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反転攻勢 ~ふざけた職業【カスタードプリン】。だが、それでも俺は必ず日本を取り戻す~  作者: 銀騎士


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第24話 アヴェンジャーの対価 ☆ルルル


 戦士の村に帰還した俺たちは、その足で村の中央にある冒険者ギルドに向かっていた。


 マークⅢいわく、南門の近くにも冒険者ギルドの換金所はあるらしい。


 まぁ、南門から中央の冒険者ギルドまでの距離が、約25キロもあるから冒険者が多くいる南門の近くに、換金所があるのは当然だろうな。


 ん? てことは……


 あることを、完全に失念していたことに気づいた俺は頭を掻く。


 それは北門や東門付近にも小屋が出現している可能性についてだ。ネヤの話では、転移者は南門にしかいないとのことだったが、俺たちがこの村から遠い西に出現していることから、無いとは言い切れないからな。


 まぁ、全てをカバーできるほど俺の手は長くはない……ここは転移者がいる可能性が最も高い西を確認してから、北と東に行くしかない。


 俺たちは冒険者ギルドに到着し、俺は冒険者ギルドでのやり取りを全てマークⅢに任せていたら、合計金額が約1160万円という、とんでもない額になった。


 どうやら、アヴェンジャーが上位種扱いの討伐金になるらしく、アヴェンジャー2匹で1000万円、残りのオークたちで80万円、ウルフ3匹と道中に倒した30匹ほどの魔物の群れで、約80万円という内容らしい。


 だが、高レベルのアヴェンジャーが上位種扱いになるのは理解できるが、低レベルのアヴェンジャーについては納得できず、俺は理由をマークⅢに聞いた。


 その理由はアヴェンジャーの『オークの怨念』にあるらしく、アヴェンジャーが同族を率いていると、『オークの怨念』によってアヴェンジャーに進化するということだ。


 それを阻止するために、アヴェンジャーは上位種扱いになっているらしい。


 まぁ、確かに賢いやり方だと思う。あんな化け物を倒して10万だと言われたら、誰もが狩りやすい通常種を狩るだろうからな。しかし、討伐金に目がくらんで逆に殺される冒険者も多そうだ。そもそもオークには『徒党』があるから倒し難い上に、メイジやアヴェンジャーが加われば、上級職程度のパーティでは倒すことは困難だろうからな。


 なんにせよ、これで俺たちの装備や道具を揃えたとしても、少なくとも一人は転職できる資金を得たことになる。すぐにでもラードたちと合流したいところだが、まずは俺たちのような不遇な職業に就いている者たちを探すことが先決だ。


 その後、俺たちは武器屋に足を運んで、装備や道具を揃えた。


 俺はガダン商会の鉄の長剣、鉄の鎧と鉄のブーツ、小型の鉄の盾、服や下着も購入し、元の服は一応マークⅢに預けておいた。


 ルルルは元からギャルぽい露出度の高い服を着ていたが、それはさすがに装備として貧弱すぎると俺が伝えると、「お金も稼げないし私はこれでいい」とルルルは答える。


 俺は半ば強引に、ルルルを魔物の皮で作製された防具が並ぶ区画に連れて行き、そこで防具を選ばせようとしたが、ルルルは不服そうにしている。


 「お前は金のことばかり気にしてるが、逆の立場だったら、お前は俺を助けてくれないのか?」


 俺の問いかけに、ルルルは頭を振った。


 「だったらいいじゃねぇか。俺たちはこれから不遇な連中を助けに行くんだ。お前は助けたいと思わないのか?」


 「……思う」


 「だよなぁ、お前は自分の意思で俺についてくると決めたんだからな。俺についてくる以上、もう金のことは気にするな。こっちが逆に気をつかってしまうからな」


 「……分かった」


 表情をほころばせたルルルは、楽し気に装備を物色している。


 どうやら少しは打ち解けられたようだな。だが、ルルルの問題は防具だけの話じゃない。日本と違ってこっちは簡単に人が死ぬ。そんな環境下で彼女だけが日本にいたときよりも身体能力が低下している。それも幼稚園児並みにだ。その不安とストレスは計り知れないだろう。


 なので、できるだけ早くルルルのレベルを上げたいが、ラードのやり方では魔物に止めを刺せないので、ルルルのレベルが上がるのは、いつになるのか分からないのが現状だ。


 そこで俺はルルルでも魔物に止めを刺せる武器を買おうと思案する。


 真っ先に思い浮かんだのがミスリルだ。マークⅢに聞いてみると当然のようにあったが、ミスリルダガーですら1500万円と高額だった。逡巡した俺が次に浮かんだのがクロスボウで、木製ではなく鉄製のクロスボウだ。


 木製では威力に不安があるからな。ガダン商会の鉄製のクロスボウは20万だったので即買いし、鉄の矢が1本300円だったので100本購入しておいた。


 装備を選び終えたルルルの恰好は、スネーク革の肩とへそが丸出しの服、スネーク革のミニスカートといった魔物の皮を使用した装備を選び、黒いGジャンみたいなのを羽織っている。


 もう少しまともな装備を選んでほしかったが、ルルルは幼稚園児まで力が低下しているから、動けなくなりそうなので俺は何も言わなかった。


 ガダン商会の商品なので、合計で20万ほどで済んだが、通常の品なら3倍以上の値段になるのでガダン商会様々だな。


 ちなみに、アヴェンジャーの鉄の鎧は15万、鉄の靴が5万で売れるようだ。戦斧は売っていないので値段は不明で、ウルフの毛皮は2000円と予想よりも安く、ウルフの頭を換金するときに、牙がついていることを指摘され、その牙の値段が6000円と高額だった。


 次に購入したのが、前回棚上げしていたマークⅡの体になる台車だ。


 俺が作った台車は二メートルほどの長さがあるので、荷物をたくさん積めるのだが、販売されている台車は最大で一メートルほどの長さしかなかった。


 しかも、木を鉄で補強しているだけで、強度的にも不満があったので前回は見送った。


 しかし、それらを考慮しても、真っすぐにしか進めないという欠点は大きすぎるし、ルルルもいるから購入することにした。値段は5万円だ。


 その後、5人用のテントや鍋やボウルや包丁などの料理道具、素材などを収納する大きな麻袋を100枚と、人族語学習セットを10セット購入した。


 さらに、回復手段としてポーション10本、キュアポーション3本、ファテーグポーション3本を購入し、俺たちは店を後にした。


 人族語学習セットを10セットも購入した訳は、発見した日本人たちに配るつもりだからだ。


 ちなみに、ファテーグポーションはSPを回復できるので便利なのだが、1本で3リットルとかさばることが問題だ。値段は1本1万円だ。


 俺たちは冒険者ギルドが運営する酒場、【戦士の宴亭】で食事をすることにした。


 干し肉と果物だけでは味気ないからだ。


 日替わり定食が1000円で、量も多くて味も普通に食べられるので、食にあまりこだわりのない俺にはこれで十分だ。


 食事がこの値段で食べられるのに、駆け出しの冒険者たちが野営を強いられている訳は、やはり、毒だろう。


 魔物は毒を持ってることが多いから、常にキュアポーションを所持してなければ死に直結するし、毒を受ける度に5万円が飛ぶのは、駆け出しにはきつすぎる状況だ。


 食事を終えた俺が物思いに耽っていると、ルルルにプリンを強請られた。


 ふっ、プリン屋を開業すると儲かるかもしれないな。


 それから俺たちは西門の近くで野営を行い、その時にマークⅡの意識を購入した台車に移した。それから、干し肉、果物、水が入った樽を一樽ずつマークⅡに積み込んでから、俺が作った台車は邪魔なので破壊した。


 マークⅡは自由に動けるようになったことがよほど嬉しかったのか、結構長くテントの周りをぐるぐると回っていた。


 ちなみに、アヴェンジャーを倒したことにより、俺のレベルは一つ上がって、ステータスの値が640まで上昇し、この値は最上級職と並ぶもので、新たに『フルフル』という特殊能力にも目覚めている。


 マークⅢによると『フルフル』は量子のもつれにより、攻防の精度が上昇する特殊能力らしい。


 量子のもつれってどういう意味だ? だが、やっとまともそうな特殊能力に目覚めたので、俺は素直に喜んだ。


 俺たちは夜が明けると西門をくぐり、俺の小屋があった場所に向かって進み出したのだった。


 マークⅢが俺に話したステータス


名前: ロスト

職業: 【カスタードプリン】レベル: 7

HP: 600

MP: 500

SP: 600

攻撃力: 640+ガダン商会の鉄の槍+ガダン商会の鉄の長剣

守備力: 640+ガダン商会の鉄の鎧+ガダン商会の小型の鉄の盾+機械式腕時計

素早さ: 640+ガダン商会の鉄のブーツ

魔法: ポイズン

特殊能力: 生命付与, 生命付与者解析, 生命付与者意識移動, 無限プリン, プリンに夢中, フルフル

ルルルのイメージ

挿絵(By みてみん)


本日、もう一話投稿する予定です。


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