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聖女達の秘密  作者: じいちゃんっ子


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第3話 カリーナの本心

 ようやく報告が終わり、私は自室に戻る。

 こんな無駄な事をいつまでさせるつもりなのか、早い事終わらせてしまえばいいものを。


「カリーナ」


「これは父上、わざわざお越しになるとは」


 部屋の中に居たのマンフリックス公爵。

 私の義父にあたる人間。

 顔が赤いのは、ひょっとして酒でも飲んでいるのか?


「余計な挨拶はいい、それよりなんだあれは?」


「あれとは?」


「しらばっくれるな!」


 激しい衝撃が私の頬を襲う。

 義父上…マンフリックスが手にしていたステッキで私の頬を横殴りで叩いたのだ。


「…言われた通りにしたまでです」


 咄嗟に衝撃を受け流したおかげで、骨は折れなかったが、鼻から口に掛けて裂傷を負ってしまったみたいだ。


「馬鹿者が、まだ陛下の不興を買うには早いと言ったであろう!」


「…はい」


 言いたい事は山程ある。

 マンフリックスは勇者パーティの責任者。

 私を勇者パーティに加えさせたのも、この男だ。


「貴様が早く魔王を討たぬから、長々と時間ばかり使うハメになったのだ!

 私の顔に泥を塗りおって、計画が台無しではないか!

 偽の婚約者まで用意したのに、なぜさっさと終わらせて、勇者を殺さぬのか!!」


「ですが、魔王は転移を…」


「口ごたえをするな!」


 腹にステッキが突き刺さる、さすがにこれは鍛えた私でも痛い。


「よいか?

 お前が成す事は魔王の討伐、そして勇者…いやあの愚か者を籠絡させる事だ」


 息が出来ず、うずくまる私にマンフリックスが酒臭い息を吐きながら怒鳴り続ける。

 こんな生き地獄耐えられない。


「次だ、次こそは魔王を倒すのだ。

 そして愚か者に貴様の身体を…」


 差し出せというのだろう。

 私の身体なんか、マサシには何の価値も無いから手を出してこないのが分からないのか。


「なんだその目は?

 貴様をあの実家から拾ってやった恩すら忘れたのか」


「い…いいえ感謝しております」


 何が恩だ、別に頼んだ訳じゃない。

 5年前、お前が私の実家へ勝手に乗り込んて来て、我が家の家名を潰し、奪っただけではないか…


「分かればよい…」


「な…なにを」


 マンフリックスが私の服に手を掛ける。

 まさか私を犯すつもりなのか?


「や…止めて」


「黙れ、男を知らぬ訳でもあるまい」


 嫌だ!私はまだ経験がないのに!


 掴んた手が私の服を一気に引き裂く。

 もう限界だ。

 コイツを殺して、私も…


「…そこまで」


「誰だ!」


 突如部屋の中に1人の女性が現れた。


「貴様は…」


「…よく頑張ったなカリーナ」


「サリー…」


 そこに居たのは賢者サリー。

 部屋の鍵はしていたが、転移して来たのね。


「何の真似だ、私を誰だと!!」


「…国費を横流しで私腹を肥やす愚か者、証拠は既に掴んだ」


「な…」


「まさか?」


 マンフリックスが横領?

 そんな事を…


「…最初の討伐から変だと思った。

 食料は乏しく、医薬品も足りない、聞いていた予算は潤沢だったのに」


「ぐ…」


「…だから4人に絞った。

 貴様に金が流れぬように」


 4人になったのは、そんな理由があったのか。


「…だから死ね、陛下の許可は取った」


 サリーから繰り出される巨大な火球、焼き尽くすつもりなの?


「あ…」


 一瞬だった。

 マンフリックスを飲み込んだ火球は壁に当たると、僅かな焦げ跡だけを残し消え失せた。


「…ご苦労だったカリーナ」


 燃えカスを確認したサリーは静かに私を見る。

 痛みが消えていく、ヒーリングを使ってくれたのか。


「陛下はこの事を?」


「…全部知ってた。

 お前の実家を乗っ取って、カリーナをパーティに送り込んだ事も」


「そっか…」


 それなら最初から止めて欲しかったよ。


「…お前が知る通り、この国は中枢が腐ってる」


「そうね…」


 本当にそうだ。

 魔王討伐で私腹を肥やす貴族、不幸に泣く下級貴族や民を放置する王国か…


「…私が許せないのはマサシを使い捨てにしようとした事」


「え?」


 それってつまりサリーは…


「…私はマサシが好きだ」


「そっか」


 なんだ、サリーそんな顔も出来るんじゃない。

 真っ赤だよ、本当に。


「…お前もだろカリーナ」


「そんな事は…」


 そんな事ない。

 私がマサシに近づいたのは、彼を破滅に追い込むためで、好きとかじゃない。


「…好きになるのは構わん。

 だがマサシは私だけの物だ」


「言うわね…なら私は愛人かな」


「…ダメだ。

 マサシの国は一夫一妻だそうだ」


「なによそれ、だからこの前は魔法で私を狙ったの?」


「…すまん、自制出来なかった」


 サリーって嫉妬深かったんだ。

 それにしても、異世界の常識を引き合いにだすとはね。


「…マリアにも譲らん。

 もっとも、アイツはまだ自覚してないみたいだがな」


「そうね、だと思う」


 だからマサシの痴態にあれだけ狼狽えたのだろう。

 サリーも口を半開きにして固まってたけど。


「…なんだ?」


「別に」


 サリー、やっぱり顔が赤いね。

 私は兄が6人居たし、道場も男ばかりだったから、そういうのは知ってたけど。


「…次で魔王は倒す」


「うん」


 魔王が何回も転移したのって、サリーの仕業なんだろうな。


「…半年掛けて準備をする。

 最後の旅は楽しもう」


「そうね、でもマリアはそのままで良いの?」


「アイツは所詮教会の傀儡。

 色々と動いてるみたいだが、無駄な事だ」


「確かにね」


 そんな事で体制は覆らない。

 異端扱いされて始末されるだろう。

 そこは教会も国家と変わらない。

 あとはマリアの問題って事か。


「…そろそろ私は行く」


「どこに?」


「…研究室だ。

 マサシから聞いたミソとショウユがもう完成する」


 ミソとショウユって、マサシの国にある調味料ね、ようやく完成するんだ。


「次の旅に使える?」


「…ああ」


「楽しみね」


 本当に楽しみ、マサシの料理。


「…ゆっくり休め、この部屋に誰も近づかないよう一晩結界を張っておく」


「ありがとう…」


 転移したサリーが消える。

 本当に何を考えてるんだろ、全く…私もだけど。


「マサシ…私、本当はあなたと…」


 一晩中泣き明かした。

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