思うところ
遅れてすいません
言う事を言ったので、さっさとお立ち台から降りる。
これぞ、総統閣下が使ったとされる演説技法なり。
大衆扇動する時には、真似するに越した事は無い。
※
「………はっ、妾は一体…?」
まるで夢でも見ていたかの様に、曖昧だがはっきりとあの謎な参謀長の演説に見魅っていた。
気が付かない内に、一言も聞き逃すまいと夢中になって耳を澄まし、参謀長の背中を見詰めていた。
「………なんと言う…あの者は一体何者なのだ?」
父上が、妾達の思った事を代弁して言った。
確かにその通りと強く思う。
声からして年齢は若いはずだが、ローブのフードで顔は見えず、アレ以来常に強い魔力は放ち、戦慣れしているはずの爺やの考えも及ばない程の作戦立案。
そして、常識に囚われない柔軟な思考。
どれを取っても明らかに異常だ。
これ程の人物が、未だかつて王国に…いや、この大陸に居ただろうか。いや、居ないだろう。
どうしたらあの様な深い知識を得る事が出来るだろうか。
妾は知りたい、更なる知識を。
この世の賢人をも知り得ない、素晴らしい知識を。
どの様な犠牲を払ってでも、あの参謀長を手に入れてみせる!
「だが、恐ろしいものだな…あの者が敵の手に渡ったと考えると…」
背筋が粟立ち、鳥肌が立った。
もしこの防衛戦で、勝つ事が出来てしまったら、他の小国や属国の輩に火を与えてしまう。
例え小国と言えど、大国に勝てるかも知れないと言う浅はかな希望を…
これから大陸は、暗黒期に入るやも知れぬ。
「父上」
「どうした?」
「妾がどの様な手を使ってでも、あの参謀長を引き入れて見せましょう」
「…出来るか?」
「………はい、お任せを下さい」
そう言って、二人の視線は謎の参謀長の背中に注がれた。
※
演説のあと、大隊で各兵科ごとに分かれる様に命令し、簡単に仕事内容を説明したら、輸送部隊の牽引する荷車に魔法使いと弓兵を混ぜて乗車さて、早速城を飛び出す。
出撃の際に、大臣から隊旗を頂戴した。
白い布地一杯に広がる双翼の黒い翼だった。
本当に急拵え感バリバリで、時間が無かったのは分かるけど、黒い生地をそれっぽくハサミで切って、白いベッドシーツに縫い付けただけって……
街を出るまで掲げるの止そうかなぁ。
でも、外出たとしても基本見付かりたく無いから、荷車の荷台に低い棒でも立てて使うかな?
風鳴り街道を先行している騎兵が、ラッパを吹き鳴らしながら軍隊が通る事を知らせて、道を開けて回る。
その後ろを兵士達を乗せた荷車が、馬の蹄の音を響かせながら高速で何量も駆け抜けて行く。
皆、何事だろうと、理由を知らない為に首を傾げながら見送っていた。
ちょうどギルドの前を過ぎようとした時、冒険者達もギルドからぞろぞろと出てきていた。
その中に青騎士の姿を見たので、荷台の上から大声で呼んでみた。
直ぐに振り返ってキョロキョロしていたが、ローブを被りながら手を大きく振る私とフェルちゃんの姿を見付けたようで、荷車とのすれ違い様に、ヒラリと飛び乗ってきた。
それをみた兵士達が、ギョッとしている。
ごくごく、当たり前の表情だと、私は思うぉ。
青騎士って、身体能力高いよねぇ。
「瞳子じゃないか、なんでそんな格好してるんだ?フェルだってよぉ」
まぁ、こっちも普通の反応かな?
「理由は今は聞かないでちょ。で、冒険者達はどうなったわけ?」
「おう、取り敢えず行きたい奴は勝手に行け、死んでも知らんし補償もしない。だってよ」
さすがにギルマスと受付嬢でも抑え切れなくなってしまったみたいだなぁ。
確かに、自殺志願者に補償するのも可笑しな話だもんね。
「青騎士、今から敵さん本隊をゆっくり潰しに行くんだけど、ついて来る?」
「マジか、なら行くぜ」
即答良いねぇ。
頑張って当て馬になってもらおうじゃないですか。
荷車と騎兵の集団は、風鳴り街道を真っ直ぐ駆け抜け、城門を抜けた。
魔法使い達を乗せた荷車を二つに分けて、左右の目的地に向かわせる。
そこから件の草原に出て、作戦を開始した。
『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ
このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!
正解しても何も無いけどね。
それでは行きます!
『薄』
これはなんと読むのでしょうか!
出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。
そして、前回の答えの発表です!
『辛夷』と書きまして、『コブシ』と読みます。
コブシとは、モクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木で、早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせることから、別名「田打ち桜」と呼ばれています。
果実は集合果であり、にぎりこぶし状のデコボコがあります。この果実の形状がコブシの名前の由来だそうです。』




