42.シビョウ【一部、父視点】
「おじさん、いい人じゃなかったのですか! おじさんなら、悪霊降霊の儀で、お母さんも依代の子も死なせないことができるって……そう言ってたじゃないですか!? だから、お父さんも……! それなのに、どうして……? どうしてお父さんを……!」
暁が必死の形相でシビョウに問い詰める。
「んー? どうしたの? 暁ちゃん? 約束は守ったでしょ?」
「え……?」
「んー、実際、悪霊降霊の儀では、お母さんも依代の子もどっちも死んでないでしょ?」
「……!」
「悪霊降霊の儀の後のことは約束していないし、それに、お父さんが死なないなんて一言も言ってないよね?」
「っ……、そ、そんな……。ずるい……ずるいのです! そんなの……! お父さんに赤ちゃんを殺させるなんて……!」
「んー? それはさ、彼に元々、その願望があったからであって、全てを僕のせいのように言うのはやめてほしいねー」
「え……?」
「彼は子供よりも妻に生きてほしいと願った。何か悪いことか? 人は皆、平等だろ? 命に重さなんてないと叫ぶじゃないか? だとしたら、うるさくて育てるのが面倒な子供よりも、美しく自分の好きにできる女を選んだって何ら悪いことじゃない。僕はそんな願いを持つ彼に共感したし、その背中をほんのちょっと押してあげただけさ」
「っ……、お父さんは……お父さんは……」
暁はポロポロと涙を流す。
「あぁあぁ、うざいうざい……。そうやってすぐ泣く……。だから子供は嫌いなんだ。君の才能は利用価値がありそうだが、どうしたものか……。まぁ、この後、しっかり調教すれば……」
「闇炎術〝黒蓮冥火〟」
「へ……? ぴぺぇえっ」
シビョウは三度、暗黒の炎に包まれ、消滅する。
しかし、
「んー、君も学習しないねぇ……」
シビョウはやはり復活を遂げる。
「んー、頭が弱いのは相変わらずか……ドウマ……、そんなの無駄だってわからない? テンシの膨大な霊力があればね、僕は100回でも200回でも復活するよ?」
シビョウは不敵にせせら笑う。
(……)
その時、界は一つの覚悟を固めていた。
(ごめん……父ちゃん、そっちには戻れない)
◇◇◇
「ぐぁああああああ!」
痛ぅ……。
「彰彦さん……!」
……真弓、そんな心配そうな顔をするな……。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
傷を負ったのは……左肩、右ひざ、左太もも……。
急所は外している。
「ふむ……思ったより粘りましたね……。しかし、脚を負傷してはそれも長くは持たないでしょう」
「うるせえよ……」
「ほぉ……?」
脚を負傷したくらいが何だ……?
痛み……? そんなもの……!
身体強化の雷術に、超加速の雷術を掛け合わせる……!
「雷術合術〝迅雷閃〟!」
ぐぬぅうっっっ……!
全身に電流が駆け巡ると同時に激痛も駆け巡る。
「……! なるほど……、電気刺激で強制的に身体を動かしましたか……。いや、しかし見ているこっちが痛くなりそうです」
「八柱だかなんだか知らねえが、余裕ぶっこいてんじゃねえぞ……!!」
「実際に余裕なのだから仕方がないじゃないですか」
くっ……。
テンシは私の攻撃を防ごうとすらしない。
今この時も私の迅雷閃から逃れようとはしていない。
霊力の圧だけで、防げてしまい、そして罪を罰へと変換するのだろう。
「……」
なんとか……なんとか糸口を見つけなけれ……、
「ぐっ……!」
………………え?
「な……? …………どういう?」
私の迅雷閃を被弾し、テンシがノックバックした?
しかも、テンシ自身も驚いている?
…………好機だ……。
なぜかはわからぬが、今しかない……!
畳み掛ける……!
「雷術合術〝迅雷閃〟!」
「っ……!」
想定外のことにテンシも反応が遅れてる……!
…………届け……! 届いてくれ……!
「…………惜しかったですね」
「っっ……!」
…………剣を……?
「僕の聖剣を守りに使わせるなんて…………万死に値する」
「っ……」
くっ……、剣によるカウンターが来る。
……だが、こちらも大技の反動で……。
くっ……、失敗した。
千載一遇のチャンスを棒に振るった……。
テンシが剣を振りかざしている。
わかっている。
わかっているのに、見えているのに……どうしても身体が動いてくれない……。
すまない、真弓……。
…………こんな時に、息子の言葉が過る。
『でも父ちゃん、俺……、俺は今日、この日この時に父ちゃんと母さんを守るために……』
ごめんな、界……。
生き残ってやることができなくて……。
願わくば、お前だけは……強く生きてほしい。
……。
「っっ…………え?」
「ど、どういうことですか?」
テンシが動揺している。
初めてだ。
初めてこのすまし野郎と意見があった。
これは、どういうことだ?
私の身体は、どこからともなく現れた〝輝く壁〟で守られていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
突然ですが、この場を借りて告知させていただきます。
本作が書籍化いたします!
レーベルは講談社Kラノベブックスで、発売日は12/26(金)になります。
https://www.kodansha.co.jp/comic/products/0000423408
それで、1巻ですが、「赤池の顛末」というエピソードを書きおろしで収録しております。
昨今の物価高により本体価格が少々高めで申し訳ないのですが、、、
発売日をご確認ください!
12/26です。
そうです、お察しの通り…………クリスマスですね!!?!
ということで、今年のクリスマス、普通に夜勤の私へのクリスマスプレゼント(という名の書籍購入)をよろしくお願いします!!!!




