演説
今回を読んで、何かしらインスピレーションやデジャブを感じる方もいらっシャルやもしれません。
「全てに火を放ってはいかんのか?」
今度は王様が、理由が分からないと言う顔をして、首を傾げた。
まぁ、普通は分からないだろうねぇ。
景気良く根刮ぎ燃やしてしまえって、思うのが当たり前だし。
だけど、全て燃やしてしまうと、とんでもない事になりまっせ。
「全ての食糧を失ってしまうと、只でさえ遠くから来ているのに、帰るに帰れず、ここを陥落させるしか無くなるので、相手自然には死兵となるでしょう。つまり、自分で自分の墓穴を掘る訳です。そこで、彼等が四日間ほどは食べれる食糧を残した上で、王様意外の現場指揮官を闇討ちで間引いて行く訳ですね。野戦陣地を進路上に構築したり、堀や塹壕で足止めするのはこの為でも有ります。一旦囲まれてしまっては、城を出ようにも出られませんからね」
そうなってしまっては、私がわざわざ軍師になった意味が無いもんね!!
力任せに敵を殺めるのは簡単だけど、それでは人が死に過ぎて、この世界に与える影響が大き過ぎるし、この私がここの国の偉い人に、超上級魔法が使える事がバレてしまう。
まだこの街に居たいから、それだけは勘弁して欲しい訳だ。
既にギルマスにはバレてそうだけどね。
ノンナさん達受付嬢パーティーには言わずともがな。
「ふむ、貴様の言っていた四日間分の食糧を残して置くと言う事だが、何故四日間分なのだ?」
お次はエドラムお爺ちゃんの質問です。
「はい、それは相手の心に心理的希望を持たせる為です。まだ食糧が残っている、一向に前に進めないのであれば、食糧がある潰れてない補給線まで戻れば…と言う感じで敵自らに選択肢を与え、楽な方に誘導させる為です。彼等の行動基準は、大衆心理なので、一人で無いという安心感が、強い纏まりと戦争の恐怖に打ち勝っている訳なのですが、これを逆手に取って、我慢出来なくなって、一人一人と補給線まで退却して行くのを見せ、そちらに思考を移して行きます。そうすると、仲間が消えて行く恐怖が生まれ、自ずとそちらに着いて行こうとするようになります。あとは勝手に壊走するのを高見の見物でもしていれば良い訳です」
一拍置くと、誰かが喉を震わせた。
低い唸り声に聞こえた。
まぁ、みんな大体は理解してくれたかな?
「私の立案にまだ質問は有りますか?」
「…は、はい」
意外にも手を挙げたのは、参謀その一であるノートンさんだった。
「ノートン参謀、どうぞ?」
「参謀長は、直接奇襲部隊の指揮に就かれるようですが、野戦陣地なる物や堀の敷設の指揮は、一体誰が取れば良いのですか?」
「そうですなぁ…奇襲部隊を私が訓練しつつ、土属性が得意な魔法使い達を動員て、移動しながら直接建てて行きます。あぁ、人員の配置等は後程詳細にお伝えしましょう」
「……あ、ありがとうござい、ます…」
その後は、何も意見が出なかったので早速王様に、ゲリラ部隊を編成してもらう。
私の要求した部隊条件は、最低でも二個大隊約二千人を動員し、内五百人は魔法使い、三百人は弓兵、千人人は騎兵、そして最後の二百人は輸送部隊だ。
何故輸送部隊かと言うと、行軍速度を騎兵に合わせる為に、魔法使いと弓兵を馬車の荷台に乗せ、足を軽くするためだ。
只でさえ時間が無いので、サッと目的地まで行ってパッと陣地を構築して、スッと身を眩ますには、どうしても馬の機動力が必要不可欠なのだ。
魔法使いは土属性魔法を使って、バリバリと土方さんの真似事。
弓兵は騎兵突撃の際に、魔法使いと一緒に後方支援。
見た目がアレな魔法が使えない場面でも、風属性魔法で軌道を安定させた矢なら、多少の長距離でも静かに狙撃出来るから、弓兵は外せない訳だ。
輸送部隊も、いざとなれば歩兵に早変わりなので、戦えないなんて事は無い。
そして、王様に二個大隊なら問題無いとの許可が降りたので、ここに私の戦闘団が完成した。
名付けて、『大魔王戦闘団』!
ドヤッ、カッコいいだろ!
フゥッハッハッハッハッハッハッハッ!!
これで私も一軍の将にもなった訳ですよ。
久々に他人使って暴れ回ってやるぜぇ。
私の要請に集められた屈強な兵士達を、一旦城の中庭に移動させる。
総勢二千人の大集団だ。
きちんと分隊を集めた小隊、小隊を集めた中隊、そして中隊を集めた大隊ごとに整列させた。
そして私は、その二個大隊の前方に自分で設置したお立ち台に上がり、最後尾に見えるくらいの高さから、団の身心を掌握するために、演説と行動の説明を開始する。
観衆である、兵士諸君の四千の眼が真っ直ぐと私に向けられた。
背後の城のテラスには、王様や殿下や偉い人が見降ろしている。
今にもオシッコチビっちゃいそうなのを、なんとか堪えた。
そして、風属性魔法で声を拡声して風で後ろまで運ばせる。
やる事は簡単だ。声に抑揚を付け、少し大げさな身振りをするだけ…
「我が親愛なる王国兵士諸君!
諸君らの感じている恐怖や不満を私自身、深く身を持って体験してきた」
一拍間を空け、右から左に視線を流し、団全員にフードを被った頭の正面を見せる。
「諸王国連合からの卑怯なる侵略、我々を迫害しようとする動き、隣国の裏切り、同盟国からの派兵拒否、内地の都市からは見捨てられ後続も無い」
皆が一言も聞き逃すまいとしている雰囲気が伝わって来た。
どうやら主導権が握れたようだ。
「だが本日は我等に与えられた歴史的転換点である!
私にはわかる、過去諸先人方が成し遂げた数々の国を守る為の勝利、またこの新しき使命をも、諸君等がまさに成し遂げるだろう事を!!」
誰かが息を飲んだ。
あと少しだ…
「私はこの歴史的転換に深く感動している!
我等の胸には一つの誓いがある!
その誓いとはこれだ!
例えどの様な敵が立ち塞ごうとも、我等王国の兵士は今日の様に揺るぎなく!
永久に不滅であるだろう!」
私は両手を大きく広げて、上級回復魔法を幾つも発動させ、団を包み込む。
キラキラと黄緑色の光が舞い、幻想的な風景が出来上がる。
そろそろ〆に入りましょう。
「さぁ!英雄達よ!!勝利のその甘美なる響きが我等を呼んでいる!!」
兵士達の無言の歓声と熱気が、中庭を支配した。
「王国の勇敢なる兵士諸君、立て!
立てよ戦友!! 」
右手を斜め45度に挙げ、踵を鳴らす。
「 栄光ある国王陛下万歳!
無敵なる王国万歳!
そして勇敢なる我々に!!
勝利!万歳!! 」
無言の歓声が限界を迎え、ダムが決壊するが如く、質量を伴った大歓声が中庭を包んだ。
その兵士達の魂の叫びは、城を震わせ、地鳴りを引き起こし、他の人々の魂をも揺さぶった。
それは聞く者すべての思いが一つになった瞬間でもあった。
『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ
このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!
正解しても何も無いけどね。
それでは行きます!
『辛夷』
これはなんと読むのでしょうか!
出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。
そして、前回の答えの発表です!
『信天翁』と書きまして、『あほうどり』と読みます。
アホウドリは、ミズナギドリ目 アホウドリ科 キタアホウドリ属に分類される鳥で、信天翁の漢字を音読みにして、「しんてんおう」とも呼ばれます。
北太平洋に分布しており、夏季はベーリング海やアラスカ湾、アリューシャン列島周辺に渡り、冬季になると繁殖のため日本近海へ南下するそうです。
鳥島と尖閣諸島北小島、南小島でのみ繁殖が確認されていたようで、2011年と2012年にはミッドウェー環礁でも繁殖が確認されているとの事。
名前の由来は、ほとんど人間と接触する事のない環境に居た為に、人間に対し本能的恐怖が無い為、簡単に捕まえる事が出来るかららしいです。』




