ギルドマスター
「えー、落ち着いて聞いて頂きたいんですが」
「勿体振らないで早く言ってくれる?」
アナスタシアさん怖いっす…
「……フンメル王は、どうやら私の弟みたいです」
「…………は?」
「………何言ってるの?」
「ふぇぇぇ、意味が分かりませぇん…」
「…………ごめんね、もう一度お願い」
やっぱりそう言う反応帰って来ますよねぇ。
でも、みんなよりも私の方が困惑してまふ。
なんで雄輔がこの世界に来てるのか、とかさぁ。
なんで?どうして?
もう大絶賛混乱中。
誰かお助けを…
「だから、フンメル王は私の弟でした!」
「ふ「「「…えぇぇぇぇーーーー!!!!」」」」
「ですよねぇ~」
うん、良い反応なんだろうけど、なんともねぇ。
うーん…
素直に楽しめない自分がいる。
「でも、あの強さなら納得がいくわね。貴女が異世界の人間って事は初耳だけれど」
アナスタシアさんが、なんだか思案顔で呟いた。
周りのみんなも地味に同意している。
「まぁ、何にせよ一旦戻りません?」
いつの間にか、私達を取り囲んでいた兵士は何処かに消えていて、死体だけが残っていた。
どうやら、逃げ足だけは達者なようで…
「そうね、一旦ギルドに帰りましょう。…フェルとか言う娘の腰に下がってる、その首とかも何とかしなくちゃいけないし」
首級の事ですね分かります。
私も、【フランメル某の兜付き生首】をなんとかしたいしね。
端から見たら、かなりヤバい人にしか見えないぉ。
だけど、これで一気にランクアップするはず!!
生首様々だねぇ。
「それじゃあ帰りましょうか」
★
ギルドの中は、今にも飛び出して行きそうなオッサン達で溢れかえっていた。
汗のむせかえるような臭気の中で、金髪の一人の小さい子供?みたいな人が、何やら演説みたい事をして、なんとか抑えていた。
「諸君!何度も言うが、まだ時は早い!!我々が今先行したところで、数に物を言わせて押し潰されるだけだ!!…かと言って、我々が劣っていると、言っている訳ではない。我々が奴等に劣っている筈が無いのだ!!しかし、勝利を確実な物にする為には、満を喫してからでないといけない。だから………遅かったじゃないか!!君達!!」
かなり高いお立ち台から、こちらを確認するなり飛び降りて、トテトテ走り寄ってきた。
なんでこんなところにガキンチョが…
しかも、なにやら大衆煽動してるし。
「頑張っているようで、何よりだわ。ギルドマスター」
ぎ、ギルドマスターぁ?
このちっこいのが?
なんとまぁ。
身長はマイちゃんと同じくらいで、澄んだ金髪に中性的な顔立ち。
声も高いせいで、どっちか分かりにくいが、私の直感が男と囁いている。
「まったく、君達が何処かに行ってしまうから、大変だったんだぞ!!」
「何時も部屋に引き込もって、私達に仕事丸投げしてるんだから、たまには仕事しなさい」
「……はい」
なんか、急速に萎れてしまった。
アップダウンの激しいジャリボーイだなぁ。
「それでと言っては何だけどね、その真っ白な人の腰に下がっているそれは何だね?」
ギルドマスターは、フェルちゃんの腰に下がっている首級を指差して言った。
こら、クビちょんぱになったとは言え、人に指を指してはいけませんと習わなかったのか!
…じゃなくて。
ちょっと露骨過ぎたかなぁ。
てか、剥き出しだったのすっかり忘れてたぉ…
うーん。
オッサン達もこっち見てるし、絶対説明しなきゃいけない感じだよね…
「えっと、首です」
「いや、それは見れば分かるさ。暗黒院君」
おぉ!!初めてその名前で呼ばれたぉ!!
瞳子感激ぃぃ!!
…いや、待て待て。
初対面なのに何故知ってるんだ?
なーぞ。
「僕が言いたいのはだね。それが何の首だと言う事が知りたいのさ」
やっぱり言わなきゃダメかぁ。
誤魔化しは効かないと…
「ほら、さぁさぁ…早く言ってしまった方が楽に成れるからね…」
「どこの尋問屋さんだ!!」
なんて見も蓋もないガキンチョなんだろ…
しかも、地味に魅了をかけて来る辺りが、余計いやらしい。
大魔王である、この私には全ての状態異常は効かないのだ!
ふぅっはっはっはっはっはっはっはっはぁっ!!
「ふぅっはっはっはっはっはっはっはっはぁっ!!」
「うわっ!?」
おぉ、久々な反応ktkr!
いやぁ、最近みんな冷たいんですよねぇ…
「それで?勿体振らずに教えておくれよ」
「その前にジャリボーイ。魅了光線止めれ」
「!?……まさか気付かれるとは思わなかったよ。分かった、今止める」
一瞬驚いた顔をしたが、すぐに悪びれの無い顔に戻り、何事も無かったかのように振る舞い出す。
コイツ…
「早く早く」
「はぁ…そこの首級は、諸王国連合フンメル軍の将校達の首」
「………は?」
もうそのネタ飽きたぉ。
一日に何度も見すぎたせいが一番デカイかなぁ。
たまにだから良いのだよ。
「戦争で武勲をあげると、ランクアップするみたいだから、適当に先鋒を壊乱させて来たわけ。で、その証拠がこの首級」
「……うぅん。良く分かったような分からないような…」
アイテムボックスから、【フランメル某の兜付き生首】を取り出して、ギルドマスターらしいガキンチョに持たせる。
「はい」
「うわぁぁ………おや?」
「それで、めぼしい将校を討伐したから、昇格させて★」
なんかみんな固まってるけど、一体どうしたと言うのかしらん。
うーん、どうやらフランメル某の首級に視線が集まっているみたいだなぁ。
そんなに珍しい物なのかなぁ。首級って。
「なぁ、あの顔って」
「あぁ。…忘れもしねぇ。あの面はフランメル・ベリヌードだ」
「まさかあのフランメルが…」
なにやらオッサン達が騒がしい。
てか、フランメル・ベリヌードって名前だったんだねぇ。
ヌードとかっw
ちょっ、小さい時に苛められそうな名前だなぁ。
在りし日のヌード少年…
なんか服着てなさそう。
「ぶふっ…クククク、ヒヒッ」
「マスターは、何を笑っているんですか?」
いかんいかん。
人の名前で笑うのは失礼だよね。
フランメルさんごめんなさい。
でも、そんなに有名な人だったのかなぁ。
急に飛び出して来たから、反射的に斬っちゃったけどさぁ。
「ねぇジャリボーイ。そのフランメルさんって有名人だったの?」
「ジャリボーイって……まぁ良い。フランメル・ベリヌードは、戦場の狼と言われた凄腕の傭兵で、彼を雇うと敗ける事が無いとまで、言われているよ」
あらま、そんな人をびっくりした表紙に両断しちゃったわけ…
あー…
まぁ…運が無かったんだよきっと…
『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ
このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!
正解しても何も無いけどね。
それでは行きます!
『山毛欅』
これはなんと読むのでしょうか!
出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。
そして、前回の答えの発表です!
『金縷梅』と書きまして、『まんさく』と読みます。
まんさくとは、マンサク科マンサク属の落葉小高木で、早春に咲く事から、、「まず咲く」「先んず咲く」が東北地方で訛ったものとが語源とも言われています。』




