朱点
しまった…手違いで前回二話連続投稿してました…
これは、現時点では完全に独立した話です。
頑張って、恩師の力も借りて古文調にしました。
多少間違っている所も有ると思いますが、平にご容赦下さい。
あと、展開早いです。
主人公は、このヤマトでも有名な鬼です。
大江山には鬼ぞ有り
なにがし、言いけり。
確かに鬼有りき。
「未だ都に人は有るや。」
静かなる屋敷の中に、引き込まれるごとく声消え入りぬ。
目の前のは朱漆の大盃。
並々と注がれた酒指にて弾き、畳に染み作れり。
この前都に降りしは、何時かある。
「都の方へ参らむ。」
大盃を片手で煽り、酒を飲み干す。
「女子の血をや啜らむ。」
重き腰上げり。
いざ都に行かむ。
「それとも、童の眼を啜らむか。」
単の裾畳を擦れり。
簾上げ、開け放たれし縁側より、眼下に都が見えり。
「隠れようと、無駄ぞ。」
戸口を開け放ち、雪に白く縁取られし地面踏み締める。
「我からは逃れられぬ」
所々に武士の屍曝され、眼窩の穿ちたり。
我に挑み、破れ去りし者共の末路なり。
誰にも弔われる事無く、無念の内に怨霊となれり。
山中にある広き通りを抜け、人の気配無かりし無人の人家を過ぎる。
かつてここにはもう一つの都ありし。
この通りの名は、裏朱雀大路と言ふ。
憎き帝に滅ぼされし都ありし。
故に、我は人を憎み、人を喰らう。
今は亡き都に蔓延る怨霊鎮めんが為に。
其れ故に我は鬼と成れり。
人が恐れし我が名は、“朱点童子”
大江山の降り、夜の帳に包まれ静まり返る都を目指す。
人を喰らう為に、天橋立を抜け、都の南に立つ。
都には、陰陽師の施せし結界が張られ、悪しき物の出入りを拒みたり。
しかるに、いかに優れたる陰陽師なりとも、我を形作る怨念に及ぶべくもあらず。
爪にて結界を引き千切り、羅城門の固く閉ざされし門戸を打ち破る。
鳴り響く音に、何事かと家々より人出て来ては、我の姿を見て、叫びつつ逃げ出す。
「それ、逃げよ逃げよ。足掻いてみせよ。」
逃げ遅れた女子を捕らえ、その暖かな生き血を啜り、柔らかな童の肉を貪り、男を殺す。
我の通る後には、屍のほか残る事は無し。
「怨まば帝を怨め。我は帝を怨み憎しむ者なり。」
その憎しみは、やがて我の力となる。
人多き所なれば、念もまた多し。
とは良く言ひしものなり。
かのごとき念が、祟りとなり、主の元に帰る。
悪しき念程、それは大なり。
朱雀大路の中程に至る時、二人の武士、われの目の前に立ち塞がれり。
「誰ぞ。」
と問ゑば。
「我は源頼光なり。」
「我こそは、頼光四天王が一人、足柄山の坂田金時と申す者。」
と答えたり。
今まで我に挑みし武士とは、匂ひ異なりけり。
「汝が朱点か。」
「さすればいかがはする。」
「帝に仇なす鬼は討つ。」
鈍く光れる太刀を抜き放ちて、隙なく構えり。
「いざ。」
「勝負勝負。」
「疾く参れ。」
太刀が閃き、我の爪とぶつかりて、火花を散らす。
一の太刀、二の太刀と切り結ぶにつれ、我徐々に追い込まれたり。
「汝ら、只者に非ず。何者ぞ。」
「ただ鬼を討ち滅ぼす者なり。」
「戯言を。」
頼光目掛け火の玉を飛ばし、金時を投ぐ。
「妖術の類いとは。」
「凄まじき剛力なり。」
「我は鬼ぞ。」
金時太刀を両手に迫り、頼光それに続く。
左手にてそれを防げども、ついに腕をば切り落とされし。
「見事。」
と誉めるに、金時更に太刀を振るふ。
「朱点、覚悟。」
「我は汝に滅ぼされはせぬ。」
我はここで人ごときに討たれる訳にはいかぬ。
妖術をもて、世界の狭間の開かん。
「逃げるか朱点。」
頼光叫ぶ。
我は笑い、狭間に身を投ぐ。
世界暗転し、我が覚えしも、かくまでなり。
はい、先ず指摘で感想が増えそうなので、先に補足しておきます。
一つ目、酒呑童子には幾つかの書き方があります。朱点もその一つです。
二つ目、朱点童子には副将がいて、子分も沢山居ますが、ここではいません。
三つ目、頼光四天王の他の三人は、この二人に置いてけぼりにされました。ちなみに、渡辺綱は頼光四天王ではありません。
四つ目、妖術は魔法の類いです。鬼だから使えます。
そして最後に、カンの良い方は気付かれたと思いますが、『朱点』と『裏朱雀大路』と名前は出しませんでしたが『裏京』は、密接な関係にあります。
なお、この回についての質問も、随時承りますので、ドシドシ書き込んで下さい。




