偶然
リリィ達は町を出て大陸の南端にあるという龍王山に向かっている。南端なので途中いくつかの町を抜けて行かねばならない。森や山ではCランクの魔物が出るがこの3人には脅威ではなく一閃されてしまう。一応魔石や売ればお金になりそうな物はアイテムボックスへしまって置く。路銀は多い方がいい。
途中いくつかの町によって換金したり情報を集めたりしたが、特に新しい情報は入ってこなかった。そして3人は王都についた。
「王都か。久し振りだ。一生来ないと思っていたが人生というのはわからんものだな」
ローラはしみじみ呟いている。リリィは本当は来たくなかったのだろうなと勘ぐったのが顔に出たようで、ゼックスが
「リリィ。気にするな。ローラはそんなに弱くないぞ。しかし王都は獅子獣人ばっかりだな。王家が獅子とはいえ偏りすぎてないか?」
「ゼックス。そういうものだよ、獣人は」
ローラはそれだけ言って口を閉ざした。獣人にしかわからない何かがあるようだ。王都に宿を取り夜は飲み屋へ出かけた。情報を得るには飲み屋が一番だ。冒険者から町の住人まで様々な種類の輩が管を巻く。3人は町の中で賑わっている飲み屋に入り隅っこの席につく。獣人が多いので人族は遠慮したように見せかけた。まあ実際初見の店なので様子見です。
「リリィはまだ酒は飲めないよな」
ゼックスが冷やかすが、
「飲めます。いつまでも子供扱いしないで下さい」
リリィはとりあえずエールという事で、ビールに似た飲み物をピッチャーで頼む。このとりあえずエールというのはカツヨリが言い出した表現でリリィは気に入っていて結構使っている。ところが、この言い方が波紋を呼ぶ。店員がそのまま店長に伝えたところ怒り出したのだ。
「おい、姉ちゃん。とりあえずってのはどういう意味だ。エールが飲みたいのか、飲みたくないのかはっきりしろ!何でもいいみたいな酒はうちの店には置いてねえんだ」
獅子獣人の店長が鬣をなびかせて喚いている。せっかく遠慮して端っこに座ったのに店にいる人の注目を浴びてしまった。ゼックスが店長に謝り、俺はエールが飲みたいんだ。とびっきりのを飲ませてくれ、というとわかればいいんだ、わかれば。と、その場は治った。その騒ぎの中、ローラは何かを見つけたようで青い顔をしていた。
ゼックスは30歳位の商人風、ローラはその奥さんという設定で変化のアイテムを使って偽装している。鬼とウサギ獣人が現れたら大騒ぎになるからだ。リリィはその旅の護衛という事になっている。
騒ぎが収まったので情報を取り始める。
「俺達は旅の商人なんだが、龍王山ってのがあるんだって?」
と周りの酔っ払いに話を振ると、
「龍王山か。あそこへ行ったら帰ってこれねえ。みんな龍のエサになっちまう」
「俺は1回近くまで行ったが、龍の門の手前で引き返したよ。空に龍がいっぱい飛んでやがった。あんなの勝てるわけがねえ」
「龍ってのはでかいのか?」
「そりゃあもう、龍って感じよ」
「何だそりゃ」
「グハハハハハ」
ただの酔っ払いの会話だ。リリィはローラの様子がおかしいのが気になっている。さっきから青い顔をして元気がない。何か怖い物を見たような感じだ。たまに視線を向ける方向には酔っ払いが沢山いるだけだ、いや、その奥の方、反対側の端っこに1人で飲んでる年寄りがいる。どうやらその年寄りを気にしているようだ。
その年寄りはさっきの騒ぎで騒ぎの元になったテーブルに座っている連中を見た。賑やかな奴らだ。静かに酒を飲みたい時に。その時、人族の女と目があった。なぜかその女は俺の顔を見て目を背けた。俺を知っているのか?それ以降、たまにその女を見ると下を向いている。会いたくない相手に会ったような雰囲気だ。誰だ、あの女は?
『誰なんだろう?』
リリィは気になって仕方がない。ゼックスは酔っ払い連中に混ざり、情報収集に取り組み中だ。
「そういえば、ほら、前の王がいたろ。子供に追放されたっていう」
「ああ、歴戦の勇者じゃない、それは違う話だ。王位争奪戦で優勝したクロック王だな」
「凄え強かったんだろ?」
「ああ。だが歳には勝てん。息子に王位を譲ったら追い出されたっていう話だ。だが、どうもそれには裏があるらしいんだ」
「何だ?クロック王は俺ら獅子獣人の代表だろう。まあ、会ったことはないし顔を見てもわからんだろうが王都の獅子獣人はみんな感謝してるんじゃないか。俺もだけど」
「で、裏って何だ?」
「いや、そこまではわからん」
「おい、話が繋がらないだろう」
「グハハハ、まあ酔っ払いだから。グハハハ」
飲み屋も閉店に近くなり、1人2人と店を後にしていく。リリィ達3人も宿に戻ろうとしたその時、残っていた年寄りに話しかけられた。
「お前達何者だ?」




