49.教えてほしい
もぐもぐもぐ。
(きなこだんご、うま……)
界とじいじ、くまじいじは結局、茶屋で、きなこだんごを食べていた。
【…………~~~~っ】
(ん……?)
ふと界はドウマが声にならない声のようなものをあげていることに気が付く。
(「…………ドウマってさ、ひょっとして甘党?」)
【なっ!? そ、そうだが? 何か問題でも?】
(なんでちょっと怒ってんのよ……)
(「あ、いや……そんなことないけど」)
(ちょっと意外だったけど)
などと会話していると、じいじが界に声を掛けてくる。
「界ーー、他に食べたいもんはないかー? なんぼでも食べていいからなーー?」
などと甘やかすじいじに、
「あっ、こら、白神! 界様をそんなに甘やかすんじゃない!」
くまじいじが渋い顔を向ける。
(くまじいじ……、そうだよな……、それが普通の……)
「界様、こんなじじくさいものより、さーてぃわんの方がよろしいでしょうか?」
(はい……?)
そう言いながら、くまじいじは色とりどりのアイスクリームが映ったスマホの画面を見せびらかせてくる。
「おい、一之瀬ぇ、界を甘やかしちゃいけないんじゃなかったのか?」
「白神、お前が甘やかすのが気にくわないだけで……くまじいじには甘えてよいのですよ! 界様!」
「ただのやっかみじゃねえか!」
「ああ゛ん?」
じいじとくまじいじは激しく睨み合う。
「あの! じいじ、くまじいじ!」
「はーい」「はい!」
界に呼ばれたダブルじいじは甘い声で返事した後、はっとした様子で再び睨み合う。
「「がるるるる」」
界は、
(昔のラブコメかよ……)
と少しトホホとしつつ、本題に入る。
「僕、二人に〝封印術〟を教えてほしい!」
「「……!」」
〝封印術〟という言葉が耳に入った瞬間、二人は界の方を見る。
実のところ、界はこの旅を二人から封印術を教われるビッグチャンスと捉えていたのだ。
界は封印術というものに興味を持っていた。
寂護院で院長の篝火堂が狒々に対して弱体化の封印術をしていた。
テンシの件で、父がテンシを封印術で抑え込んでいた。
この二点の出来事を見ていたことから、界自身も封印術を会得できないかと考えるようになっていた。
ということで、まずはドウマに聞いてみた。
しかし、【儂様は人にモノを教えるというのがあまりうまくないと思われる】と言って、断られた。
次に鏡美先生に聞いてみた。
しかし、「私レベルの破魔師では、残念ながら封印術そのものができない」と言って、断られた。
次に栗田先生に聞いてみた(電話で)。
電話したらすごく感激されたが、「専門ではない。間違ったことを教えられない」と言って、断られた。
次に父ちゃんに聞いてみた。
現在、父が界と一緒にいれないのと同じ理由で、「自分が修行するからできない」と言って、断られた。
が、父は単に断っただけではなく、自分よりも適した人がいることも教えてくれた。
「親父……要するにじいじ、それと、お義父さん……要するにくまじいじはそれぞれ違う方向性の封印術のエキスパートだ」と。
だが、「しかし、彼ら……教えてくれるだろうか……。秘伝の封印術。私がやっとのことで、じいじ|《親父》から教えてもらえたのは15の時だ……」とも言っていた。
だから、界が奈良へ行きたいと言ったとき、誰が行くかという話になった際、界はいつになくじいじに甘えた。
加えて、母にくまじいじに連絡してもらうようせがんだのだ。
(なんか打算的でごめんね、じいじ、くまじいじ……)
そして、今。
無邪気っぽい雰囲気で「封印術を教えてほしい!」と言った界。
それを耳にした二人の顔色が変わっ……
「いいぞー」「もちろんです!」
ってなかった。
(え……?)
デレデレにっこにこで快諾する。
(いいの!?)
そうして、界はダブルじいじに封印術を教えてもらうことになった。
【………………さーてぃわん……】
(ん……?)




