龍王山
リリィ達はドロス公国に向かっている。ローラを連れて行っていいのだろうか?王女から聞いた話ではウサギ獣人はドロスでは迫害されほぼ追放扱いだったと聞いている。思い切って聞いてみる事にした。
「ローラさん。このままドロスへ行っても平気ですか?」
「平気ではないさ。私は子供の頃ドロスにいた。そして王位継承戦で父が敗れるところをこの目で見た。あの頃は子供だったからわからなかったがあの勝負はイカサマだった。だが、今更それを言ったところで何かが変わるわけではない」
「ウサギ獣人だと分かると問題が起きるのでは?」
ゼックスがイヤリングを出した。
「これは鬼族に伝わる変化のアクセサリーだ。これを付けて人間に見せればいい、俺のようにな。それよりドロスへ行く目的をはっきりと聞いていない。説明してくれないか?」
「そうね。カツヨリが逆方向へ進んでいるからこっちを調べておこうと思って。ゼックスさん、あなたゼックンさんから神獣について聞いた事はありませんか?私は蜘蛛の神獣に会いました。ものすごく強いんです。そんなのが4匹もいるようなんです」
「誰から聞いた?」
「王女です。王女はマルス国に伝わっている事は全て教えてくれました。神獣は蜘蛛、猿、龍、鯨だそうです」
「父上はその4匹と会ったそうだ。お前の言う通りものすごく強くて倒せなかったと言っていた」
「私はゼックンさんが龍に乗っていたのを見ました。鬼族は今でも龍族と交流があるのではないですか?」
「ない」
即答だった。リリィはあてが外れた顔をしている。ゼックスは続ける。
「交流はないが、父上はこの間500年ぶりに龍族のリョウマに会ったと言っていた。リョウマも父上と同じく勇者カツヨリのパーティーメンバーだった人?だ。すでに家督を子供に譲ったそうだ。そして龍の住処は、」
『ドロスにある』
ゼックスはローラにイヤリングをつけさせ人間に変身させた。ドロスは獣人の国だが隣国のマルス国とは交流があり、人間の出入りも多い国だ。リリィは王女から紹介状を持たされた。いざという時には役に立つだろうが、リリィはそれを使う気は無かった。何事もなく門を通過し町の中に入った。ローラはこの町を覚えていないそうだ。町の名を、ブロッケンという。
3人は冒険者ギルドへ行き情報を集める事にした。リリィはすでにAランクであり、どこに行っても注目される存在になっている。しかも巨乳の美少女だ。初めてのギルドではお約束のナンパに合うが周囲を覆うウィンドシールドのお陰でお触りする事は不可能だ。リリィは王女からMP 回復の指輪をもらっておりシールドの常時発動ができるようになっている。
「これでもカツヨリやリコには全然届いてないよね。もっと修行しないと」
「だろうな。カツヨリと戦ったが底が知れない。初見で私の必殺技を食らって行きてたし。リリィには勝てそうだからまだまだだな」
「ローラの必殺技ってあの分身するやつか。あれは、俺でも苦しいぞ。ちなみに俺はリリィに触れる事は可能だ」
ゼックスは風のシールドを気にもせずリリィの肩を叩く。
「もっと修行しないと。Aクラスなんてただの名前よ、もう、強い人多すぎ!」
それは間違っている。リリィより強い人はそうはいない。ただ、周りにたまたま集中しているだけだ。
リリィはギルドの受付でギルドカードを出し、
「リリィと言います。龍王山に行きたいのですが、行き方を教えてくれませんか?」
「龍、龍王山ですか!あんなところへ何をしに行かれるのですか?普段は立ち入り禁止になっています。たまに無謀な冒険者が龍王山に行こうとしますが、その後行方が知れなくなります。恐らく龍に喰われたのではというのが通説で、年に1回の交流日以外は誰も近寄りませんよ」
「そうなんですか?仲が悪いとか?」
「500年前に勇者カツヨリが魔王を倒した後、龍の一族は龍王山から出なくなりました。年に1回、龍の鱗と酒を交換するイベントがありその時だけ山の麓まで行く事ができます。それ以外は近寄ると何が起きるかわかりません。ギルドとしては行く事はすすめられません」
行き方くらい教えてくれてもいいのに、受付嬢は頑なに情報を拒んだ。ギルドとして責任を負えないのだろう。リリィは仕方がないのでゼックスに町で情報を集めるよう頼んだ。ゼックスは情報集めが得意だ。リリィとローラは宿屋にチェックインし、ゼックスを待つ間資材の調達だ。このパーティーは攻撃型3人で回復役がいない。つまりポーションがないと苦しいのだ。まあ、この3人にポーションを使わせる敵はそうはいないのだが、なんせ次は龍が相手だ。戦いになるとは限らないが備えあれば憂いなしである。
夜になってゼックスが戻ってきた。
「お帰りなさい」
「おう、色々聞いてきた。龍王山はこの大陸の南端にある。そこへ行くには一本道で、龍の門という境界線があり、それを越えると龍の縄張りになる。そして許可なくそこを越えると、戻ってこれた者はいない」




