行くのかなぁ」

「い、いや?なんの事じゃろうなぁ?我は少し向こうの方が気になるだけじゃが」


ひとまず【捕らえるロープ君】で拘束しておいて、完全に蚊帳の外になっていたギルマスに向き直る。


「ギルマス、少し相談があるんだけど」

「な、何かな?相談とは」


ちらりとギルマスの隣にいる職員を見てから、ギルマスに耳打ちした。


「私とエーリカんと朱点、そしてギルマスだけにして欲しいんだけど」

「……奥の部屋を使おう。そこならば防音魔法が施されているから、盗み聞きされない筈だ」

「了解。エーリカん、朱点ちょっと来て。…そうなるとベアトも関わるのかぁ…仕方無い。ベアトも」


三人を手招きして集め、ギルマスのあとを着いて部屋まで案内して貰う。

「ここだ」とギルマスが部屋の扉に何やら呪文を唱えながら開いた。

私を筆頭にぞろぞろと入り、最後にギルマスが後ろ手に扉を閉めて完全な密室になった。

念のために更に防音魔法を重ね掛けして強化しておく。


「それで暗黒院君。外では話せないこととは一体何かね?何を企んでいる」


中央にあったソファーに座った途端に、ギルマスが真剣な表情で切り出した。

その雰囲気に、全員の表情が引き締まり、あの朱点さえも真顔だ。

きっと今日は雪が…何時も降ってるかここは。


「ギルマスは、なんで私がここに居るか知ってる?」

「ふむ、それはこの国の王が君の弟だからではないかね?」

「早い話しはそうなんだけど、私は明確な目的があって、わざわざ関所破りまでして国境越えまでしたんだ。何故だかわかる?」

「……難しい質問だな」


ギルマスが足と腕を組んで、しかめっ面しながら少し考える素振りを見せた。

既にエーリカんと朱点はそれを知っているので何も言わないが、エーリカんに到ってはやはり険しい。


「…大体分かるのは、この国に天災クラスの人間がかなり揃っていると言う事だな。……もしやとは思うが、また戦争でも起こそうなんて思っているのでは無いだろうな」


こちらは、その正解とも言えるギルマスの答えに、沈黙を持って答えた。


「……まさか、そんな事が。君たちは理解しているのか、それに伴う利害の事を」


利害、つまりはリスクの事か。

自分なりには理解しているつもりだ。

この世界の人達よりは学問とやらを知ってはいるからね。


「分かってるぉ」

「では、その目的とはなんだ?」

「私はこの国を独立させる。そう私はあの子とあの日、撤退する事を対価に約束した。最悪、私は諸王国連合そのモノを潰す」

「ば、バカな…そのような事が……いや、君なら出来るかもな」

「私の超上級魔法を使えば、並の国ならば半日で国土全てを文字通り焦土に変える事が出来る。その時にどれ程の犠牲が出ようとも、私はやり遂げる」

「成る程、それ相応の覚悟があるのは分かった。それで私にそれを教えた理由は?」


頭を抱えながら、唸るようにギルマスが聞いてきた。

その仕草と容姿のギャップが激しい。


「もうギルマスなら分かってるんじゃない?」

「……戦争中のギルド職員の撤退、か」

「イグザクトリィとでも言っておこうかな。正にその通りだぉ。ついでに他の冒険者の避難もだね」

「やろうとすれば出来なくは無いが、冒険者ギルド側には一害あって一利無しだが」

「勘違いしてもらっては困るなぁ。私は依頼しているんじゃ無くて、脅迫してるんだ」


ギルマスの顔色が、赤から青に、それから真っ白になった。

内心はお察しするけど、あとには退けない。


「別に当日その場にいて貰っても良いんだぜ。その代わり優秀な冒険者と職員、貴重な物品や膨大な金銭が一斉に失われる事になるけどね」

「し、しかし」

「だけど、私もそれに掛かる費用をある程度負担しよう。それに、強力な魔導具や品も提供するぉ」

「幾らになるか分からんが、本当に支払えるのか?」


アイテムボックスの中から、懐かしいサレン金貨を百枚程、卓上にぶちまける。

エーリカんとギルマスの表情が驚愕に変わった。

ギルマスなんて、即効で摘まんで鑑定スキルで本物か確かめている。


「ほ、本物…だと?これがすべて……」

「ここに有るのは百枚だけだけど、私はまだあと二億枚持ってる」


ゲーム中で荒稼ぎしたからなぁ…

市場を引っ掻き回したり、ひたすらダンジョンボスを狩り尽くしたり、国を乗っ取ったりしたから、凄い嫌われてた気がする。

と言うか、ギルドメンバーみんなそんな人ばっかりだったから、あんまし気にしなかったけどね。


「「に、二億枚っ!?」」

『におくって、どのくらいですか?おかあさん』


ギルマスは、顎関節が外れそうなほど口を開けている。

エーリカんは…


バタンッ


今気絶して、ひっくり返った。


「ベアト、二億は百を二百万で掛けた数…って言ってもわからないか……とにかくとても大きい数だよ」

『わかりました。おかあさん』

「まぁ、取り敢えず城が建てられるくらいかな?二億枚なら」


顎を戻したギルマスは真面目な顔をして否定してきた。


「バカを言うな、二億枚もあったら大陸丸ごと買えるぞ。王都の城なんざ、これが一万枚あれば買える」


びっくり仰天!

逆にこっちの顎が外れそうになってしまった。


「マジで?」

「マジだな」

「で、でも、サレン金貨って公用金貨二十枚くらいの価値でしょ?」

「誰がそんな大法螺を吹き込んだ!?サレン金貨一枚で、公用白金貨二十枚だ!!」

「公用白金貨ってなんぞ?」

「公用金貨百枚分の価値がある硬貨だ」

「ま、まぁ、そんだけの価値があるなら、四分の一は負担してやるぉ。他は色々アイテムあげるから、元は取り返せるはずだぉ」


リーラちゃんェ……でも、サレン金貨一枚で公用金貨二千枚かぁ…半端ねぇな。


「……ひょっとして、蘇生薬なんて品物もあったりするのか?」

「蘇生薬?【リザレクポーション】の事かなぁ」

「あ、あるのか……?」

「有るよ。ミイラでも生き返るかな?まぁ私は蘇生魔法が使えるから、大抵アンデッドにぶっかけて一撃死させるくらいにしか使わないけど」


不死属性とか悪魔属性の敵に対しては、【リザレクポーション】は最強な威力を発揮して、裏ダンジョンのラスボスが【死龍魔大帝ゾゴンドラビ】とか言う、ドラゴンゾンビの魔王だったんだけど、【リザレクポーション】ぶっかけただけで即死してしまう程なのだ。

その後暫くして修正されて一撃では倒せなくなったけど、相変わらず【ゾゴンドラビ】以外の敵なら一撃だった。

修正されるまでの間、ギルメン総出で裏ダンジョン占領して、ひたすら【リザレクポーション】投げまくっていたから、半分以上の職業がカンストして、五千万枚ほどもエギル金貨を調達したから、【ゾゴンドラビ】先生様々なんだよねぇ。

いやぁ、良い思い出だなぁ~

【明仁】さんや【ぷるえる】さん達元気かなぁ。


「蘇生薬を…」

「アンデッドに掛けるだなんて…」


二人が急にプルプル震え始めた。

意外に怖い。だって、気の振れた人を見てるみたいなんだもん。


「「なんてもったいない事を!?」」

「あひぃっ!!」

『・・・っ!?』


ズイッと顔面を寄せて来る二人に、びっくりしたベアトが密着してくる。

朱点は便乗して、ベアトを抱き上げてから私の背中にくっ着いてきた。

ベアトは私と朱点にサンドイッチにされてしまった。


「暗黒院君!」

「は、はい!」

「君は蘇生薬の価値を分かっていない!」

「は、はぁ」

「蘇生薬が一本でもあったら、国が傾くぞ!」

「マジで?」

「マジだな」


まぁ、確かにこの世界には蘇生魔法は存在しないみたいだからなぁ。

そんなものあったら、みんな欲しがるかぁ。

うん、確かに私も蘇生魔法無かったら欲しいかも。


「ま、まぁ、そこいら辺のアイテムもあげよう」

「それであれば、冒険者ギルドは協力しよう」


商談が成立したので、お互いにしっかりと握手する。


「だが、この国の兵隊だけで始めるのか?」

「…いや、出来れば他の国も巻き込みたい。混乱に乗じて、自滅した国とかがあったら、一つくらい占領してみたいし」

「…もう、好きにしてくれ」


ギルマスが頭を抱えて唸り始めた。

ブツブツ何かをひたすら呟いてる絵は、かなり精神的に来るものがある。


「のぅ主様よ」

「なに?」

「打っておいた布石はどうかのぅ」

「フェルちゃんの事でしょ?」

「そうじゃ。国盗りはどうなっているかのぅ」

「魔物の国の占領支配、か。でも、本当にそんなの有るのかなぁ」

「まぁ、彼の者もだんじょんの魔物であるからのぅ。案外あるのやも知れぬ」

「そう言うおまいさんも、日本産の魔物じゃん」

「無礼な!我は魔物などと言う下等なモノではないのじゃ!我等は妖怪・物化と言ったモノぞ。その中でも、我は鬼であるから、大妖に入るのぅ」

「何が違うのかまったく分からないけど、朱点が妖怪なのは分かった」

「ふむ、我は鬼ではあるが、もとは人の悪しき心や怨み辛みで出来ているからのぅ。実は怨霊でもあるのじゃ」

「もうややこしいから、何でも良いです……で、さっきから私のベアトで何をやっているの?」


さっきからずっと、ベアトを膝に乗っけたまま空中に浮いて、ひたすらベアトをむにむにしたり、後ろから抱き締めたりしていたのだ。

なんて羨ましい!!

この鬼憎いわ!?


でも、ベアト自身が嫌そうにしてないから、無理やり取れないのが、SAN値を削る。

もう、このまま発狂して良いですか?


「はてさて、この戦は何処に行き着くのであろうかのぅ……待っているのは破滅か栄光か。どちらにせよ、我は主様と共にあるのじゃ」

「ん?朱点なんか言った?」

「なに、一人言じゃ」



【死龍魔大帝ゾゴンドラビ】の名前についてのツッコミは無しでww

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