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聖女達の秘密  作者: じいちゃんっ子


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第2話 マリアの気持ち

 国王に報告を済ませ、私達は自室へと戻る。

 カリーナとサリーの態度がいつもと変わりがなかったのはさすがだ。


 いや、あの二人が特別なだけなのかもしれない。


 城内に用意された私の自室。

 両隣の部屋は私の身辺警護の為に兵士達が交代で使っている、だが実際のところ見張り部屋だろう。


 そうでなくとも三人の中で、私の立場が一番危うい。

 聖女の役割は勇者の補佐でしかなく、戦力としてあまり役に立たない。

 過去には聖女を同行させないで、魔王討伐を成功させた事例もあるくらい。


 教皇の娘といっても、妾の母に生ませた六女、元々使い捨ての駒だった。

 偶然聖女の神託を受けただけの事。


 扉を閉め、部屋中に静音(サイレント)の魔法を掛ける。

 サリーなら簡単に破られてしまうだろうが、私も一応は聖女。

 その辺りに居るような連中には、簡単に解除出来ないだろう。


「…危ないところだった」


 ようやく本音を口に出来る。

 全く冗談じゃない、何が楽しくて魔王討伐に何回も行きたがるものか。


 しかも最初の時みたいに兵士を同行させろ?ふざけるなって話だ。


「まあ…私も悪かったけど」


 本来なら1回で魔王を倒さなければならなかった。

 逃がしてしまった責任は私にある。


 マサシに触れたく無かったので、殆ど支援魔法を掛けられなかった。


「仕方ないでしょ…」


 シスターになった日から、この身を神に捧げると誓った。

 たとえ相手が勇者であっても、倒すべき者が魔王だとしても…


「でも2回目以降は使ってるね」


 自分でも不思議。

 あれだけ嫌だったのに、今の私に嫌悪感は全くない。


「それにしてもよ、魔王が転移するなんて、そんな話聞いた事ないよ」


 過去の伝承でも、そんな事例は無い。

 もしかして偽物かと思ったけど、聖女の私には、あれが本物の魔王だと分かる。


「…まあいいわ、これでまた時間を稼げたから」


 過去4回の転移で、魔王が再び王国内に現れるまでの時間は、ちょうど半年。

 今回も貴重な自由時間を謳歌しよう。


「よっと!」


 解放感に浸り、ベッドに大の字で倒れる。

 はしたない行為と思うが、カリーナとサリーが旅の途中で何度もするものだから、すっかり私も気に入ってしまった。


「ん?」


 視線を移すと、テーブルに置かれた花束と手紙。

 教会の奴等が私の部屋に無断で入って、置いて行ったのだろう。

 送り主を確認する間でもない、枢機卿のバカ息子に決まっている。


「誰がお前なんかと…」


 以前は見向きもしなかったくせに、私が聖女になった途端近づいて来たような奴だ。


 元々単なる幼馴染で、好意なんかこれっぽっちも抱いた事が無い。

 ずっと無視をしていたら、1回目の討伐の時、奴は手紙を送って来た。


 それも封に入れず、便箋をむき出しにした状態で。

 あんなの中身を読んでくれと言ってるような物じゃないか。


 外堀から埋めようとするなんて、どこまで姑息な男だろう。

 当然だが、返事なんか書かず破り棄ててやった。


 枢機卿の息子がなんだというのか、私だっていつまでも教会の操り人形じゃない。


 討伐の旅をする中で、怪我人や病人達を聖魔術で癒して、聖女マリアは女神の再来と言われるまでになったんだ。

 私の意向を無視出来ないだろう。


「お腹空いたな…」


 城に戻ってから何も食べてない。

 広間に行けば何かしらの食べ物はあるが、マサシの作ったのが食べたいな…


「なぜ?」


 私は何を?

 あんな得体のしれない異世界の食べ物なんか…


「えぇ…」


 思い出すだけで、お腹が激しく鳴る。

 はしたないどころの騒ぎではない。


「…まいったな」


 やっと城で美味しい食事が食べられるというのに、一体どうしたの?


 マサシが自分が初めて食事を作ったのは3年前、最初の討伐の時だった。

 こっちの食事が口に合わないとかで、余った食材で作り出したのが始まりだった。


 どれも見たこともない料理ばかりで、最初は誰も食べようとしなかった。


『ろくな調味料が無いし、それに焚き火やかまどは火加減が…』

 そんな言い訳してたっけ。


「そんなことより、サリーよ」


 あの子がマサシの作る料理に興味を持ってから、なにか味が変わった気がする。

 最近じゃ調味料まで二人で作るようになったし。


『…口に入れば同じ』

 いつもそう言ってたクセに。 


「でもマサシの料理もあと少しで食べ納めね」


 次は魔王を討ち取ってみせる。

 今回マサシに掛けた支援魔法は半分の力だった。

 全力で行ったら、魔王は転移する間もなく倒されるだろう。


 討伐が終わればマサシは用済み。

 聖剣の力は失われ、実力は並の剣士程度になる。

 言ってなかったけど、元の世界に戻す事は出来ないの。

 悪く思わないでね。


「頼むわよカリーナ」


 マサシと距離が近いように見えるが、あれは全て彼女の計算の内。

 カリーナに手を出したら、マサシに待つのは、貴族の婚約者を奪った罪で、死罪。


 知らなかったは通用しない。

 最初の討伐に出る時、わざとカリーナの婚約者の存在を教えたから。


「ま、偽物だけどね」


 実際はカリーナに婚約者なんかいない。

 カリーナと来たら、あれだけ綺麗なのに、オシャレとか色恋に全然興味がないんだから。


「時間の問題よね」


 最近ちょっとやり過ぎの気がするけど、あれだけカリーナのアプローチを受け続けて、変な気を起こさない男はいないだろう。


 その証拠に今回初めてマサシの泊まる部屋を透視したら、自分の…モ…モノを…


「アアアアァ!」


 私達はなんて物を見てしてしまったんだ!

 てっきり悪巧みでも考えてるものだと!


「悪よ去れ!悪よ…」


 どうして?言葉が続かない。

 以前の私が、あんな物を見ようものなら、迷わずマサシを殺しに行ったはず。

 それなのに、今も普通にマサシと…


「頼むわよカリーナ、サリー…」


 私はマサシを殺せない、後始末は二人に任せよう。

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