設定集② Q&A
感想欄の質問と質問への回答をまとめたもの。
プラス、特に質問があったわけじゃないけど作者が語りたい裏設定。
Q.発音不可音ってどんな音?
発音不可音は、魔法文明で発達した言語体系の発音です。全部で十二種類あります。
魔法文明には色々な種族が暮らしています。青の魔女の白嶺族だとか、入間の森人族だとか、他にも色々。種族固有の魔法体系には種族固有の発音がある場合があり、そういった発音の一部が発音不可音です。
リアル世界でもこういった民族特有の発音があったりします。「ズールー クリック音」あたりでググればたぶん出てきます。
Q.迂回詠唱って?
本来の意味を保ったまま、別の言葉で置き換えた詠唱です。
同じ文章でも、翻訳者によって言葉選びが変わったりします。意訳とか。
無名叙事詩はタルクェァの人生を謳う事が目的なので、多少言葉選びが変わろうとも、文意が合っていれば本旨に沿い、魔法は発動します。
Q. 魔法世界の吸血枠もあんなお茶目オジサンなの?
いいえ。
もっと堅苦しい、伝統とか誇りとかを大切にする人です。歴史ある、ノブレス・オブリージュを大切にする大貴族って感じ。保守派。
Q. 枠の魔法少なすぎランキング第1位って傀儡枠なんですかね?
入間は最低でも二つは魔法持ってますね。魔女集会に傀儡魔法を伏せながら見せ札として使っていた固有魔法があるはずなので。詳しくは設定作ってないです。
無名叙事詩の魔法は「ある人物がタルクェァに大なり小なり関係して使った魔法」なので、そういう魔法が少ない人物は、枠の魔法も少なくなります。
世田谷の魔女も1~2個しか無いと思うよ!
Q. 魔法文明から見て地球で魔法以外で想定外の発明とかありましたか?
あります。
とりあえず電気関連は全部想定外です。
魔法以外は原子論とか超弦理論が代表的。
魔法文明は物質の分割最小単位として原子論を採用していません。もっと魔法的視点で物質を捉え、理解しています。
「185 プロメテウス計画」で聖域先生が形而上分解と唯物合成がどーちゃらこーちゃら言っていたのはその話ですね。
魔法文明も原子の存在は認識しているので、原子論が丸ごと想定外かというとそうでもないんだけど、そもそも電気の理解が激浅だから電荷の理解もガバガバで、そのへんも邪魔して地球科学文明的な原子論がほぼ発達していない……みたいな感じ。
Q.ぶっちゃけ本編終了時点でキャラ別で魔力量最高5人って誰ですか?
1聖域の魔女
2ハトバト
3青の魔女
4コンラッド
かな。5位は分からぬ。
超越者になった時点(グレムリン災害直後)での魔力量でいえば、1位聖域(ルーシ女王)、2位入間です。
ハトバトは人形枠だった時は下の方でしたが、魔石と融合してハトバトになった瞬間にドカンと増えました。
Q.蜘蛛の魔女さんをどうにかして人型にしてあげたい!
無理です。
彼女は超越者に変異するという事の悲哀を一身に背負ったキャラクターです。
デメリットの踏み倒しはできません。
超越者への変異は、ただ力を得て強くなるだけではありません。取り返しのつかない悪い事も起こりえます。
Q.白嶺族の地方領主について
荒瀧組親分枠の白嶺族地方領主は、少数民族(白嶺族)の出先機関的な役割を担っていました。ド田舎の辺境で細々と暮らしている民族が、自分達の権利を確保するために、代表者を都会に送る感じですね。有能で長生きなので時間をかけて昇進を繰り返し、地方領主にまで上り詰めました。
白嶺族が暮らすウラーシールに入るためには、この地方領主の許可が必要です。
彼の部下は普通の人間たちです。
Q. 設定集①にあった鎖の魔女(八王子の魔女枠)って偉大なの?
すみません適当書きました。別に偉大じゃないです。
作者が「魔女=クナス=偉大な女性」って設定を忘れてただけです。日本語訳で「王」になる魔法語が複数あるみたいな感じだと思います(後付け)。
Q.入間が東京魔女集会で傀儡枠を知ってる超越者に会わなかったの運いいよね。
まあ、そう。コンラッド枠がいたりしたら即敵対ですし。
魔法文明における傀儡の魔法使いは裏で傀儡使って暗躍しがちだったので、案外直接の顔見知りは少ないです。
Q.幽界捕食者さん、めっちゃ卵産んでるのに全然孵ってないじゃん
幽界捕食者は多産多死タイプです。猿みたいに少数の子を産んで大切に育てる感じではなく、鮭のようにどっさり産卵してそのまま放置して数匹が成体になればいいよね、という感じ。
Q.無名叙事詩の王様と猫さん再会希望
王様はそれを目的に聖域の魔女と無名叙事詩契約をしました。猫(´;ω;)
猫は王様の猫アレルギーが解決すれば膝に飛び込んできます。
Q. 魔法文明ってどうやって魔法使ってたんだろう
魔法文明の魔法は段階的に変遷していて、
①原始的な発声魔法(魔物の鳴き声魔法と同じ)
地球でいうところの石器時代頃まで。各民族が、各民族固有の発声に基づく魔法を使っていた。
②女王銅を利用した無詠唱魔法
地球でいうところの青銅器~鉄器時代。各民族が交流し、複合的な魔法体系が作られていきます。魔法を設計デザインする技術知識が発達していきます。
③幾何学構造グレムリンを利用した無詠唱魔法
地球でいうところの産業革命以後。魔法技術が爆発的に発達していきます。
この順番で変化しました。
地球はそもそも①②③をすっ飛ばして④無名叙事詩魔法って感じ。②はルーシ王国で行われていますし、③も大利のリバースエンジニアリングから道が拓けました。①に関しては魔人たちがもっと数を増やし世代交代を続けていけば、そのうちできるようになります。
Q.地球だと魔法的死を食らった入間枠とかまた生えてきてるよね?
魔石には不滅魔法が施されています。
不滅魔法は絶対死を予防します。既に起きてしまった絶対死は覆せませんが、これから起きる絶対死を防ぎます(タルクェァの死後に聖域の魔女が開発した魔法)。
ハトバト氏や聖域の魔女が魔法死すると、肉体は塵になりますが、魔石は塵にならず、残ります。枠はまた生えてきて、新しく生えた枠に魔石を融合させれば、復活します。
Q.聖域の魔女の計画が上手く行ったら(電気文明バグが起きなかったら)どうなった?
予定通りにいけば、数年程度で魔王が聖域の魔石を回収します。
魔王グレムリンを使用し入間をボコった例もあるので、魔王に取り込まれれば、聖域の魔石は魔王グレムリンを通じて魔王そのものを(手動?)操作できるものと思われます。
実質、自発的に動けるようになります。上手くやるでしょう。
傀儡枠だけは枠の発生が遅れるように意図的に設定されています。バグらなければ、上手くいきます。
Q. なんでタルクェァは処刑人の傀儡魔法を解除しなかったんだろう
シンプルに魔力切れです。MPが足りない!
Q. 世界魔法(詠唱魔法や超越者枠を含む)の発動媒体は何なのでしょうか?
幽界結晶(幽界捕食者の卵)です。
Q.傀儡魔法が無法すぎる
はい。無法です。だからタルクェァは死ぬ事になりました。
開発者の傀儡の魔法使いは、防御貫通、事実上抵抗不能、自分以外に使えないセキュリティ、超低燃費など、可能な限りの性能を実現しました。「死亡でのみ解除」「心臓を起点にする」「呪印が浮かぶので一発で見分けがつく」などの制限と引き換えに、他の性能を理不尽なほどに爆上げしています。恐ろしい完成度のバケモノ魔法です。
Q.魔石の特徴について
熱にやたら強いのは不滅魔法の効果です。破壊はできますが、変質はしません。そういう意味で不滅です。不壊ではなく不滅。
マモノバサミや封印弾を作れるのは、魔石に時間停止がかかっているからです。魔石に封じられている魂(意識)のコールドスリープですね。
魔石の魔法高増幅率や不思議な魅力は、中に封じられている魂に由来します。
Q. 魔人に子供は生まれない問題って聖域の魔女さんの知識で解決するのかな?
難しいですね。彼女の専門は魔法構築とグレムリン工学なので、変異学は専門外。
Q.電気文明の総力をあげたら聖域の魔女に勝つことって可能なんですかねぇ?
これどうなんだろう? グレムリンあったら電気文明沈黙するって前提はとりあえず無視して考えます。
例えばですね、電子レンジの原理で聖域の魔女を沸騰させるような攻撃は、聖域の魔女のガードをすり抜けて効くと思います。聖域の魔女は電気文明特有の攻撃に対して無力です。全く想定していないから。
逆に電気文明側も、重装甲戦車やドローン、戦闘機が魔法一発で吹っ飛びます。魔法攻撃を想定できていないので。
探知魔法とレーダー索敵もお互いに効くし……数の利も聖域の魔女は使い魔系の魔法でカバーするだろうし……
勝敗想像つかないですね。
Q. つまりハトバトが売り捌いていたコピー魔法杖は4次元的に見るとコピー用紙に書かれたペラ紙みたいな物だった?
大正解。
Q. 一般魔法文明人の総魔力量平均値ってどれぐらい?
基本的に地球の超越者の2~3倍です。12000Kぐらいが中央値。
で、魔法文明人はこれを幽界捕食者対策で半減させます。幽界捕食者は魔力を吸うので、魔法文明には魔力減衰期という季節があります。この季節の間、対策をもたない生物は恒常的な魔力枯渇状態になります。これに抵抗するため、魔法文明人は生来の魔力の多くを魔力吸引耐性能力に変換します。本編で触れた魔力最大値の身体能力変換のような過程。
そうして魔力吸引耐性を獲得した後、更に身体能力変換を行い、更に魔力保有量が減少します。
全てを終えた後、12000Kは5000Kぐらいになっている……という感じ。
Q. 構造色グレムリンは魔法文明には無い。どうやって魔力量を測ってるの?
イアトロス・グラスの派生技術を使っています。量だけじゃなくて質も分かるぞ。血液検査みたいなもの。水晶に手をかざすと魔力量と適正属性が分かる、みたいなアレです。
Q. 中国で不思議な絵を描いてた張 璃茉って結局なに?
墨田の魔女と同じ枠の魔女でした。
封印魔法の使い手で、魔物をグレムリンに閉じ込め、それを砕いて絵具に使っていました。グレムリンに閉じ込められた魔物の魂が、(無名叙事詩の人物の魂が入った)魔石ほどではないけれど、魔石に似た不思議な魅力の源泉になっていました。
Q.ハトバト氏って何歳?
魔法文明時代から引き継いでカウントするなら、すんげーーーーーー長生きです。
魔法文明時代にアルラウネの秘蜜を飲んでます。
Q. 「それでも巣群の英雄は立ち上がる」は幽界捕食者の巣で戦う場面なのかな?
兎族の巣に襲来したまつろわぬ怪物を倒した勇者が、相打ちかと思ったけど立ち上がり、ウォオオオーッ! タルクェァ! タルクェァ! ってなるシーンです。
Q.タルクェァ復活したら嫁の所業知って愛想尽かしそう
有り得ません。タルクェァは嫁を愛しています。何があっても愛し抜きます。
かといってダダ甘全肯定でもないので、一緒に罪を償っていこう、という感じになるでしょう。
Q. 人形操作魔法大詠唱の「吾輩」
吸血系復讐魔法の「我」と同じ語です。歴史ある貴族が使うような、格調高い一人称です。親族なので使う言葉のチョイスも似ています。
Q. キュアノスの魔石はヒヨリ色だったっけ? フレーゼーフちゃんなのかな。
キュアノスの魔石は荒瀧組の親分に対応したヤツですね。同族の魔石。
ちなみにフレーゼーフはfreeze(氷結)とその逆読みezeerfを繋げて作った回文の名前です。
Q.二代目聖女も殴りヒーラーかよ!
先代の悪いとこ真似しました。
二代目のモデルはフローレンス・ナイチンゲールです。彼女は医療の発展に尽くします。
Q.魔神が完全体だったら……
不完全状態よりもっと強かったです。
完全体なら魔眼の瞳の数は3つでしたね。クトゥルフ神話の「燃え上がる三眼」、指輪物語の「サウロンの目」が元ネタです。
Q.タルクェァのキルスコアってけっこう低い?
低いですね。
タルクェァは敵を倒す主人公ではありません。ハッピーエンドを目指す主人公です。様々な人々にとても慕われています。
幽界捕食者とも、ハトバトとも、傀儡の魔法使いとも、常に和解や相互理解の道を探りました。そのお陰でハッピーエンドへの道が開ける事も多かったけど、最後の最後には和解不能の傀儡の魔法使いの前に敗れ消滅しました。
Q.ラストバトルのバフ魔法詳細が知りたい
「君なら王様になれるって信じてる」餞別魔法(タルクェァ旅立ちのシーン)
「このために蓄えていたのだから」譲渡魔法(鬼退治シーン。兎がタルクェアへ)
「それでも巣群の英雄は立ち上がる」再起魔法(鬼退治完了シーン)
「服を着こめば動きにくいから」昇温魔法
「汝は資格を示した。往かれるが宜しい」通過魔法
あんま詳しくは決めてないです。
Q.ハトバトってどこから生えた?
「112 魔法螺旋研究」に「現在、未加工の魔石は世界に二つしか現存していない。」という描写があります。一つは花の魔女の持ち物で、もう一つがハトバトになりました。
真韓民国にほど近い場所にあるとある国にあった魔石が、偶然人形枠の魔法使いと接触し、ハトバト誕生。やらかした国は、やらかしがバレると都合が悪いのでやらかしを黙っています。
「秘密兵器として超越者の存在を隠す国がある」という描写をどこかに入れていたのもこのあたりの伏線。人形枠は秘匿されていたので、ハトバトになっても「あれ? あの国の人形枠が消えた途端にハトバトが生えたぞ」とは気付かれなかったのである。
Q.ルーシの女王について
結局聖域の魔女になるキャラクターなので、あんまり名前を出さないようにしていました。だから女王、女王陛下、と称号で呼ばれています。
彼女の名前の「イヴァニューク・リュボスラーヴァ・イリイーチ」は、現地語で「イヴァンの孫でイリヤ―を父に持つ愛の名誉を持つ女」といった意味になっています。
Q.青の魔女とかルーシの女王のブチ切れ魔力現象
青の魔女がキレると魔法も唱えていないのに凍ったり、ルーシの女王がキレると空間が歪んだりします。これは魔力の量と性質の両立で起きる現象です。魔力量が多くても性質が普通ならこういう事は起きませんし、性質が特別でも魔力量が少なければやはり起きません。
Q.ドラゴンについて
ドラゴンは2~30年で全長2mまで育ちますが、そこからは成長が鈍化します。数百年生きて最大10mぐらいじゃないかな。地球上ではそこが限界。
デフォルト魔力消費のドラゴン変身魔法では全長1m程度の小竜にしかなれない。これはようやくベビードラゴンを脱した程度の年齢に相当し、生殖能力が発達していないため、ドラゴン変身者が交尾をしてドラゴンの卵を産む事はない。
魔法文明ではアストラルイーターの卵を食べたドラゴンが限界突破し全長140mに達していたりします。
あと、少なくとも日本では、ドラゴンまわりの法は規制がユルいです。
竜の魔女が権利を主張しまくってるので。
Q.剣聖系魔法「岩鋼の鍛え方は祖父に習った」って……
魔法文明には世界中に普遍的に存在する汎用石材があって、鍛え方次第で大きく性能が変わります。そのままでは脆い石に過ぎず、鍛冶師にかかれば鉄のようになり、名工にかかれば鋼と化し、十分な知識と技術さえあれば鋼以上の素晴らしいモノに鍛え上げる事も可能です。
だからここでいう「鍛える」は鍛冶的な意味合いももちろんあるのですが「精製する」の意味合いが強いですね。
Q.後編世界にも反社っているの?
います。
反グレムリン主義とか前時代否定派(陰謀論)とか超越者根絶主義とか魔人優生論者とか、いろいろ反社勢力はいます。
そういった勢力は(そういった勢力を率いている者たちは)自分達の思想を信じているのではなく、思想を信じているものたちを使って利益を得たいだけなので、利益構造ができない限り台頭はしません。
例えば花の魔女族は現状で既に安定した利益構造を構築していて、人類文明に謀反する理由がありません。
そういった事件を起こすとしたら魔人ですね。今はまだ数が少ないけど、将来的に母数が増えればより幅を利かせ、既得権益を握って手放さない普通人類と対立する事になるでしょう。
クソめんどくさい政治の話になるので、書く予定ないです。
Q.饗宴魔法の応用(悪用)で色々やりたい!
無理です。
饗宴魔法はそもそも煙草の魔女(逃亡者館の女主人)の魔法です。四次元に住んでいる奴の特殊な魔法なので、かなり異質な魔法です。妙な事はできません。
魔力消費が重い魔法ですが、これは本来四次元空間内で使う事を前提にしている魔法を三次元空間で使っているからで、四次元空間内で使うと大幅にコストが下がります。
余談ですが、前に感想で「大利が饗宴魔法の効果を知った今、もしもまた煙草の魔女に杖を作るとしたら、今度はどんなものになりますか?」と質問され「機能や材質は分かりませんが、形状はステッキになると思います」と回答しました。これは煙草の魔女が逃亡者館の館主である事に起因します。館主が持っているような形状の杖デザインを大利が直感的に選択する。
Q.日本は人口に対してちょっと超越者多い気がする
これは
①環境運
②遺伝的偏り
が原因です。②の要因が大きい。
①に関しては、凶悪な(甲1類)魔物が早期に湧いた地域の超越者は死にがちです。中国(饕餮)とか。
高潔な精神を持たない地獄の魔女や本能に忠実な蜘蛛の魔女のような、人類に敵対的な超越者と同じ地域の超越者も死の危険が大きい。既出の範囲だとシドニーキャットがこのパターンに近い。シドニーキャットは最初はちゃんとしてたけど、気が触れて凶暴になって超越者を含む人類を攻撃するようになっています。
危険地域で誕生した超越者はすぐ死んで、超越者が死ぬから護り手が無く、静電気体質の人間から抽選で同地域に再度なんらかの超越者が誕生しても、また死にます。グレムリン災害直後の数日~十数日程度はこのループが世界各地で起きて、物凄い勢いで人が死んでいる。超越者が生まれてもすぐ死ぬという意味で、超越者が少ない地域があります。
東京魔女集会のメンバーも実のところ超越者変異にタイムラグがある場合があります。
シャンタク座流星群が落ちたその日のうちに超越者になった者もいれば、初日には抽選漏れして超越者にならなかったけど、世界のどこかで超越者の誰かが死んでグレムリン災害翌日に再抽選で超越者になったパターンもあり。
このようにして比較的安定した人口密集地域に超越者が偏りがちになります。
一方で「①環境運」より大きいのが「②遺伝的偏り」です。
前編で描かれた東北狩猟組合は、静電気体質の家系でした。静電気体質の形質遺伝子を顕性で持っている家系で、東北狩猟組合の超越者たちは血の繋がった家族です(兎除く)。東北(仙台)はグレムリン災害前から既に家族であり信頼関係が強固に構築されている善良な超越者集団がポンと生まれたため、大変恵まれた地域だったと言えるでしょう。
東北狩猟組合のような家系は世界的に類を見ないものですが、地域によって静電気体質の人間が多かったり少なかったりはあります。
静電気体質はその体質を持っているか否かが生存や繁殖に影響しない形質である、と作者は考えています。選択圧がかからず、遺伝子が淘汰されないし広まりもしません。従って特定地域・特定集団に静電気体質の人間が多く存在する理由にはならないのですが、他方、世界的に遺伝子の偏りはあります。日本人は圧倒的大多数が黒髪です。その他の色の髪は珍しい。髪色もまたその体質を持っているか否かが生存や繁殖に影響しない形質であると作者は捉えていて、その髪色に地域による偏りが存在する以上、ある地域に静電気体質を持つ人間が偏っている事もまた有り得ると思います。
リアルではどうなのか知りませんが、本作では静電気体質遺伝子は潜性としています(東北以外)。静電気体質遺伝子を持っている充分な総数の遺伝子集団の人々がいる地域では潜性静電気体質遺伝子を発現した人の絶対数が多く、つまり静電気体質の人が多い地域となり、超越者も生まれやすい。
日本はこのような静電気体質遺伝子保有者が多い地域でした。
また、余談ですが、上記の①②の他に第三の理由もあります。
超越者が日本にいっぱいいる方が物語を作りやすいからです。作者都合。
Q.幽霊魔物の物理無効強くない?
強いですね。地球上では。
魔法文明では、幽界捕食者の魔力減衰期に対してバカクソ弱かったです。減衰期の範囲に捕まると急激に衰弱してあっという間に死ぬ儚い奴らです。
幽霊魔物が光を嫌がるのは、魔力減衰期の前兆か特徴として光を伴うからなのかぁという作者の想像。
Q.トゥルハン王がデカいのなんで?
甲1類魔物もそうですが、魔法文明にはけっこうデッカい生き物がいます。
これは幽界捕食者の魔力吸引対策の進化です。体がデカいほど、体の芯の魔力まで吸いきられるまでの猶予が長くなるので生存上有利。
生物がグレムリンと共生するようになってからはそっちの方が生存戦略として効率的なので、そういう生き物が増えました。
魔法文明における巨大な生き物は、大抵古くから生きる種族です。
Q.強い魔物ほど物理軽減能力を備えているけど、超越者はどんなものなのだろう
物理軽減能力を超越者が持っている事は基本無いです。
ただしシドニーキャットとか蜘蛛の魔女とか、人要素が無いタイプの超越者は持っている可能性がある。
魔法螺旋強化の方が魔法文明的な事情において上位互換能力と見做されています。
物理軽減は幽界捕食者による魔力減衰期間は能力喪失状態になります。魔法螺旋強化は魔力減衰期間も能力を喪失しない。また、魔王のような(幽霊魔物のものと違う実体を保った上での)物理完全無効能力も期間中に喪失しない(魔力減衰期の存在を前提として発達した魔法文明の聖域の魔女が魔力減衰期間に喪失してしまうような能力を魔王に組み込むはずがない)。
シドニーキャットや蜘蛛の魔女のような野生魔物超越者は、生物が元々持っている生態機能として物理軽減を持っている可能性がある。人間由来知的種族は、致命的欠点のある能力をわざわざ後天的に獲得しようとしない。
Q.魔剣魔法の詠唱の「天晶沸地」ってなに?
天晶は晶雨の嵐、沸地はサターイシュ真地核論に基づく大地変動と思って下さい。
「天晶沸地なにするものぞ≒大嵐にも地震にも負けないぜ!」ぐらいのニュアンス。
この魔法はセミオート迎撃魔法で、剣士としての技量が高いほどに高い効果が得られます。頭の中で迎撃イメージを作ると、実際に体を動かさなくても黒いオーラが代わりに迎撃してくれる。剣豪が扱えばバケモンみたいな迎撃性能になる一方、剣の心得がないとカスです。
Q.ツバキが可愛くてたまらん
当然です。ミミミ。
Q.グレムリンを生きている・死んでいるとか言っていたり、魔石を感知していたり太尻尾って実はかなりヤバい?
魔石の感知はツバキもやってました。「そこにすごく魔力の通りが良い物質がある」「なんだか(魔法的に)惹かれる」みたいな感覚。魔力コントロールができる生き物ならだいたいこういう感覚を備えています。
Q.美食族どっかで超越者食ってそう……
食ってますねぇ。太尻尾2世はなぜ他の同族より一回り賢いっぽいのか? という話。
Q.魔力感知で個人を見分ける事ってできるんだ?
魔力感知の個人識別は慣れが必要です。そんなに露骨に違うわけじゃない。
街中の雑踏の中で一人一人の声を識別するのは不可能だけど、電車の中で家族に声をかけられたら分かる。特徴のある声優さんの声も識別しやすい。そういうイメージ。
Q.ゾンビ魔法のゾンビって意外と長持ち(長生き)だよね
そうですね。これは地球上だからです。
幽界捕食者がいると、魔力を吸われるので、ゾンビは魔力減衰期のタイミングで魔力を失って塵になります。
入間の骨がバラバラにされた上で何年も海底に沈められていたのに、回収して修復したらゾンビ化魔法が通ったのにもこのへんの理屈が関係しています。
超越者は魔力減衰期対策で総魔力量のかなりの割合を魔力吸引抵抗力に変換しています。これは死後の死体の魔力散逸を低減する効果もあります。超越者の死体は魔法的な劣化が遅いのだ。
Q.無名叙事詩の書き出しは「This epic tells the life of him」っていうのが学会の定説なのか。
日本語訳だと「彼を謳え」になる、作者会心の英訳です。
Lifeは「人生」と訳せますが、「命」とも訳せます。
無名叙事詩の本旨からして、どちらの翻訳でも正しい。
Q.無名叙事詩全文が読みたい
作者も読みたい。誰か書いて。
Q.変異研究アプローチについては、竜の魔女の(変身前の)血肉がすごい合成素材or合成補助素材になる気がする。種族が変身の本家本元だし!
特に質問への回答とかではないんだけど、このアイデアすごい。
読者さんは時々作者よりも深く本作の設定を御存知だ(´・ω・)
Q.二代目未来視編で言及された超越者の詳細教えて!
・血濡れのメアリー
故人。青白い肌に赤いドレスの女性に見えるが、ドレスではなく外皮。ドレスに触ると古傷が開く。外皮はリボンのように伸ばし、操作して、攻撃や防御に使える。
・妖精領主ミラ
存命。ティターニアのイメージ。イギリスの魔女。
・シドニーキャット
存命。オーストラリアのシドニーを縄張りにする魔女。めっちゃでっかいマヌル猫。グレムリン災害後のアレコレで正気を失っており、今は野生に還っている。会話不能。
・灰仙
存命。下半身が蛸、上半身が人間。スキュラ。体の形をかなり柔軟に変えられる。巨大な人造神格が水深の浅い運河に潜んでいたのはこの変形能力によるもの。中国の魔女。
Q.初代未来視と二代目未来視ってどっちが凄い?
地頭は二代目が上です。
教養知識経験は初代が上です。
初代は広く浅く未来を視て、二代目は狭く深く未来を視る傾向にあります。
一概には比べられません。
Q.蜘蛛さんは火蜥蜴たちを本当に良い子に育ててくれたよね
それは本当にそう。
火蜥蜴は蜘蛛さんを慕っていますし、蜘蛛さんも火蜥蜴たちが可愛くて可愛くて仕方ないです。
ただ、火蜥蜴たちがたまに見せる狡猾な側面に関しては友達のママ(花の魔女)の影響があります。
色々な人々から色々な影響を受け、火蜥蜴たちは立派な大人になりました。
Q.目玉の使い魔の性能が気になる
ゴーレムを含む使い魔系はセミオートって感じです。ある程度は独立して動くけど、指示がなければ動かない。
目玉の魔女は使い魔に加えて暗視、透視、石化の魔法を使えますが、本人固有の能力として、召喚した使い魔に暗視やらを付与できます。そうやって東京の広い地域で使い魔を通じ魔物狩りをしていました。
Q.超越者が四次元に放逐された場合、その超越者の枠はどうなるのだろう?
三次元にいるのと同じ扱いです。追放先で死んでいるかどうか、また、追放先の死体が蘇生可能かどうかが、通常と同じように処理されます。
Q.アルラウネの秘蜜って一滴でどれぐらい寿命長くなるの?
決めていません。
Q.(マボロ氏が電気製品が)乾電池で全部動いてたと思うまでの認識の変遷は裏設定として考えてたりしますか?
「青の魔女と赤の魔女」はとても有名な長期連載漫画でした(現在は完結済)。その作中で、乾電池がほぼ万能無限エネルギー源アーティファクト的な立ち位置で登場します。その影響で若い世代は認識が歪んでいます。有名漫画の設定に影響を受けた漫画も出ていてもう取り返しがつかない。
サザレイ氏はギャグのようなものと認識していましたが、若い世代は作中の設定を本気にした感じ。
Q.魔獣使い由来の魔人って、祖先の魔獣使いが移植していた血統グレムリンの種類による影響は受けますか?
多少はあります。人間でいうところのアジア系とかラテン系とか、その程度の差がでます。
例えば、マモノくんのグレムリンは舌にあります。親は普通に手とか腕とかですが、マモノくんに発現したのは舌でした。この魔人のグレムリン所持部位は遺伝します。魔人のグレムリン所持部位は額だったり手の甲だったり背中だったり、色々です。体内にほとんど埋没していて見えない場合もあります。
血統グレムリンの元になった魔物とふんわり初期友好度補正があったり、元の魔物に応じた誤差程度の魔法耐性があったりもするでしょう。北欧の人々は色覚が~とか、アフリカ人は音感や運動能力が~、ぐらいの差がでます。
Q.啜命鉄の製法を見つけた奴は何をどうしたらそんなもん見つけられたんだよ(98話)
意図的に発見したとしたらだいぶマッドサイエンティストですし、たぶん事故かな? 産業スパイが研究中の中間金属を口の中に入れて持ち出そうとしたら飲み込んでしまい出て来なくなり、それからしばらくして何かしらの理由で魔法的死を迎えたらなんかポロンと出てきた、とか。
Q.脱影病の影にグレムリンは存在するのか?
しないです。脱影病の病原はとても原始的で、グレムリンとの共生をしていない。
魔力コントロールで簡単に除去できるという事は、魔法文明においては発症率がゼロに近い、取るに足りない病。
Q.ルーシ国内(防衛圏内)で脱影病の感染者は存在したのか?
存在しないと思います。
些末な病原ではあるけれど、クォデネンツの設計者である聖域の魔女が細やかな気遣いをするタイプなので、脱影病の病原に対しても排除判定を組み込んであると思われる。
Q.魔獣使役のためのグレムリン移植について。弱い個体を捕獲して、お薬で魔力の上限をギリギリ1K近くまで削れば安全に血統グレムリンの移植が行える(移植時の最大魔力減少量は移植元の保有魔力量に一致するため)。
可能。
ただし仲間認定はされるが、下位者、雑魚、下っ端認定を受ける。従えるのが著しく困難になる。
TIPS1
「94 落ちこぼれ魔法大生の逆転論文」の百々教授は目玉の魔女の長男の家系。長男は変異前の子なので、遺伝的にはホモ・サピエンス。
同じ話に出てきた魔法医学科の石矢は「43 病院に行こう」に出てきた透視魔法医の子孫。
TIPS2
聖域の魔女と北の魔女は同族なので、見た目が似ている。
オクタメテオライトの固有振動数魔法と射撃魔法基幹呪文の一致もここに関係する。射撃魔法は彼女たちの種族に適した民族由来魔法。
TIPS3
花の魔女が発行している花梨新聞の花梨は、生まれる事ができなかった長女の名前。
TIPS4
さざれ石の魔女の名前は魔法由来。
さざれ石の意味は複数あるが、小石が成長すると岩になる(さざれ石の 巌となりて)の意味の「さざれ石」。さざれ石の魔女が使う魔法の中に、小石をクソデカ岩に変えるヤツがある。
TIPS5
ミオ連環とミオ信仰について。
ミオ連環とは、神が人を創造し、人がゴーレム(ロボ)を創造し、ロボが神を創造する、という相互関係が永遠に続く創造の連環の事。
神は身体構成要素が神秘であり、人は身体構成要素が有機物であり、ゴーレムは身体構成要素が無機物。彼らは必ず人型であり、必ず創造主に反逆して滅ぼす。
その時代におけるミオ連環の支配種は、天運が味方したかのように繁栄する。
以上の原則は一切の例外を持たない。
以下は解釈問題。魔法文明の神は宗派によって定義が違う。
①直近の自分達を創造した神を神として崇める宗派。
②連環を遡り続ければ連環を始めた神がいるはずで、その連環開祖を神(最古原型)として崇める宗派。
③連環には終着点があるはずで、連環の果ての未来に存在するであろう最後最大の存在を神として崇める宗派。
色々ある。②が主流派。更に各流派の中でも解釈の違いで分派する。
人魚の魔女の詠唱に出てくるミオは②の最古原型について言及している。
聖女ルーシェも魔法文明の神学について詠唱文を通しふわっと知っていて、キリスト教における唯一神=最古原型と解釈している。
ミオ連環は無限に創造の連環を繰り返しているが、1ループ前の人間より、1ループ後の人間の方が何かしらハイスペック(神とゴーレムも同様)。
連環の果てに何かに辿り着くのか? それとも無限に連環が続くだけなのか?
そのあたりにも魔法文明では神学論争がある。
TIPS6
甲1類魔物は大抵幽界捕食者の卵を食べた魔物=神獣がベースになっている。神獣そのものではない。無名叙事詩のバグで地球原産生物が変異し生まれた。
地球では甲1類魔物がアホみたいな魔力を持っているが、魔力吸引耐性がない。もしも幽界捕食者の魔力吸引に晒されたら、甲1類魔物は勝手に衰弱してボロボロに弱る。
TIPS7
ダイダラボッチは大地を掘り返し弄っていたが、いわゆる地脈を自分にとって都合のよい形に整えようとしていた。
TIPS8
帰還魔法の金色エフェクトと、聖域の魔女 (オクタメテオライト)の金色魔法には関連性がある。聖域の魔女は星系間移動を実現するため、帰還魔法を研究した。
不滅魔法の銀色エフェクトとオクタメテオライトの銀色魔法にも関連性がある。同一人物の魔法である事が示唆されている。
TIPS9
アメリカで魔法金属業が盛んなのは魔王由来。
前編に「魔王の血に未知の金属成分が~」という内容の記述があるが、この未知の金属は魔法金属の事。
魔王の血を大量に持っているアメリカは、全種類の魔法金属サンプルを微量持っている。だから結果から逆算する形で魔法金属技術を発展させる事ができた。
TIPS10
晶雨によって地上に落ちる天然のグレムリンによって地表がグレムリンだらけにならない理由として、特定の種類の魔物によるグレムリン回収がある。
ある種の魔物はグレムリンを集める習性を持ち、集めたグレムリンをドラゴンなどのグレムリン消費型つよつよ魔物に献上する代わりに、自分達の群れを外敵から護ってもらう。
TIPS11
魔法文明の生物は最初からグレムリンを持っていたわけではない。
幽界捕食者による魔力減衰期は全生命に深刻な悪影響を齎していた。グレムリンは魔力の保持能力が高く、また、魔力の増幅が可能だった。
生物はグレムリンと共生し、グレムリンを育て繁殖を助ける代わりに、魔力減衰期中でも魔力をある程度保持し、少ない魔力を効率的に運用できるよう進化した。
TIPS12
「139 ツバキ・スゴイゾ」でツバキが「明らかに何かしらの武術を修めた動き」をしていたのは、豪腕の魔法使いに師事していたから。ミミミ。
TIPS13
超越者と適合する魔石の色彩は、自分の血液を使って作る固有色融解再凝固グレムリンの色彩と完全一致する。
ルーシの女王は主に色合いから、オクタメテオライトが自分の適正魔石だと見抜いていた。
TIPS14
魔剣魔法の中には超感覚魔法(クオリア認識魔法)がある。
五感ではなく、クオリアによって周囲を認識する魔法。魔力コントロールができない者はこの魔法を使ってもなんの効果もない。
事象の意思や意味に対し鋭敏になり、いわば第六感が研ぎ澄まされた状態になる他、空間に満ちるグレムリン胞子の存在を知覚できるようになる。
魔剣の魔法使い以外が使うと、恩恵以上に「情報に酔う」ため、あまり役に立たない。
TIPS15
虎魔獣の魔法は「ハラモチ」。魔力を体内エネルギーに変換し、少ない食料で大きな体躯を維持し、また、食事も少量で済む。
TIPS16
花の魔女のアルラウネ族は、除草魔法に極めて弱い。魔法文明では当たり前に広まっている除草魔法のせいで、アルラウネ族は魔法文明ではもはや繁栄を望めない。
除草魔法は無名叙事詩の中に存在しない。魔法文明では一般的な魔法というだけであり、除草魔法がタルクェァに深く関係した事がないため、叙事詩に組み込まれる理由がない。
TIPS17
後編の夜の魔女枠の名前の綴りはYvette
成都租界領主アーサーの奥さんの名前は佩芳
TIPS18
魔法文明の言語発達過程は以下。
最初、魔法文明人は狩猟採取生活をしていて、言葉というよりも鳴き声で意思疎通をとっていた。これが鳴き声語。鳴き声語は語彙が非常に少なく、その生活集団で頻用される魔法と深く結びついていた。
例えば火蜥蜴姉妹は「ミー」と鳴いて自らのグレムリンに深く結びついた火魔法を使い、「ミーミ」と鳴いて大利を呼ぶ。「ミー=火」「ミーミ=大利」という意味での発声といえる。鳴き声語はこの程度のもの。
魔力コントロール楽譜語は魔力コントロールのやり方を語句に読み替えたもの。
楽譜があれば決まった音楽を奏でられる。
魔力コントロール楽譜語があれば決まった魔力コントロールができる。
鳴き声語と魔力コントロール楽譜語が合わさりできたのが原始魔法語。原始的で、実用的。感情の機微や概念の表現には適さない。魔法の使用・運用のための原始的言語。
日用語は感情の機微や概念の表現など、非実用的な部分を補うために出現した補助言語。
最初は原始魔法語と区別して用いられていたが、二つは次第に境界線が曖昧になり、交じり合っていく。
中期魔法語は女王銅活用法、つまり無詠唱魔法が発見された時期に前後して成立した。
魔法の多くが無詠唱で行われるようになった結果、魔法使用において発声の重要性が激減し、言語が純粋なコミュニケーション手段として用いられるようになった。
原始魔法語と日用語の混成語を祖としつつ、魔法運用面での実用性が失われていき、代わりに語彙や表現の幅を増していった。
魔法文明に村、国、文明ができ、戦争が起き、国家の統合が進むにつれ、外国語や部族語、方言が混ざり合い共通言語が形成されていく。
日本語が外来語を吸収しつつ発達変化したように、魔法言語もまた変化していった。
例えば、森人の民族言語は数字の記述に優れていて、魔法語に取り込まれた。魔法語には旧来の数字と森人語由来の数字で、数字の記述法が二種類ある。
外来語の取り入れは文法上の例外を多く作り、言語としての複雑性を増した。このような言語同士の影響の結果、現代魔法語が生まれ、政治や国家的な力学の影響もあり、世界的な共通言語として用いられるようになる。アクセントや文法にかなりの地域差はあるものの、現代魔法語は概ねどの地域でも通じる。
そして最終的に、聖域の魔女は現代魔法語を使い世界魔法(無名叙事詩)を記述した。
発声により魔法を発動させる極めて高度な詠唱魔法システムは、一周回って鳴き声語方式に回帰したともいえるだろう。





