特訓タイム
12階層の森林では予想通りトレントが現れた。現れたどころではない、森林と見えたのは全てトレントだったのだ。時々色の違うマーダートレント、トレントジャックに加え、Aランクのキングトレントまで混ざっている。キングトレントはトレント達を統率して合体攻撃を仕掛けてきた。葉っぱカッターに風魔法のトルネードを重ねて触れただけで切り刻まれてしまうほどの威力を持つ合体技だ。
「まずい、相殺します。ウィンドカッター、トルネード」
リリィが慌てて相殺しようとするが威力が負けている。リコは魔法使いだがリリィは違う。くノ一なのだ。魔法勝負ではAランクの魔物には勝てない。少し威力は衰えたものの脅威レベルの合体魔法がリリィ達を襲う。
「ゼックス!」
「おう、任せろ。鬼シールド発動」
声をかけたローラの周りに不可視のバリアが張られた。リリィはクロック達と自分の前にウィンドシールドをとっさに2枚掛けしてダメージを減らそうとする。そこに竜巻で加速された高速葉っぱカッターが襲いかかる。
竜巻が去った後、リリィもクロック達もなんとか立っているが全身傷だらけだ。それを犬獣人のミリアが回復魔法で一気に治す。リリィはゼックスを見ると無傷だ。さっきの鬼シールドというやつだろうか?凄い防御力だ。あれ、ローラがいない?
「スクリュークラッシャーキーーーーーック!」
竜巻で上空に飛ばされた勢いを利用した超高角度落差の蹴りがキングトレントに直撃し、その身体を貫いた。
「あれは確かオズバーンの蹴り。あれはウサギ獣人にしかできない。見事なものだ」
数百年ぶりに見た大技にクロックが呟いた。当のローラは何食わぬ顔で他のトレントを倒している。リリィも苦無に火の魔力をなんとか込めトレントを倒していく。戦いが終わった後、森林だった風景は野原になっていた。
「風以外の魔力を纏わせるのは結構難しい。カツヨリは簡単にやってたけど、これは練習しないと実戦即は厳しいかも」
リリィが初めて火の魔力を苦無に纏わせたがコツが掴めていないようだ。それを聞いたローラは、
「私は色々な魔力を纏わせる事ができるが、それは修行の成果だ。リリィ、お前は凄い。いきなりできただろう、普通はありえん。お前なら実戦で身につけた方が早そうに見えるがな」
「ローラさん、結構いっぱいいっぱいですよ、私。それよりゼックスさんの鬼シールドって凄いですね。あの魔法を受けてなんともないなんて」
「ああ、俺のシールドか。あれは鬼族しか使えない奥義だ。魔力を使うのであんまり多用はできないがなかなかだろう。親父が言っていたが龍族にも似たようなシールドがあるらしいぞ。それでも神獣には全く歯が立たなかったらしいがな」
上には上がいる。ローラもゼックスも全くダメージを受けていない。身に染みてわかっていたつもりだったがまだまだ頂点は遠そうだ。せめてゼックスさんのシールドが破れるくらいに強くならないとカツヨリのパーティーには戻れない。あの2人は絶対に前より強くなっている筈だ。今の私では足手まといになってしまう。ゼックスさんは強くなるにはレベルではないと言っていた。技を磨く事、経験を積む事だ。それにはこのパーティーは最高の面子だろう。
一向は13階層へ入った。ステージを見るなりゼックスが、
「今度は墓場か。次はアンデッドみたいだな。リリィ、ここはお前が魔力を纏う訓練にもってこいだな。アンデッドは火に弱いからな」
リリィは丁度訓練したいと思っていたのでグットタイミングではあるのだが、敵は結構強い。不安が頭をよぎる。クロックが表情からそれを読み取ったのか、
「リリィとやら。貴殿を見くびっていた事を謝罪する。その年齢でその強さ、素晴らしい才能だ。この老体とミリアが補佐するのでしっかりと訓練をしてほしい」
「おじいちゃんとリリィちゃんは私がきっちり回復するから安心して!」
ミリアが犬なのに猫のニャンニャンポーズで答える。
「ミリア。なんで猫なんだ?」
「猫の方が可愛いニャンコ」
「お前犬のプライドがないのか?まあいい、回復を頼む」
ゼックスとローラは茶番には付き合わず背後に控えている。リリィは可笑しくて笑っている。緊張が解けたようだ。魔物が出始めた。スケルトン、スケルトンナイト、スケルトンマジシャン、ゾンビ、グールだ。後方にいかにも強そうな黒い甲冑を着た騎士っぽい魔物の姿も見える。リリィは苦無に火の魔力を込め始める。これだけ数がいるといちいち投げた苦無の回収はしていられない。マルス国で手に入れたミスリルショートソード、前のダンジョンで手に入れたメガカマキランのカマを手に持った。リリィには二刀流のスキルもある。
「あの後ろのはやばそうね。ゼックス、助けがいるかもね」
「爺さんがやるって言ってるんだ。ギリギリまで様子見だな」




