35.青海暁
しばらくはなるべく朝7時に投稿しようと思います。
時々、ゲリラ的に複数話投稿するかもです。
「ちょ、暁、界くんは今、来たばっかりでね……」
青海は暁を窘めるように言う。
「そ、そうですよね。ごめんなさいです。その……でも、私、ドウマ様に……」
「暁!」
「はぅっ……」
暁がドウマと口に出した時、青海はやや厳しい口調を暁に向ける。
(ん……? ドウマに何か用か……?)
「も、申し訳ありません、ド……いや、界くん……、その……うちの娘が失礼を……」
(……他の大人より露骨ではないが、青海さんもドウマへの畏怖の念はあるみたいだな……)
【全く、悲しいなぁ……。儂様は子供の戯言に激怒する程、狭量に思われているのか?】
(「割と思われてるぞ」)
【へ……?】
(うーん、ずっとこんな感じされると、正直しんどいな……)
「あ、あの、え、えーと…………き、気ニスルデナイ。今後モ小サキコトハ気ニシナイ」
「……! な、なんと寛大な……」
【おい、今のなんだ? 儂様になりきったつもりか? おい、田介、そうなのか!? ……少し馬鹿にしてないか?】
(…………)
「パパ、小さいこと気にしないって! じゃあ、界くん、稽古しようです!」
子供の順応は早い。
「あ、暁ぁ……」
青海は少々、困った様子だ。
「ははは、暁ちゃんは元気だなぁ……界、どうする?」
父が界に尋ねる。
「え……」
(相手は天才幼児と呼ばれる青海暁さん……、そんなの……)
「僕もやりたい!」
「よしきた! 慶三、どこか稽古をつけられるところはあるか?」
父は青海(下の名前は慶三)に尋ねる。
「えぇ、本当にやるのぉ……? まぁ、裏庭は使えるけど……」
「こっちなのです!」
暁は居ても立っても居られない様子で、通路の先を指差す。
「彰彦……私は瑠美さんと……」
「あぁ、うん」
母は、今回、依代の子を生む瑠美と親しい仲であった。
ゆえにまずは瑠美と話をしたいというのは当然である。
「わかった、真弓。それから慶三に瑠美さん、子供達は私が見ているから、心配するな」
「ありがとうございます。白神さん」
瑠美は頭を下げる。
「いや、彰彦、流石に俺も行くぞ。暁が礼を欠いてはまずいからな……」
「お、そうか? わかった」
そうして、青海、父、暁、界の四人で裏庭に行くことになった。
その途中で父が界にぼそりと教えてくれる。
「暁ちゃんは魔力量〝赤〟レベル7の水術使い。超がつく天才だぞ……」
(……! まじか……!)
魔力量〝赤〟レベル7とは、魔力量測定における最大値。
その割合は1000万人に一人と言われていた。
四人は裏庭に着く。
裏庭は25メートルプール場くらいの広さの空き地となっていた。
と、
「ど、ドウ……界くん!」
(いや、今、ドウマって言おうとしたよな?)
「お願いします。わ、私に……翠嵐滅波を伝授して欲しいのです」
「す、すいらん……めっぱ……?」
(何ですか? それ……)
「あ、暁……!」
いきなり界に懇願した暁に、青海はやや強い口調で窘めようとする。
しかし、暁はめげない。
「お願いしますです。ドウマ様……!」
(もはや包み隠すことすらせず……)
(「お、おい……ドウマ、どうすんの? 何? すいらんめっぱって?」)
【…………】
(「ちょ……ドウマさん?」)
なぜかドウマはツーンとしている。
息づかいは聞こえるので、意図的に無視しているのだと界にはわかった。
(全く、この気まぐれおじさんめ……、どうすりゃいいのよ……、はぁ……)
「ぼ、僕……そんな技……知らないよ……」
正直に言わざるを得なかった。
「え……!?」
暁は目を見開いて露骨に驚いた顔をする。
「本当に?」
「はい、本当に……」
「うーん……」
すると、暁は、今度はまじまじと界のことを観察し始める。
(え……!? ちょ、なに、この子、怖い……)
界が動揺した様子をしていると、
「…………えー、こほん」
暁は咳払いし、
「界くん、稽古をつけてあげるのです! お姉さんに何を教えて欲しいですか?」
急にお姉さん風を吹かせてきた。
(ははっ……、この子、すごいわかりやすっ)
界はちょっと苦笑いする。
(だけど、あの初めて魔力発現のことを知った動画に出ていたレベル7の子と稽古できるなんて、滅多にないチャンスだ。例の日まで、残された時間は多くはない。一方で事変が震災のように突然、発生するなら、ギリギリまで準備に充てることができる。少しでも強くなるチャンスがあるのなら逃すわけにはいかない)
「暁さん! 暁さんの考えた最強の水術を教えてください……!」
次話、合術【一部、暁視点】




